212日目 他校交流降神魔法大会:ダンスパーティ(許さない)
212日目
ギルが鋼の肉体。強い。
ぜ っ た い に ゆ る さ な い
クソがふざけんな 舐めやがって 呪ってやる
クソがクソがクソが舐めやがってクソが
許さない 絶対に許さない
ふざけんじゃねえぞクソが何様だよクソが
許さない呪ってやる呪ってやる呪ってやる許さない絶対に許さない
生きて帰さないふざけんあ許さない舐めやがってクソが呪ってやる
舐めやがって クソが クソが クソがクソがクソが
許さない
クソが 舐めやがって
クソが クソが 舐めやがって
舐 め や が っ て !
……ふう。落ち着いて……はいないけど、あのクソの所業を未来永劫忘れないためにも、大変不本意ながら日記を書くことにする。いいか、俺だってこんなこと書きたくはないが、それでも万が一があるから、心を悪魔にして書いているのだ。出来ることなら、今すぐ俺の記憶を……否、あの事実そのものを消し去りたいのは俺の本心だということを、あらかじめここに記しておく。
気を取り直して、極力いつも通りに書いていく。
ギルを起こして食堂へ。なんかいつもに比べてちょっぴりメニューが豪華だと思ったら、『貧相なものを出すと舐められるから』とはおばちゃん。どういうこっちゃと思っているうちには、ティアトの生徒たちがわらわらとやってきた。なんかもう朝飯の段階で一緒に取ることになっているのだとか。
ティアトの連中、一応は愛想の良い感じ……だけれども、元気いっぱいにお口を汚してミートソーススパゲティをほおばるウチのちゃっぴぃやミーシャちゃんやポポルを見て鼻で笑いやがった。舐めやがって。
あとあのクソども、『うめえうめえ!』って美味そうにジャガイモを貪るギルを見てもプークスクスって感じでこっそりひそひそ。『ずいぶん美味しそうに食べられていますね?』ってなんか嫌味たっぷりに声をかけてきたりも。ギルのやつ、『実際めっちゃ美味いよ! この美味さがわからないなんて人生の半分以上損していると思うな!』ってちょう笑顔だったけど。
一応書いておく。この段階でティアトの男子の何人かがウチの女子を見てこそこそ話していた。目が合って気づかれると手をひらひらって振ってごまかしていたけど……。
俺にはわかる。アレはナンパするときとか、獲物を見定める時の目だ。俺はもう、何度あの目をしたロリコンからババアロリを守ってやったかわからない。
とりあえずまず軽めにガチ水虫の呪でもかけてやろうか……って魔力を練ろうとしたところで、『まだやめときなよー?』ってロザリィちゃんに止められてしまう。『その、ああいうのは街に行けばいくらでもいるし……まだ、直接何かされたわけじゃないし……』とのこと。
ロザリィちゃんの慈悲にあいつらは感謝すべきだと思う。あと、今度ロザリィちゃんにその街の概要を詳しく聞いておかなくては。誰がそんな愚行をしたかわからないけれど、そこに住んでいる男全員呪えば当たりがでてくるだろう。
朝飯についてはこんなもん。午前中はよくわかんないままクラスルームで過ごし、午後の早い時間から開会式に向けてみんなで正装をすることに。
男子の着替えは割とすぐ。レンタル衣装だし、これと言って手間取るようなものでもない。ネクタイの着ける練習もさせておいたから、大きな混乱は無し。
あと、おめかしってことでヘアワックスを解禁。『えっ、そんなの使ったことねーよ』っていうおこちゃまポポルがいたので、適量を手に取ってあいつの頭をわしわししてみる。いつもの大して手入れしていない頭があっという間にそれなりに見られるような感じになった。
ほかの連中にもワックスをやりまくる。『おお……なんか一気にそれっぽくなったな……!』、『めっちゃ貴公子っぽくね……!?』ってはしゃぐ奴が多数。衣装に着られている感が半端なかったし、ポポルに至っては子供が背伸びしている感じがすごかったけれども、まぁそれなりにモノにはなっていたと言えよう。
ギルもがっつりオールバックに。あいつはガタイがいいから、シルエットがすごくきれいで正装がめっちゃ映える。胸元のボタンが弾けそうなのがちょっとアレだったけど、着こなしって意味ではあいつが一番。
惜しむらくは、あまりのガタイの良さとオールバックのせいでその筋の人間にしか見えなかったことだろうか。まぁ、アホみたいな……いいや、人懐っこい笑みを浮かべているから、そんな雰囲気は全然しないんだけどね。
