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239日目 ルマルマ壱號のヴァージョンアップ

239日目


 ギルが半分寝ている……うん?


 ギルを起こして(?)食堂へ。奴が半分寝ているからか、『寝ぼけてるの?』、『休みの日なんだし、部屋で寝ててもいいんじゃない?』って何人かから声をかけられた。ギルはギルで半分寝ているものの半分起きているので、『せっかくの休日を寝て過ごすのはもったいないし……』って寝ながらスクワットしていた。怖い。


 朝飯の時に久しぶりにオトナなブラックコーヒーを飲む。やはりあの深い香りとほろ苦さは気分をしゃきっとさせてくれるから侮れない。特に最近は寒くなってきたし、コーヒーが特に美味い季節でもある。出来ることなら暖炉の前でロッキングチェアに揺られながら楽しみたいところだ。最高にクールじゃね?


 俺のお膝の上のちゃっぴぃも『きゅーっ!』っていつも通りコーヒー……というか、俺の飲んでいるものを欲しがってカップを手に取った。が、中身を見るなり『……きゅ』ってあからさまなしかめっ面。おこちゃまな奴にはコーヒーの苦さは合わないのだろう。


 不思議なのは、それでなおカップの縁の全周に口をつけてれろれろにし、一口だけ飲むところだろうか。飲んでから涙目になって俺に抱き着いてくるのに、なんでわざわざそんなことをするのかマジで意味がわからん。夢魔としての習性か何かだろうか。


 なお、ギルは半分寝ながらも『うめえ……うめえ……!』ってジャガイモを貪っていた。寝るのか食うのかどっちかにしろって思ったけど、あいつの場合寝ながらも普通に食えているからすごい。『こいつ味ちゃんとわかってんのかな?』ってポポルがギルの口にジャガイモを投げ入れながら首をかしげていたっけ。


 特にやることもなかったので、午前中は暖炉の前でぼーっとする。今日は珍しくヒナたちがいないと思ったら、どうやらジオルドとアリア姐さんに付き合ってお散歩に行っているらしい。ルマルマ壱號がいつものところに無かったから間違いない。


 そして、俺もちゃっぴぃを連れて散歩でもしようかな……と思ったところでジオルド&アリア姐さんの帰還。まだ戻ってくるにはずいぶん早い。そしてなぜかその傍らにはミーシャちゃんといつも通りアホ面晒して「へっへっへっへっ!」って舌を出しているグッドビールがいる。


 『散歩の途中で会ったんだけど……』、『この子が、ルマルマ壱號にじゃれついて離れてくれないの』とのこと。どうやら猛烈な勢いでルマルマ壱號を牽くヒナたちを羨ましく思ったのか、グッドビールもルマルマ壱號を牽きたくなっちゃったらしい。


 「これで機動力が増えるわね!」……とでも言わんばかりに、アリア姐さんは嬉しそう。ヒナたちを一匹一匹撫でていたほか、グッドビールの顎の下もわしわしと撫でていた。ブンブン尻尾を振ってアリア姐さんにじゃれつくグッドビールは、相変わらずのアホ面であった。


 ともあれそんなわけで、ジオルドがいつもの定位置でルマルマ壱號の改造に取り掛かる。『ヒナたち用に作ったから、ただ綱を着けられるようにするだけだとバランスが崩れるな……』とのこと。上手い具合に六つの留め具の位置を修正したうえで、グッドビール用のだいぶ大きめのそれを着けられるようにしなきゃいけないらしい。


 『なんかいい感じの材料ある?』って聞かれたので、適当に手持ちの材料を見せてみる。『これ使っていいか?』ってジオルドのお眼鏡に適ったのは、この前のやたらと魔法的性質に優れた黄金の魔力片。どうせ他に流用できるほどの大きさでもないので、快く譲る。


 せっかくなので俺もルマルマ壱號の改造をしようとしたんだけど、最高にイカす接着剤発射機構を取り付けようとしたところで「私の愛車に変なもの取り付けないでくれる……?」と言わんばかりにこめかみに青筋を浮かべたアリア姐さんに見つかってしまった。やはり植物にロマンなんてわかるはずがないか。


