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255日目 魔法流学:トゥルチヱリの定理について

255日目


 骨に肉が戻ってる。怖かったのでアエルノチュッチュ寮に向かってぶん投げておいた。


 ギルを起こして食堂へ。なんか妙に寒いと思ったら、食堂についたあたりで雪が降りだした。それも結構大粒で積もりそうな感じの雪。何気に今年初の雪……去年よりちょっと遅かったかも?


 これには使い魔ども……特にグッドビールが大興奮。「くぉんくぉん!」ってめっちゃはしゃいで外を走り回る。あまりにはしゃぎすぎて何度か盛大にこけていたけれども、それすら気にせずにとにかく走りまくっていた。『みぎゃーっ!?』ってミーシャちゃんが振り回されていたことをここに記しておく。


 『そりゃ寒いわけだ』ってポポルは腹巻にポワレ、ソテー、グリルを突っ込む。漏らされるリスクはあるものの、程よくあったかく、そして冷めないからなかなかに使い勝手がいいらしい。『うちの子、ゆたんぽじゃないんだけど……』ってアルテアちゃんが複雑そうな顔をしていたっけ。


 うちのちゃっぴぃは『きゅーっ!』って俺のローブの中に入ってきた。相も変わらずあまえんぼである。潜り込まれると動きにくいからやーねぇ。


 一応書いておく。ギルはやっぱり今日もジャガイモ。『うめえうめえ!』ってそれはもう美味そうに食っていた。


 さて、今日の授業はミラジフの魔法流学。なんだかんだで二週間ぶり。今日も今日とてミラジフの機嫌は悪い……んだけど、意外なことになんとあいつ自身から語りだした。


 『冒険者と言うのはクソだ。守ってやるから動くなと再三忠告したのに、こっちの言うことを無視して好き勝手動く。挙句、あれだけ醜態をさらしてこちらに手間をかけさせたというのに、図々しくも取り分を要求していく。全く理解できない浅ましい生き物だ』……とのこと。どうやらこの前の邪竜討伐で相当イライラが溜まったらしい。冒険者がクズだって所には同意しておく。


 ちなみにそのうえで、『大事な遠征の最中……それも行きの道程で酒を飲むとは恐れ入った。そんなやつが味方にいること自体に怖気が走った』ってブチギレ寸前。その【味方】ってのは誰のことを指していたのか、聞くのが怖いところである。


 授業内容だけれども、今日はトゥルチヱリの定理について学んだ。前回までに、ヲヰルァの方程式だとかヴェリュヌーヰの定理だとか、流体魔力特有の状態を表現するそれらを学んだわけだけれども、トゥルチヱリの定理もそのうちの一つ……というか、ヴェリュヌーヰの定理の応用(派生形)ね。


 とりあえず、めんどくさいからその定義を以下に示す。



・トゥルチヱリの定理

 流体魔力を内包した広義での魔力容器(魔石、人造コア、その他ユニコーンの角などの生体魔力触媒など)が存在すると仮定する。この魔力容器の魔力孔オリフィスから魔力が放出される場合、最外魔力面とオリフィスは流線で繋がっているため、ヴェリュヌーヰの定理を適用することができる。

 魔力容器が魔法的に十分に大きいと仮定したとき、最外魔力面での魔法速度は0とみなすことができるほか、最外魔力面、およびオリフィスでの魔法圧も0(自然魔法圧)とみなすことができる。そのため、オリフィスでの流体魔力の魔法速度は魔深と魔力浸食度のみによって決まる。これをトゥルチヱリの定理と呼ぶ。



 早い話がトゥルチヱリっておっさんが見つけた定理の一つ。魔力容器のどこから魔力を放出させると一番魔法速度が出ますかって言う話。それが流線で繋がっている……つまり、流体的な魔力の諸法則が適用できるのだから、その最適解も計算で出せますねってこと。あえてわざわざ名前を付けるほどのことじゃないと思うけれども。


 ここでちょっと重要なのは、トゥルチヱリの定理における最外魔力面ってのは必ずしも物理的な意味での外側のことを指しているわけじゃないって所。あくまで魔法速度がゼロ、魔法圧がゼロの面のことを示しているので、物によっては最外ではなく最内だったり最奥だったりすることも。その辺は適宜対応していくほかない。


 『この考えは魔力の出力機構の設計を行う際に重要となるが、あくまでこの定理は魔力容器そのもののみに着目した場合にすぎん。だというのに、定理の本義を理解せず、全体のことを考慮せずにそのまま適用する愚か者が後を絶たない』ってミラジフがぶすっくれたツラして解説してくれた。


 単純にオリフィスでの魔法速度を見るだけなら魔深があればあるほどいいんだけど、そこから射出されて目標地点まで行くことを考えれば、むしろ全体の半分くらいの魔深のところが良いんだって。


 ちなみに、トゥルチヱリの定理には魔法浸食度と魔深しか定義されていない。だから魔力容器の形状なんかは一切関係ない。魔力浸食度なんて通常環境下なら変わらないわけだし、つまるところ魔深がどれだけあるか……魔法的にバカでかいものなら発射した時の威力がすごいですよってことなんだろう。もちろん、あくまで魔法流体で条件がそろっているっていう前提のものだけれども。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。なんかよくわからんけど今日はミラジフが早めに授業を切り上げてくれてちょうラッキー。なんだかんだであいつも疲れやストレスが溜まっているのだろう。もっと笑顔を振りまけばいらないストレスを感じることも無いのにね。


 風呂場にて、『やっぱ雪の日の風呂は最高だな!』って男子一同盛り上がる。夜のころにはうっすらと雪が積もっていて、雪だるまが作れるほどではないにせよ、なかなか情緒あふれる感じだったんだよね。


 あまりにテンションが上がったからか、『今度入浴剤使っちゃおうかな……!』ってゼクトが言っていた。『頼むからまともなやつにしてくれよ。あとできれば乳白色で、柑橘系のもので』ってラフォイドルもリクエスト。後半はともかく、前半の部分でなぜか俺が睨まれたんだけど、いったいどういう意味だろう?


 ギルは今日もぐっすりと大きなイビキをかいている。そして結構久しぶりにちゃっぴぃが俺のベッドにもぐりこんでいる。あの野郎、俺の毛布を全身に被ってもぞもぞしているんだけど、ご主人様のことをちょっとはかんがえたりしないのだろうか。


 まぁいいや。今晩はかなり冷えるし、湯たんぽ代わりにちょうどいい。一晩抱き枕の刑にして暖を奪い取ってやろう。これは決して、ちゃっぴぃの体を冷やさないようにするためではないということを断固たる決意と共にここに記しておく。


 ギルの鼻にはただの水を詰めておく。何気にシンプル過ぎて今までやったことのない素材だったり。明日がどうなるかちょっと楽しみ。みすやお。

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[一言] 入浴剤……ヤバイのではありませんように(w 本命:スライム 対抗:何もない 大穴:ギルの肌がピチピチ
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