あと、ちゃっぴぃのおめかしもやっておく。『きゅーっ!』ってあいつも気合ばっちり。とりあえず男子の三倍以上かけてガチめに頭をセットして、そのあとにフリフリ満載の可愛いドレスを装備。
いやはや、自分でもびっくりするくらいに可愛く仕上がったよね。どこのお姫様だって言うくらいに完璧。俺が子供だったらそのまま初恋の相手になっちゃいそう。素材が良いのか、衣装を手掛けた俺の腕が良いのか、あるいはヘアセットを手掛けた俺の腕がいいのか……まぁ、全部だ。
『きゅん♪』ってあいつも嬉しそう。『きゅ! きゅ!』ってすんげえ自慢げで、いろんな人の目の前に行ってくるっ! って回ってスカートをひらひらしていた。
せっかくなので俺も傍らでくるって回ってみたら、『もう酔ったの?』って言われてしまった。冗談の通じない奴はこれだから困る。
そんなこんなをしていたところ、女子たちの登場。
いや、すげえって思ったよね。
もうね、みんなガチでおめかししているの。舞踏会に出向くどこぞのお嬢様って感じで、ちょっと前まで同じように飯食っていたとは思えないレベル。普段、夜の雑談中にあられもない恰好でダラけながら夜食のスナックをつまんでいる人たちとはとても信じられなかった。
『どーよ!』、『惚れなおしたでしょ!』って彼女らは言っていたけど、マジに目を奪われている男子がかなりいた。なんだろね、はじめっからそういう人たちだって言うならそこまで衝撃を受けないんだけど、すごく身近で生活感があるのを知っている人たちがそんなガチな格好になっているから……こう、ギャップにやられたっていうの? 単純に正装しているっていうそれ以上の衝撃があったんだよね。
もちろん、俺はロザリィちゃんのドレス姿にくぎ付け。バックレスドレスって言うの? 大胆にもちょっと広めに背中を見せている、赤を基調とした豪華なドレスね。ロザリィちゃんのシルエットのメリハリが存分に活かされていて、綺麗なその背中から目が離せない。
できることなら、だれの目にも触れさせず、今すぐ俺の部屋に連れて行きたかった。もうホント、そう思えるくらいに綺麗だったの!
『……どう、かな?』って微笑むロザリィちゃん。『最高すぎて、ちょっと言葉が出てこない』って返す俺。『出てきてるじゃん!』ってけらけら笑いながら俺の脇腹を突いてくるロザリィちゃん。天国かよ。
しかもしかもロザリィちゃん、『あっ……髪、上げてる……! それに、──くんだけ衣装ちょっと違うね!』って俺の変化にまで気づいてくれた。
『マデラさんの宿で、たまに正装をする機会があったから。その時着てるやつで、髪もその時にやるセットかな?』って返す俺。『こんなにカッコいいのに私に黙ってたなぁ……? もう、お仕置きされる覚悟はできてるよねぇ……?』って俺のネクタイ(あえて崩してあった)をくいくい引っ張ってくるロザリィちゃん。一生あの時間が続いてほしかった。
残念ながら、至福の時間は『きゅーっ!』ってちゃっぴぃが俺のケツを盛大に蹴り上げたことで終了。ちゃっぴぃには、『スカートをはいてるんだから、蹴るとしたらローにしておけ』と言っておく。こいつ普段から全裸とはいえ、スカートの中が見えちゃうのは別問題だからね。
で、女子がお化粧タイムに入ろう……としたところで、『みんな、準備はどう……?』ってステラ先生の声が。『おかげさまで、順調ですよ……』って声の方向を向いたら。
そこには、マジもんの女神が降臨していた。
『う……そ、そんなにみられると恥ずかしい……』ってお顔を真っ赤にするステラ先生。
深い蒼の、それはもう立派なドレスを身に纏っていた。
全体的にシックで落ち着いたデザインで、上半身はかなりぴったりとシルエットを強調させている。ステラ先生ができる精いっぱいなのだろう、胸元は結構開いている……ように見せかけて、複雑な模様の入ったレースになっていた。
ダンスを意識しているのだろうか。スカートの丈はそこまで長くない。でも、布の余裕みたいなのがたっぷりで、たとえとしておかしいけれども、カーテンみたいな感じになっている。しかもそのうえで、先生のおみ足がちらちら見えた……スリットが入っていた。
