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25日目 魔力学:魔力学第一法則について(昨日の補講)

25日目


 ローブの色がヘイゼルに。ちょっとおしゃれでいい感じ。


 ギルを起こして食堂へ。なんだかんだみんな昨日はがんばったからか、食堂内の雰囲気がダレていた。『世界の危機を救ったんだから今日くらい休みでよくない?』ってポポルが愚痴を零し、『いや、一週間は休みにするべきだろ』ってフィルラドがそれに同意する。あのアルテアちゃんでさえ、『せめて半休にしてほしかった』って文句を言っていた。お肌の張りがだいぶヤバいことになっているそうな。


 もちろん、俺はロザリィちゃんといちゃいちゃしながらモーニングのコーヒーを楽しむ。せっかくなので今日は俺がロザリィちゃんのコーヒーを淹れてみた。当然のごとく、ロザリィちゃんのはシュガーマシマシのあったかミルクをちょびっと。


 『そういうところ、ホント大好き!』ってほっぺにちゅっ! ってやってくれてマジ幸せ。凄い宿屋の息子的に考えて、恋人のコーヒーの好みの把握くらい朝飯前だ。朝飯後だけど。


 ギルは今日も『うめえうめえ!』ってジャガイモを貪っていた。『昨日頑張っちゃったからな! 俺もっとたくさん食えるよ!』って謎のアピールすらしだす始末。そんなアピールしなくとも、あいつ専用のジャガイモ大皿に手を出すやつなんていない。


 今日はアラヒム先生の魔力学。昨日の臨時の危険魔法生物学で潰れたために、ちょうどそれと入れ替える形で補講(?)することになったそうな。『いつもと違う日に皆さんと会うと、なんだか曜日感覚が狂ってしまいますね』ってアラヒム先生はにこにこしながらコメントしていた。


 今日の内容は魔力学の第一法則について。魔力学にはその根幹をなす大きな基本法則があるんだけど、その中で第一法則と呼ばれるそれについて学ぶ。すでに第ゼロ法則については学んだから、順番としては順当な所だろう。


 『とりあえず、今日は概要についてです。いきなり全部やると頭がこんがらがりますからね』と言われたので、板書をそのままここに記す。



・魔力学第一法則

 高魔度の物体から低魔度の物体に魔力が伝わり魔度平衡に至ることは前述した通りではあるが、その本質についてはわかっていないことも多く、当初は魔素(現在の意味での魔素とは異なる)と呼ばれる微小要素の物質により魔法物体に魔度が定義されるものだと考えられていた。

 しかし、この説では比魔や魔度についての説明は出来るものの、魔法的摩擦による魔度の上昇についての説明を行うことが出来なかった。物質である魔素ならば創造や消失は不可能であるため、魔力の発生についての説明が出来なかったのである。

 その後、ある学者の理論解析により、魔度を定義するのは前述した魔素ではなく、魔力であることが推測された。しかし、魔法的力である魔力と魔度の結びつきを当時は証明することが出来ず、この理論は信用されることはなかった。

 後になって、我々が一括りに【魔力】と呼称するそれは様々な形態を取ることが明らかになった。魔法的(外)力、魔法的熱、魔法的電力など、一見異なるものであっても、そのすべては【魔力】と呼ばれる一つのエネルギーの形態の一種に過ぎないということが判明したのである。

 魔力学第一法則とは、独立した系内においてどれだけ魔力の変換(例えば魔法的熱を魔法的力に変えるなど)が行われようとも、その前後における最終的な魔力量は変わらないというものであり、その特性から魔力保存の法則とも呼ばれている。



 ここに来てちょっと衝撃の事実が発覚。今まで俺たちが適当に【魔力】って呼んでいたのは、実は厳密にはいろいろと区分が出来る代物だったらしい。触媒演算学で出てくる魔力も魔力学で出てくる魔力も魔法回路実験で出てくる魔力も一口に【魔力】って呼んでいるけれど、実際は魔力の一形態であり、同じエネルギーとしての魔力でこそあるものの、同一のものとして扱うのは不適切であることもないのだとか。いろいろ変換できるから、その本質的量で比べることは出来たとしても、局所的なそれでは比べることそのものが成立し得ないと言えないことも無いのだとか。


 ……書いていてよくわからなくなってきた。ともあれ、『魔力っていろんな形があるんだよ! でもどれだけその姿を変えても、結局その総量は変わらないんだよ!』ってことなんだろう。


 『おかしいとは思いませんでしたか? 今まで皆さんは様々な魔力に触れたことがあると思いますが、その形態はずいぶん異なっていたでしょう? 例えばグレイベル先生が使う大地魔法と、私が使う熱魔法という明らかに異なるものを、どうして【魔力】という同一のそれで比較できるというのでしょう?』とはアラヒム先生の談。言われてみればそうかもしれない。


 ただし、『根本にあるのは全く同じですし、実際何も知らない人から見れば同じように見えます。ただし、あくまで魔系として学術的に物事を考えるならば、本質としての魔力と、局所的な作用としての魔力……具体的には魔法的外力、魔法的熱、魔法的電力くらいは気にしておくべきでしょう。……尤も、普段は今まで通りの【魔力】で十分なんですけどね』とのこと。


 話が堂々巡りしている感があるけれど、物事の本質を上手く見極めろってことなんだろう。結局何があろうと、魔力は魔力だ。


 一応、この魔力学においては魔力を大きく【魔法的熱】と【魔法的外力】とに区別して考えていくらしい。『興味があったら、他の授業で取り扱われる魔力がどの区分に入るのか調べてみてくださいね』ってアラヒム先生は言っていた。


 ちなみに、『昨日のソルオイル、あれって魔力の形態の最高峰です。わけわかんないくらいに何にでも適合して、現実としての変換効率が凄まじく高く、増幅する傾向さえ見せるレベルです。本当の意味でソルオイルの全てがわかったら、今の常識も教科書も全部ゴミになります』ってアラヒム先生がにこにこしていた。異次元の魔物であるソルカウダの奇妙な作用により、既存の法則が当てはまらないヤバいくらいにハッピーな物質になっているのだとか。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。今日は座学だった故に地味に精神的疲労を感じる。魔力学ってこう言っちゃなんだけど面白みがまるでないのが困るところ。学業としては本来あるべき姿なのだろうけど、もうちょっと何かないのだろうか。


 ギルは今日も大きなイビキを書いている。床に落ちてたパンくずでも詰めておこう。グッナイ。

20180425 誤字修正

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