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241日目 魔法流学:ヴェリュヌーヰの定理について

241日目


 ギルの枕元に禍々しい卵が。とりあえずヤバそうなので割ったら、中からさらに卵が。面倒なのでトイレに流して捨てておいた。


 ギルを起こして食堂へ。なんか今日はちょっぴり風が強め。さすがに竜巻とかつむじ風って程じゃないんだけど、洗濯物を干していたら確実に「持って」いかれてしまいそうなくらいに強い。木々がかなりざわめいていて、なんとなく不穏な感じがしなくもなかったり。


 『風が強いとセット乱れるよね』、『あと地味に髪飾りのチョイスも狭まるよね』……って女子たちが話していた。やはり彼女らにとっては洗濯物のことよりも自身の見目の方が心配になるのだろう。まぁ、洗濯についてはだいたい学校側でやってくれるからいいんだけどさ。


 割とどうでもいいけど、『……なんだかんだで、女子たちのスカートって鉄壁だよな』ってジオルドが漏らしていた。『……そういう防御魔法とかあるんじゃね?』、『いや、アレは純粋に小さい頃から鍛えたテクと見たね』ってクーラスとフィルラドも参戦。


 『風邪で捲れないように、錘としてスカートの裾のところに何枚かコインを入れてるんだぞ』って教えたら、『ウソだろちくしょう……!』、『知りたくなかったそんなこと……ッ!』ってやつらは歯をぎりぎりしていた。夢は夢のままでいたほうが幸せだと思った瞬間だ。


 なお、俺たちがロマンを話している間もギルは『うめえうめえ!』ってジャガイモを食っていた。一応こいつも男なので同じ話を聞かせたところ、『すげえじゃん! それってつまり筋トレじゃん! かーっ! 女子ってだけでずるいぜ!』ってコメントをいただいた。


 俺もうどう反応すればいいんだろう。ダンベル括りつけたスカートでも贈ればいいの?


 さて、今日の授業はミラジフの魔法流学。俺ってばせっかく気を利かせて『今日は風が強いですね?』って何気ない日常会話を振ったのに、あの野郎は小さく舌打ちしやがった。無視するだけならまだしもこの仕打ちとか、敬愛する恩師にここまで嫌われているという事実に俺のピュアハートがズタボロ。俺ってば泣いちゃいそう。


 クソどうでもいいことは置いておくとして、今日はヴェリュヌーヰの定理について学んだ。前回は魔法流れを表現する魔法式としてヲヰルァの方程式を学んだわけだけれども、ヴェリュヌーヰの定理も似たようなもん。


 『魔法学とは原則的に、どこまで行っても保存則に従い、構築される式は釣り合いの式となる。そうでなければおかしいし、もし釣り合っていない式があったとしたら、それは諸君らの方に問題がある』……ってミラジフはいつも通りの嫌味。一周回って尊敬する……いや、無理だわ。


 ともあれ、ヴェリュヌーヰの定理ってのは魔法流体における保存則の式のことを指す。やってること自体は魔力学で学んだそれとほぼ同じ……というか、こういうのって根底に魔力学があるのか? なんかすんげえ魔力学とかで見た覚えのある式がいっぱいあったんだけど。


 とりあえず、ヴェリュヌーヰの定理について以下に記す。



・ヴェリュヌーヰの定理

 ヲヰルァの方程式において、なんか色々諸々積構とかして式の形を整えると、××=一定の式(関係)を得ることができる。これをヴェリュヌーヰの定理と呼ぶ。ヴェリュヌーヰの定理では、あくまで実測できる魔法パラメータ(密度、魔法圧、浸食魔力など)で構築されているヲヰルァの方程式と異なり、各項がそれぞれのヘッドで表されているのが特徴である。それぞれ魔法速度ヘッド、魔法圧ヘッド、位置ヘッドと呼ばれており、これを合算した全ヘッドが一定であるということがヴェリュヌーヰの定理である。

 このように、ヴェリュヌーヰの定理とは同一流線上で全ヘッドが常に一定であることを示したものだが、系に外部からの魔力供給や損失が無く、また魔法流体が完全魔法流体であることを前提としているため、封縮性魔法流体では厳密には成立しないほか、例え系が同じであっても、保存則として成立するのは同一流線上のみであることに注意されたい。



 難しく書いたけど、要はいつもの保存則の一種。同一流線(これがポイント)であるならば、ある一点とある一点のパラメータを比較したとき、それはヴェリュヌーヰの定理により一定になるはずだから、こっちの点でわかっていないパラメータを導き出すことができますよ……ってだけ。


 結局のところ、流体的に扱っていようが魔力は魔力だ。考えるポイントこそ増えても、その根底にあるものは変わらない。『真っ当に勉学に励んできた者ならば、教えるまでもなくこの事実に行きあたっているだろうがね』ってミラジフは板書しながらもそんな嫌味を忘れない。何のために教師がいるんだって突っ込みそうになった俺はおかしいのだろうか?