でもって、普段のステラ先生のヘアセットも素敵だけど、今日のはまた一段と素敵だった。豪華な髪留めでこう、立体的にまとめてあって、お姫様もびっくりな感じできらびやか&美しい。なんならこのまま絵のモデルになってもらって、永久に絵画としてこの世に保存することこそが魔系の使命および義務と言っても何ら差支えはない。
眼福とはまさにあのこと。普段のステラ先生でさえあんなにも素敵なのに、まさかそれ以上がこの世に存在するとは。さすがはステラ先生である。
『ちょ、ちょっと冒険してみたんだけど……や、やっぱり変かな!?』ってステラ先生があわあわしだしたので、ルマルマの総力を挙げて否定しておく。『めっちゃ綺麗です!』、『嫉妬する気も無くなっちゃったよ!』ってみんなが本心からの言葉を紡いでいた。
俺? 『先生に会えてよかったって、今改めて思いました。ちょっともう、言葉が出てこないんですけど……本当に、綺麗です』って何とか絞り出せたくらい。ステラ先生、『お世辞でもうれしいな!』ってにっこり笑顔。お世辞じゃないのに。
ともあれその後はお化粧&最後の身だしなみ。僭越ながら、ロザリィちゃんにお化粧をさせていただいた。ただでさえ可愛いお顔がさらに可愛くなって俺の心臓が破裂しそう。もし周りに人がいなかったら、あの瞼を閉じたロザリィちゃんに心行くまでキスしていたと思う。
男子は男子で、『約束ですよ!』ってステラ先生にネクタイを直してもらっていた。『へへー……! ちょっと、憧れだったんだぁ……!』ってステラ先生もご満悦。ドレス姿の超絶美女にネクタイを直してもらう……至近距離でのそのやり取りで、俺含む男子全員がカチカチになってしまったことをここに記す。
いや、しょうがなくね? ステラ先生が見上げてくるし、なんか良い匂いするし、なんかちょっとチラチラ見えそうになるし……気の利いた言葉をかける余裕なんて全くなかったよ。
ぼちぼち準備が整ったところで開会式の会場……要は、食堂へ。なんかいつもの机なんかが全部取っ払われているうえ、飾り付けがガチな感じに。いつのまにやら豪華な絨毯(?)が一面に敷かれていて、シャンデリアも妙にグレートになっている。
『あら、本当の舞踏会みたいになってる。こんなのできたんだね』ってドレス姿のシャンテちゃん(妙に着慣れている感じ。やっぱいいとこのお嬢様なんだろう)が認めたほどといえば、どれほどのものか想像できると思う。
ティキータ、アエルノの連中もがっつりおめかしして会場に。やっぱり女子はみんな色とりどり、形式も様々なドレス姿で、一方で男子はタキシード風のアレにネクタイ&ヘアワックスで決めている。『こうして髪上げるの初めてだけど、なかなか悪くないな!』って初めてにしてはものすごく様になっているゼクトが言っていた。
雑談をしているうちにはメンツが続々登場。ポシム先生、アラヒム先生、テオキマ先生といった偉い先生(グランウィザード)はグランウィザード用の正式のローブを身に纏っていて、シューン先生やヨキ、キート先生なんかは俺たちと似たような正装。たぶんだけど、グランウィザードの先生もローブの下は似たようなものだったと思う。
『…慣れねえな』って低い声。いつのまにか近くに正装グレイベル先生。恰好自体は俺たちとあんまり変わらないのに、その迫力が段違い。そっち系のヤバいパーティの用心棒みたい。この格好のまま憲兵の五人や十人くらい軽くブチのめすことができそう。学校の先生というよりかは完璧に筋の人。グレイベル先生だって知ってなきゃ、すぐさま距離を取っていたと思う。
『ただでさえ強面でいかついのに、悪い意味ですごく似合ってるよねー!』って楽しそうな声がその傍らに。ドレス姿のエンジェルピアナ先生。しゅっとした緑色のスレンダーなシルエットが天上の軌跡を紡いでいるパーフェクトなドレス。自分で言っててよくわかんないけど、ステラ先生に引けを取らないくらいに綺麗な姿だった。
……こういっちゃ失礼かもだけど、舞踏会にやってきた令嬢とその護衛の(カタギではない)用心棒っていう風にしか見えなかった。まぁ、あながち間違っちゃいないと思うけど。
そうこうしている間にはティアトの連中も。やっぱり連中も正装……なんだけど、そろいもそろって白ジャケットって言うね。何様のつもりだよって思った。しかも生徒代表のあのシエルゼルとかいうクソはマントなんか着けちゃってるし。
いいか、ローブじゃなくてマントだ。自分が王子様か何かかと思っているんじゃないのかね?
