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247日目 緊急事態

247日目


 ──くんへ。いつもお疲れ様です。ホントは先生のお仕事なのに、こうしてクラスメイトのために頑張ってくれて、本当にありがとうございます。──くんがみんなのために動いてくれることを、先生として誇らしく思いますし、誰にも見られないところで頑張っている──くんを、先生だけは労ってあげたいと思います。先生だけは、──くんが頑張っていることをちゃんと知っているからね?


 あと、やっぱり机で寝るつもりだったんだね……本当なら、先生がそうするべきだったのに……。無理させちゃってごめんね。もっと早く気づけたなら、ちょっと狭いかもだけどベッドに入れてあげられたのに。


 あと、やっぱりまだ日記を書き続けていたんだね! ちょっとだけ見せてもらったけど、相変わらず丁寧にしっかり書かれていてすごいなあって思いました。──くんのそういうところ、先生はとっても好きだよ。


 でも、恥ずかしいこと書くのは禁止! お返しに、──くんの寝顔をばっちり見させてもらったんだから! これに懲りたら、もう……え、えっちなこととか恥ずかしいことは書かないこと! いいね?



 やべえ。うっかり寝ちゃってた。そしてステラ先生にがっつり日記を読まれてる。でも書き込んでくれてちょう嬉しい。やっぱ先生のこの可愛い文字、最高に可愛いと思う。……いま、ぺしって頭を叩かれた。そういうところも最高にステキだと思います。















 まさかこんなことがあるとは。とりあえず、普通に書いていこう。


 ステラ先生の気配を感じて起きる。ちょうど、先生が俺の肩にストールをかけようとしてくれたところで目が覚めた。『お……起こしちゃった?』ってはにかむステラ先生が最高に可愛い……というか、あれだけ大事にしているストールを俺にかけようとしてくれたとか、ステラ先生の愛に俺が泣きそう。


 で、ステラ先生には日記のことがバレてるし、いつも通り朝の一文を書き加えようとしたところで先生の書き込みを発見。どうやら先生、俺より少し早くに起きて日記を読んでいたらしい。自分の恥ずかしいところを見られているみたいでちょっとドキドキしなくもない。


 落ち着いたところでポポルの様子を見る。顔色はずいぶんとよくなっていて、そして熱も普通に下がっている。未だ寝ぼけ眼のパレッタちゃんがおでこをごっつんこしてみれば、『……ちょうどいい塩梅なり』ってそのままポポルのベッドにもぐりこみ、奴を抱き枕にして二度寝を楽しみだした。さすがだ。


 『先生的にこれはいいんですか?』って一応聞いてみる。ステラ先生、お顔を真っ赤にしながらも『せ、先生そんな野暮なことはいわないからっ!』ってそれを認めた。まぁ、この状況じゃどう頑張ってもアレなことにはならないのは明白だったからね。


 そんなわけで部屋を後にし先生と二人で食堂へ。なんとなく二人で朝のコーヒーを楽しんでいる間にはみんな起きてきた。『きゅーっ!』ってちゃっぴぃに思いっきり腹に頭突きを喰らったのが未だに解せぬけど、『おつかれさまーっ!』ってロザリィちゃんがぎゅっ! ってしてくれた上にキスまでしてくれて最高に幸せだった。


 しばらく後に、『ふぎゃああああ!?』って元気なポポルの悲鳴が。通りすがりのゼクトが『あいつ風邪で寝込んでるって話じゃなかったっけ?』って首をかしげる。『叫べるくらいに回復したってことだろ?』って聞いてみれば、『……お、おう』って返された。どういうこっちゃ?


 んで、『お前ふざけんなよ! 俺を殺す気かよ!』って涙目ポポルがやってきた。なんか首筋に噛み痕がいくつかあるのを発見。なんでも目覚めたら目の前にパレッタちゃんがいたうえ、金縛りの呪をガチガチにかけられていたらしい。そのうえで、『なんかムラっとしたから、昨日の分も含めて噛みついておいた』ってパレッタちゃん。いったい何があったのか、聞くのが怖いところだ。


 一応書いておこう。俺たちがそんな話をしている間も、ギルは『うめえうめえ!』ってジャガイモ食っていた。今日のあいつは体全体が黄金に輝いていたことを記しておく。『お前がいっつもあいつにちょっかいをかける気持ち、ちょっとわかったかも』ってフィルラドは言っていた。


 午前中はなんだかんだでぼーっとしていた。ホントはポポルも安静にしてなきゃいけないんだけど、『もうベッドの上はこりごりだ!』ってあいつがうるさいのでクラスルームで静かに過ごすことを許可する。『しょうがないからヒナたちと遊ぶわ』ってあいつはヒナやグッドビールをおもちゃにして遊んでいたっけ。