 なんだかんだでそんなに時間がかかることも無くジオルドによるルマルマ壱號の改造は終了。留め具の数&位置を増加&調整し、ヒナたちだけ、グッドビールだけ、そしてヒナたちとグッドビールが両方牽引するときに対応できるようにしていた。これで晴れてルマルマ壱號が鳥ソリならぬ犬鳥兼用ソリに進化したって寸法である。


 『せっかくだしハートマークも入れておくの!』ってミーシャちゃんの企みはジオルドによって阻止されていた。ミーシャちゃん、ジオルドに首根っこひっつかまれてもがいていた。『さすがにハートはないだろう……』ってジオルドはコメント。俺もそう思う。


 午後はルマルマ壱號の試運転に。早速ヒナたちとグッドビールに綱をつけ、ルマルマ壱號にアリア姐さんが乗車。なぜか『きゅーっ♪』ってちゃっぴぃがアリア姐さんのお膝の上に。頭と背中、そしてケツに対しての衝撃吸収性は大変に素晴らしく、そして柔らかくて乗り心地もよかったらしい。あいつは終始ずっとご機嫌であった。


 なんだかんだで散歩はいつもの湖のところまで。普通に三人と九匹でぐるって回っておしまい。最後の方はミーシャちゃんもルマルマ壱號の……あの、後ろのところに立って、アリア姐さんの肩を掴んで『もっとスピードを出すのぉぉぉ!』ってはしゃいでいた気がする。子供が笑う姿は微笑ましいなって思った。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。なんだかんだで今日はルマルマ壱號の改造とお散歩くらいしかやっていない。ギルは寝ながら筋トレしていた(学校の周りをずっとぐるぐる走っていたらしい。新手の悪魔憑きか魔人が出現したってちょっと噂になっていた)し、そしてロザリィちゃんはピアナ先生の元で花嫁修業。『今日は新しいお料理教えてもらっちゃった♪』ってうきうきで俺に報告してくれたから間違いない。


 ああ、あと一つすごいことがあった。


 今日一日ずっと姿を見ないなと思ったら、夕飯のギリギリくらいの時間になってフィルラドとアルテアちゃんが揃って帰還。なんか今まで見たことないくらいにアルテアちゃんがおめかししていて、なんだか妙にお顔が真っ赤っか。まず間違いなくフィルラドとデートしていたのだろう。アルテアちゃんにしては結構珍しい。


 『可愛いカッコしてるのを見られると恥ずかしいから、朝早くに出たのに……! 帰ってきたときのことを考えてなかった……!』ってアルテアちゃんはロザリィちゃんたち女子に囃し立てられながらつぶやいていた。


 『アティはいっつもそういうけど……自分でそう思ってるだけで、可愛いのも普通に似合ってるよな』ってフィルラドがさりげなくつぶやけば、アルテアちゃんはさらに真っ赤に。フィルラドのそういうところがマジで侮れない。ナチュラルにそういうこと言えるやつってなんかすごいよね。


 雑談中の時も、なんかアルテアちゃんはフィルラドの隣ではにかみながら(大して得意でもない)カードゲームをしていたし……きっと、今日は相当お熱いデートだったのだろう。『ちくしょう』、『クソが』ってジオルドとクーラスが歯をぎりぎりしていたのを覚えている。


 ふう。だいたいこんなもんだろう。今日もギルはぐっすりすやすやとクソうるさいイビキをかいている。そして久方ぶりにちゃっぴぃが俺のベッドにもぐりこんできている。最近寒いし、ここはいっちょ一晩抱き枕の刑にして湯たんぽ代わりにしてやろう。いいか、これは俺が風邪をひかないためであって、決してちゃっぴぃに風邪をひかせないためではない。そこのところ勘違いしないように。


 ギルの鼻にはコスモスの花でも差しておく。散歩に行ったとき、ポツンと一本だけ生えていたからついつい採ってきちゃったんだよね。みすやお。

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― 新着の感想 ―
[一言] はい、こちらも最新話まで追いつきました! これからも翻訳頑張ってください!
[一言] 使用者により間改造は防がれた、と……ちっ 本命:ギルの目の中に花 対抗:鼻から花 大穴:部屋が花だらけ
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