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248日目 魔法流学:自習

248日目


 ギルの声が乙女。違和感がすげえ。


 ギルを起こして食堂へ。『みんな、おはよう!』って明るく元気な聞きなれぬ乙女の声に、男子の誰もが振り返るも、そこに乙女なんかいるはずもない。『まさかの転校生か……!?』、『留学生とかもあり得るんじゃね……!?』って食堂中を探していたけれども、そんな都合のいい話があるわけもない。


 『うめえうめえ!』ってジャガイモを貪る声が聞こえたところで、ようやく『夢を返せ』、『あんまりだ』って連中は真実を察していた。それでなお、『わかっているのに、それでも声だけは超絶美少女なんだよ……ッ!』ってあきらめきれない奴もいたけれども。


 一応書いておく。そんな男子連中を見て、女子のみんなが凄まじく冷え切った顔をしていた。その理由はあえて語るまでもないだろう。『声だけでこのザマとか、本当に情けない』、『私たちは乙女じゃないってかぁ!?』ってブチギレていたりも。少なくとも俺の知っている乙女だったら、このくらいで杖を向けたりはしないと思うんだけどな。


 意外なことに、フィルラドは眠そげでこの騒動には関わらず。不思議に思って聞いてみたら、『いや……ベッドからすごく女の子の匂いがして、ドキドキして全然寝られなかったんだ』とのこと。


 葛藤の末に、アルテアちゃんがフィルラドにケツビンタを叩き込んでいたことをここに記しておく。『フィルが悪いわけじゃないってのはわかっている。だけどせめて、それを口にしないだけのデリカシーは欲しかった』とのこと。フィルラドの感じたそれがどっちのものかはわからなかったので、とりあえず俺も腹痛の呪をかけておいた。


 さて、今日は本当なら授業の日だけれども、例のドラゴン騒動のため自習と言うことに。ぶっちゃけ普通に休日みたいなもん。この場にステラ先生がいないことが本当に残念でならない。


 ステラ先生が慣れない環境で頑張っている以上、俺たちも大っぴらに遊ぶ気分にもなれず。各々適当に日向ぼっこしたり、読書をして過ごしたり……ゆったりして過ごしていたってことだけは覚えている。


 俺もぼーっとしながらジオルドがアリア姐さんに水をやっているところを見ていたんだけど、唐突にジオルドが『……そういえば』って話を振ってきた。『そろそろクリスマスだろ? 今年のクリスマスツリーはアリア姐さんに担当してもらおうと思うんだが、どうだろう?』とのこと。


 そう言われてみれば、なんだかんだでクリスマスまで一か月を切っている。去年に比べて授業も課題も厳しいし、やれることはなるべく早く済ませてしまいたいところ。


 確か去年は、なんか化物樹を上手く脅してクリスマスツリーに仕立て上げた気がする。逃げ回るやつを適当にボコって言うことを聞かせたんだっけ? あとで日記を確認しておこうっと。


 ともあれ、ジオルドの案をそのまま採用することに。今からデカい樹を探すのも手間だし、アリア姐さんだって女の子だ。いくら普段から全裸とはいえ、特別な日くらい着飾りたいものだろう。植物にとって、クリスマスは唯一合法的(?)に着飾れる日でもある。


 そんなわけで、アリア姐さんのコーディネートを考えることに。『美脚を活かした丈の短いサンタスカートは鉄板だろ』、『植物的に服を着せすぎるのも問題だろうから、ここはアリア姐さんのためを思って肌面積は多めにしておかないとな』って男子一同盛り上がる。


 アリア姐さんはアリア姐さんで、色々諸々着飾れる&主役になれることを理解したのか、「楽しみにしてるわよ、ダ・ー・リ・ン・?」……とでも言わんばかりににっこり笑ってジオルドにしなだれかかっていた。


 残念なことが一つ。せっかく男子総出でアリア姐さんのクリスマスファッションを考えていたのに、女子にその案の大半を廃棄されてしまった。『こんなの着せようとするなんてサイテー』、『そもそも純粋にセンス無いわぁ……』、『ハートもお星さまも使わないとか、クリスマスってなんだかホントにわかってんの?』ってボロクソ。奴らこそ、クリスマスのロマンが何なのかわかっているのだろうか。


 なんだかんだでその後は女子が引き継いでアリア姐さんクリスマスヴァージョンの衣装を考えていたっけ。アクセサリーとか結構ガチでデコるつもりらしい。植物でありながら人であるというハイブリットだから、普通にクリスマスツリーをデコるよりもはるかに自由度や拡張性があって楽しい&面白いのだろう。女の子ってやたら人を着せ替え人形にするのが好きだよね。


 問題点(?)として、『普通のツリーよりかは小さいから、どれを飾ろうか迷っちゃう……!』とのこと。去年みたいに好きなだけデコるわけにもいかないから、その辺の取捨選択も難しいらしい。とりあえずデコるだけデコっておけば豪華でいいじゃんっていう安易な考えは使えないようだ。


 夕方ごろにはきちんとして装飾案ができたっぽい。デザイン画(?)を渡されたクーラスは、『また難しそうな衣装だな……作る人のこともちょっとは考えてほしいもんだよ』って口ではあきれた感じだったけれども、その実なんか燃えている。


 どうやって作るか一切考えられていない、夢と理想が詰まりすぎてしまった衣装だけれども、逆にそれをどうやって作るかってところで燃えているらしい。……あるいは単純に、女子に頼られて嬉しいだけか。


 とりあえず、サンタさんっぽい衣装であるのは間違いないみたいだけど……『この前の友陣の守護布とか、余ってたらちょっとくれないか?』って言われたのが気にかかる。なんで普通の衣装を作るのにあんなガチな魔法材料が必要になるんだ?


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。なんだかんだで今日は書くことが少ない。一日中部屋でグダグダしていただけだったし、しいて言うならおやつの時間頃にロザリィちゃんと悪夢椅子でお昼寝したくらいだろうか。


 目覚めた時に妙にちゃっぴぃ臭がすると思ったら、あの野郎いつのまにか俺のお膝の上に座って、俺に抱き着くようにしてスヤスヤしていやがったんだよね。それだけならまだしも、ヨダレがだばだばで俺の服がぐしょぐしょになってたし……酷い目にあったっていう。


 どうしよう、マジで書くことが全然ない。明日くらいは真面目に製図の課題でもこなそうか。なんか普段はあれだけ休みたいって思っているのに、いざ突発的に休日になると逆に不安になるから困る。とうとう俺も、ヤバいクレイジー共に仲間入りしかけているのかもしれない。気を付けないと。


 ギルの鼻には……なんか糸くずでも詰めておく。おやすみなさい。

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[一言] (比較的)平和だなぁ 本命:書き手の枕が糸くずだらけ 対抗:ギルの髪がパンチパーマ 大穴:ギルのすね毛が剛毛
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