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226日目 嵐が明けて:お散歩日和

226日目


 ちょう快晴。ただしこの部屋の真上だけちょう大雨。マジなんなの?


 ギルを起こして食堂へ。昨日までの嵐が嘘だったかのようなピーカンに思わず気分もうっきうき。文字通り雲一つないいい天気で、暑すぎず程よく涼しい気持ちのいい風が吹いているというなんともピクニック日和ないい気分。


 そんなわけで朝飯にはミックスサンドをチョイス。お野菜系のやつ、がっつり肉系のやつ……とレパートリーは豊富。一つ一つの味が違っていて飽きをこさせない。もちろんどれも普通にデリシャス。残った食材を適当に使っているとか言ってはいけない。


 俺のお膝の上のちゃっぴぃも『きゅーっ♪』って美味そうに食っていた。が、あの野郎、野菜のそれになると露骨に『あーん♪』の構えを解いてくるから困る。肉の時とかは真ん中の柔らかくて一番美味いところを容赦なく『あーん♪』してくるくせに。


 でも、今日も可愛い愛しのロザリィちゃんが『パパ、あーん♪』って食べかけのそれを『あーん♪』してくれてちょう幸せ。しかもロザリィちゃんってば、俺が一口齧ったそこをわざわざ見せつけるようにして齧るっていうね。自分でやっていて真っ赤になるところとか、俺もう改めてこの娘を一生かけて幸せにしようって思ったよ。


 一応書いておく。ギルは今日も『うめえうめえ!』ってジャガイモを食っていた。『こうもいい天気だとやっぱジャガイモが美味いな!』とのコメントも。天気の良し悪しで蒸かし芋の味が変わるとか初耳である。


 せっかくのいい天気なので、今日はちゃっぴぃと散歩をしてみることに。『最近あまりかまってあげられなかったからな……』ってアルテアちゃんもエッグ婦人とヒナたちを連れ出し、『二日もお部屋の中じゃきっと退屈なの』ってミーシャちゃんもグッドビールを連れ出し、『いい天気だし、日光浴にはちょうどいいだろ』ってジオルドもアリア姐さんを連れ出した。『ヴィヴィディナ的にはここで協調性を見せたいところなり』ってパレッタちゃんもヴィヴィディナ(複合蟲的なすがた)を連れ出す。ちょう豪華メンバー。すげえ。


 で、ルマルマ壱號にアリア姐さん、それを牽くヒナたち、それを追いかけるグッドビールに俺の肩車に乗っかったちゃっぴぃという図式が完成する。もはや一つのキャラバンと言ってもいいくらい。


 なお、俺の部屋の真上だけ猛烈な勢いで振る雨を見て、ポポルが『滝じゃん。修行できるじゃん!』ってアホな発言をしたため、ギルはそれに夢中。『修行しちゃうぜぇ……!』っていつも通り半裸で屋根に上って雨に打たれまくっていた。言い出しっぺであるポポルも巻き込まれ、『ふぎゃああああ!?』って悲鳴を上げていたのを覚えている。


 『根性を叩き直すのにちょうどいいな』ってアルテアちゃんがギルにジャガイモを投げ渡していた。ギルはちょう笑顔でそれを受け取り、うなずいていた。フィルラド(未だに寝こけていた)の未来が決まった瞬間だった。


 肝心の散歩だけれども、まぁ普通にのんびりと特に問題なく進む。俺はロザリィちゃんと手をつないでゆったりと景色を楽しむというちょっとしたデート気分。ロザリィちゃんも『たまにはこういうデートも気持ちよくっていいねー……』ってにっこり。おててがすべすべで柔らかくて、しかもぎゅって握り返してくれてもう心臓がヤバかったよね。


 『雨上がりだからか、空気がきれいだな』ってジオルドもあくびをしながらつぶやいていた。『ランニングしたくなる清々しさだ』ってアルテアちゃんもヒナたちのケツを見守りながらつぶやいていた。『みぎゃーっ!?』ってミーシャちゃんが元気のあり余ったグッドビールに引っ張られて悲鳴を上げていた。実に平和な散歩の光景である。


 今更だけど、アリア姐さんって散歩させる必要あるのだろうか? アビス・ハグって元々歩くのがすごく苦手な種族だし、普通に外で日向ぼっこさせておくだけで十分だとは思うけど。まぁ、アリア姐さん自身もジオルドとのデート気分だっただろうから、別に悪くは無いんだけどさ。