 ここでは文章で表現しているけれど、実際はほとんどクソ面倒くさくて小難しい式で表記されていた。なんかもう魔導工学を彷彿とするレベル。まともに全部書いていたら到底日記に収まらないので、わかりやすく俺が文章でまとめた次第。もう一度あの式を書くのが面倒くさかったってのも理由の一つではある。


 ……前々から思っていたけど、なんで定理とか単語の意味を、文章ではなく式で表すのだろう? 結局それじゃあそれが何を意味しているのかまるで解らない。知っている奴ならそれで通じるだろうけど、それを知ろうとする……学ぶ立場の俺たちがそれでわかるはずがないだろうに。教科書作ったやつってだいぶ思考がぶっ飛んでいると思う。


 現に、ポポルもミーシャちゃんも、アルテアちゃんにジオルドもまるで授業の意味を理解できていなかったように思う。


 授業の後で、『魔力学に出てきた保存則の問題と同じ。触媒反応学みたいに釣り合いの式を立てるとこっちの点で全ヘッドが求められるから、もう一つの点で同じように式を立てて、いつもみたいにわからないパラメータを求めるってことだよ』って伝えたら、『……そういうことか!』、『だったら最初からそう教えてくれればいいのに……!』ってジオルドとアルテアちゃんは納得してくれた。


 もしかしたら俺、先生の才能があるのかもしれない。おこちゃま二人はそもそも基本がなってないから無理だったけどな!


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、『……なんでスカートにコインを縫い付けるの、知ってたんだあ?』ってロザリィちゃんにからかわれた。『普通の男子は知らないはずだよねえ?』ってにやにや笑いながら足でつんつんしてきたり。『あ、あげたスカート……や、やっぱり実用しているのっ?』って耳元で囁いてきたりも。なんか変な扉を開けそうになってしまったことをここに記す。


 とりあえず、『ウチのババアロリとアバズレの服を繕うのは俺の仕事だったし、リアのスカートの手直しだって俺がやってたから。その辺、マデラさんは結構気を使う人だからね』って答えておく。『あ……そ、そっか! そうだよね!』ってロザリィちゃんがなぜか真っ赤になっていたけど……一体何を想像していたのだろう?


 というか、素っ裸で歩いていても問題ないガキのスカートに、風対策をしなきゃいけない俺のこの気持ちよ。近くにロリコンがいると使わなくていい気を使わなくっちゃいけないから困る。


 まぁ、マジな話、迷子になったときとかのいざって時のお金でもあるんだけどね。絶対に使う機会なんてないだろうけど。


 そうそう、一応ジオルドにも『妹がいるんだったら、その辺気を付けとけよ』ってアドヴァイスしておいた。『銅貨を三、四枚入れておけば大丈夫。銀貨だと逆に危ないから』ってコメントも添えておく。ジオルドのやつ、『今から金貨ため込んでおかないと……』ってすっかりシスコン。人の話聞けよって思った。


 ギルは今日もスヤスヤと大きなイビキを書いている。最近は授業中もしっかり脳筋の筋トレしているからか、落書きしているのをあんまり見ない。学生としてはいいことなんだけど、なーんかちょっと物悲しいのはなぜだろう。


 まぁいい。ギルの鼻にはラスクの欠片でも詰めておく。ジオルドから俺にもらった奴……の、割った時にうっかり落としちゃった欠片ね。おやすみにりかちゃんまじおとなぼでー。

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― 新着の感想 ―
[一言] そういえば、流体って古典力学的じゃないのか 細かく考えれば量子力学寄りな部分もあるのは、当然って言えば搭載だけど 本命:ギルの肌に砂糖の粒 対抗:部屋が粉だらけ 大穴:書き手の唇がカサカサ…
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