 ちなみにあいつ、風邪ひいていた時の記憶はほとんどないらしい。『リンゴ食わせてくれたのだけはなんとなく覚えてる。看病してくれてありがとな!』って宝物であるセミの抜け殻を渡してきてくれた。あの場にはステラ先生とパレッタちゃんもいたんだけど、もしかしたら都合のいいところ(?)だけ記憶していたのかもしれない。


 そして、午後に事件が。


 今日も寒いですね、こういう日は暖炉の前でゆったり過ごすに限りますね……なんてステラ先生とお話していたら、『ステラ先生、ちょっと……!』ってガチな表情のピアナ先生がやってきた。ほぼ同時になんとなーく学校全体がざわめいて、何やら不穏な感じに。


 ハッとしたステラ先生がピアナ先生と一緒にどこかへと行ってしまう。またなんか校内に化け物でも出たのかな……ってみんなして話していたところで、ようやっとステラ先生が帰ってきた。


 『ちょっとね、近くの冒険者ギルドから要請があって……先生たち、遠征することになっちゃった……』って言われたとき、マジかよって思ったよね。


 なんでも、割と近くに邪竜の類が出現したらしい。最初は冒険者の連中だけで討伐できると思われていたんだけど、どうも想定以上に強くて手が付けられなかったのだとか。


 『特に、魔法的性質が強い竜みたいで……。すごく強い吹雪を操るらしくて、それこそ「天候を操る竜だ」って証言もあったくらいで……』とのこと。当然そんな竜に普通の剣や弓が効くはずもなく、独学で覚えたそこらの魔法使いの魔法も効くはずがない。故に、被害が増える前になんとかすべく、魔法のプロフェッショナルであるこの学校の先生たちに支援要請が来たとかなんとか。


 なお、その支援要請を受けてウチの校長(?)が決めたのが、ステラ先生、シキラ先生をはじめとした数人の先生の派遣。『アラヒム先生に、テオキマ先生も……グランウィザードを惜しみなく派遣して、確実に仕留める気みたい。ミラジフ先生もリストにあったっけ。少しだけど、研究院の生徒も同行することになってるよ』ってステラ先生は言っていた。


 相手が吹雪を操るって言うならアラヒム先生の熱魔法は効果的だろう。テオキマ先生の魔法は知らんけど、グランウィザードならめっちゃ強いのは間違いない。ミラジフがメンツにいるのは……同行する冒険者を守るためだろうか?


 ともかく、最低限の先生方だけ残り、残りは邪竜討伐に赴くらしい。その間は授業が止まってしまうから、各自自習してほしいとのこと。


 『討伐隊の人とは必要以上に話さないように』、『夜は必ず同じ先生の近くにいるように』、『変な男がすり寄ってきたら遠慮せずに魔法でぶっ飛ばすように』って先生にアドヴァイス。


 冒険者の男なんて総じてみんなクズだから、これでもなお足りないくらい。純真なステラ先生だし、悪い男にコロッと騙される可能性もゼロじゃないうえ、リバルトみたいなクソはどこにでもいる。そもそも道中にて、あのステラ先生が集団行動を出来るか……人見知りしないかがすごく心配だ。


 『そ、そんなに心配しなくても……! それに、たぶん一週間くらいで戻ってこれるから……!』って先生は言っていたけど……ああ、やっぱり不安だ。


 結局、夕方くらいにステラ先生たちは出発。今日は街で宿を取り、明日の朝正式に討伐隊に合流するらしい。邪竜を討伐すること自体はあのメンツだし全く問題ないとはいえ、ステラ先生が慣れない集団行動でさみしい思いをしないか、ひいてはろくでもないクズが近寄ってこないか、それだけが心配である。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。なんだかんだで雑談もあまり盛り上がらず。みんなステラ先生のことを心配していて、アルテアちゃんも『先生、ちゃんとハンカチ持ったかな……』って悲痛な面持ちをしていたっけ。


 こんな時でもギルは大きなイビキをかいてぐっすりと寝こけている。奴の黄金に輝く肉体が本当に眩しい。いろんなことがあってすっかり忘れていたけれど、こいつは自身の肉体に何か思うところは無いのだろうか。


 ギルの鼻には乙女の祈りを詰めておく。無事にステラ先生が戻ってこれますように。



※燃えるごみを捨てる。魔法廃棄物も捨てる。

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― 新着の感想 ―
[一言] もしかしなくても:邪神様
[良い点] いつも更新を楽しみにしています。 [気になる点] カチコミで1週間潰れ、今回で(最低でも)一週間潰れ…… 少なくとも2週間のカリキュラムが遅れる訳ですが、その後はどうなるのか? 授業圧縮…
[一言] 吹雪、ね……ギルだな (1週間後、もしや討伐どころか……w) 本命:書き手に都合の良い夢を見る 対抗:乙女の人形が出現 大穴:書き手が呪われる
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