 そんな感じでぼちぼち歩いていたところ、ちょっとした丘の上、木漏れ日がなんとも心地よいあそこに大きな毛玉があるのを発見。なんだなんだとみんなで近づいてみれば、なんとこの毛玉、ゆったり上下に膨らんだりして動きよる。しかもすんげえふっかふかでなんか温かい。


 どこかで見たことのある色合いだな……と思ったら、その毛玉にノエルノ先輩が抱き着くようにして埋もれているのに気づく。『すぴー……っ』って口元をほころばしてなんとも気持ちよさそうにスヤスヤしている。お日様とそよ風、そしてこの柔らかくてぬくい毛玉のスリーコンボにやられてしまったクチだろう。


 で、反対側に見覚えのある狼の頭が。毛玉だと思ったそれ、普通に狼魔法で狼に変化したキイラム先輩の腹(および尾っぽ)であった。キイラム先輩の方も組んだ前足(で、いいのだろうか?)に自らの頭をのっけて目をつむっており、小さな寝息がかすかに聞こえたり。


 狼だから寝顔が普通にイケメンだった。なんかカッコよさと気高さが両立していて思わず見入っちゃう感じ。普段のロリコンとはとても思えないっていう。


 『……邪魔しちゃ悪い感じかな?』ってロザリィちゃんがすんげえにっこり。一体何がどうしてそうなったかわからないけれど、ノエルノ先輩とキイラム先輩がこうして外で抱き合って(?)お昼寝しているのは紛れもない事実。


 『ほほぉ……! なるほどなぁ……!』ってアルテアちゃんも妙にはしゃいでいたし、「な、なんかイケナイもの見てるみたいでドキドキするわね……!」……と言わんばかりにアリア姐さんも鼻息を荒くしていた。


 『とりあえずあたしも寝とくの』ってミーシャちゃんは普通にノエルノ先輩の隣にもぐりこみ、キイラムのそのふっかふかのおなかにぎゅーっ! って抱き着く。辛抱堪らなくなったちゃっぴぃも『きゅーっ!』ってわざわざミーシャちゃんとノエルノ先輩の間にもぐりこみ、そしてキイラムの腹に頭から突っ込んでふかふかしていた。


 『いいの?』って一応ミーシャちゃんに聞いてみる。『このふかふか毛皮に罪は無いの。あったかくてふわふわで、程よい揺れが最高なの。こんないい天気でこんな心地いい場所……これだけ条件がそろっているのに逆に無視するなんて、それこそ失礼ってもんなの』とのこと。ミーシャちゃんらしい独特の価値観だと思う。


 そんなわけで、ミーシャちゃんとちゃっぴぃとはそこで別れることに。外でお昼寝させるのは心配だけれども、そこはキイラム先輩がいるから問題ないだろう。そのキイラムこそがロリコンであるという最大の問題については、ノエルノ先輩と言う強力な監視がいる。盤石と言っていい。


 一応書いておく。『人目さえなければな……』ってアルテアちゃんは非常に葛藤していた。なんだかんだでキイラム先輩の尾っぽを何度も抱きしめていたあたり、結構揺らいでいたのだろう。『素直になればいいのに。意味わかんない』ってパレッタちゃんがずっと首をかしげていたのを覚えている。


 ちゃっぴぃがいないことだし、帰りはロザリィちゃんと存分にイチャイチャしながらお散歩できる……と思ったものの、『ちくしょう……クソが……!』ってジオルドが怨念をまき散らしていたためそんな気分になれず。『なんだかんだで相手いるじゃねえか……!』、『選り好みしやがって……!』、『嫌味かあの野郎……ッ!』ってあいつ帰る間ずっとブツブツ言ってたんだよね。


 アリア姐さん、そんなジオルドを見て下唇を噛みまくっていた。恋愛対象として見られていないことにひどくプライドを傷つけられたらしい。素材は悪くない……どころか超一級品なのだから、あとは植物の域を脱することができれば、あるいはジオルドをそこまで引きずり落とすことができればアリア姐さんの「勝ち」だと思う。


 なお、ジオルドの怨念やアリア姐さんの嫉妬(?)はヴィヴィディナが美味しくいただいていた。『まさかお散歩でここまで上質の糧が手に入るとは……!』ってパレッタちゃんも上機嫌。


 ルマルマ寮に戻ってきたところで、屋根の上でギル、ポポル、フィルラドが修行をしているのを発見。ギルはちょううっきうきだったけれども、フィルラドとポポルは歯をガチガチさせて真っ青になっていた。もはや表情も消えている。怖い。


 『俺正直ヴィヴィディナよりグッドビールの主人になりたいんだけど』ってポポルがぶるぶる震えながらグッドビールに抱き着いて暖を取っていた。『ヴィヴィディナだってふかふかになれるもん!』ってパレッタちゃんが憤慨し、ヴィヴィディナ(毛虫の如きすがた)をポポルにけしかける。元気な悲鳴が響いた、とだけ。


 『エッグ婦人って……あったかいんだな……』って半裸のフィルラドは全裸のエッグ婦人を抱きしめて暖を取っていた。『アホなこと言ってないで……もう……』ってアルテアちゃんがあきれたようにフィルラドの体をタオルで拭いてあげていたのを覚えている。これはいちゃついているうちに入るのだろか?


 『この世に神はいない。あんまりだ』ってジオルドはひたすらに絶望していた。『これでも食って元気出せよ、な?』ってギルはちょう笑顔で汗を滴らせながらジオルドにジャガイモ。ジオルドは恋愛以外にも友情という尊いものがあることに気づくべきだと思う。


 夕方ごろ、ノエルノ先輩とキイラム先輩がちゃっぴぃとミーシャちゃんをルマルマまで送りに来てくれた。『いま帰ったの!』って勇猛たるミーシャちゃんが堂々の宣言をし、うちのちゃっぴぃも『きゅーっ!』って全力ダッシュで俺の腹に頭突き。元気な証拠である。


 一方で、『ち、違うんだよ……! 別に変な意味とかあったわけじゃなくて、たまたま偶然……!』ってノエルノ先輩は真っ赤になってしどろもどろ。『しょうがないだろぉ……! お昼寝日和にあんなふかふかなの、どうしようもないじゃないか……!』って涙ながらに語っていたけれども、絶対それだけじゃないだろう。


 キイラム先輩は、『俺はただ単に、妹を喜ばせる方法を考えていただけだ。そしたらこいつが、「それならいい案がある、試させてやるからちょっと付き合え」って言ってきた。半信半疑だったが、思った以上に受けが良さそうで驚いている』って言っていた。


 ロザリィちゃんとアルテアちゃんのニヤニヤが加速。『ううう……っ!』ってノエルノ先輩、とうとううずくまってほっぺを押さえてしまった。肝心のロリコンは『またいくらでもやってやるから、いつでも声かけてくれよな! 何なら毎晩でもいいぜ!』ってちゃっぴぃとミーシャちゃんにモーションをかけまくっていたけどな!


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。なんだかんだ書いたけれども、俺もあのデカさのふかふかな獣に抱き着いてお昼寝してみたいことも無いことも無かったり。そういうの、誰しも一度は考えることだと思う。


 問題なのは、それだけデカくてかつ安全な魔物ってのがそうそういないことだ。俺が子供なら相対的にデカい魔物はいなくもないけど、大人の全身が包まれるほどの大きいふかふか魔物となると……必然的に、凶暴でヤバいやつばかりになる。デカいってのはそれだけで十分な脅威だし。


 グッドビールが大きくなれば、あるいは可能性があるかも? 今度から少しずつグッドビールのおやつを増やして太らせてみるのもいいかもしれない。


 案外、ノエルノ先輩もそんなことを思ってキイラムで我慢してやろうと……いや、無いな。時間があるうちに、思い出の一つでも作ろうとしたって所だろうか。他人様の趣味をとやかく言うつもりはないけれど、キイラムがロリコンである限りだいぶ望みは薄いと思う。ロリコンに効く薬を作る方が早いんじゃね?


 ギルは今日もぐっすりと大きなイビキをかいている。一日滝行してからか、どことなく筋肉のツヤが良いような。この調子で脳筋の方も頑張って鍛えてほしいものである。


 ギルの鼻には、散歩のときに見つけたツクシを突っ込んでおく。この時期にこんな場所に生えているものだからついつい採っちゃったやつね。おやすみなさい。


※燃えるごみはお散歩。魔法廃棄物はお留守番。

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― 新着の感想 ―
[一言] モフモフはいいよね……ただ、それが先輩だったら見た瞬間逃げるかもしれないけど 本命:ギルから土の香り 対抗:ギルが土臭い 大穴:部屋が土臭い
[一言] ポポルもちゃんとヴィヴィディナの主人だったんだな・・・
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