全員揃ったところで開会式開始。なんか他校交流降神魔法大会の意義とか歴史とか、その目的だとかが話されていたけど……まぁ、みんな聞いちゃいない。とりあえず、大事そうなところだけ書き留めておく。
・対抗試合は明日から五日間にかけて行われる。なお、五日間のうち三日目は休養日とする。
・対抗試合の内容は開始直前まで発表されない。そのため、試合に参加する選手は当日その場で決めるものとする。
・対抗試合は四試合行われる。その勝敗の数で決着をつける。
・一度試合に参加した選手は原則として以降の試合に参加することはできない。
・試合ごとの特殊なルールについては都度説明する。
ぶっちゃけいつぞやのアエルノとの決闘と同じ。『あくまで交流のための試合なので、勝ち負けにこだわる必要はありません。互いの魔法技術の研鑽につなげることが……』みたいなことが言われていたけど、大事なのは勝つか負けるかでしかない。世の中そんなに甘くないのだ。
で、よくわかんないまま開催宣言。終わった瞬間、『それでは交流のための立食兼ダンスパーティを始めます』ってアナウンスが。
直後に今まで何もなかった部屋の端の方にこれでもかと言わんばかりの豪華な御馳走が。もしかしたら先生方の飲み会よりも豪華だったのかもしれない。基本はあれと同じメニューみたいだったけど、明らかにバリエーションは増えていたし、いわゆる学生向けのそれが増えていた。
『うっひょう!』ってまずはポポルが飛びついていく。『高い酒あるじゃん!』ってフィルラドもにっこにこ。『飲むのはダンスが終わってからにしてくれよ……』ってアルテアちゃんも続き、『とりあえず肉を独占するべし』ってパレッタちゃんも戦闘態勢。
まぁ、そんな感じで各々楽しく豪華な立食形式パーティを楽しんでいた。普段じゃ絶対飲み食いできないものを遠慮なく食べて……いつもとちょっと違う雰囲気のクラスメイトと楽しくおしゃべりして……同じように飯を食ってるティアトの連中のことも、この時ばかりは忘れて至福のひと時を過ごせていた。
どれだけ楽しかったのかは……ちょっとページが大変なことになってきているから、ここでは省く。今更書くまでもないだろうし。
問題となったのは、ここからだ。
ある程度腹も膨れて、そろそろダンスパーティが始まるのかな……って思っていたら、ステラ先生がやってきた。これはもしやダンスのお誘いかとワクワクしてたところ、『楽しんでいるところ申し訳ないんだけど……その、先生と一緒に挨拶についてきてくれる?』とのこと。
俺はルマルマの組長で、ステラ先生はルマルマの担任だ。だから、代表して向こうの代表者に挨拶をしなくてはいけないらしい。
まぁ、その話自体は理解ができる。俺が逆の立場でも、同じことを言っただろう。メンツを守る、筋を通すというのは何よりも大事だってマデラさんも言ってるし。
で……ロザリィちゃんも一緒にステラ先生と共にあいさつ回りへ。気づけば、ラフォイドルもミラジフとなんか動いてたし、ゼクトもシューン先生と一緒に向こうの先生&生徒(たぶん組長的な奴)に挨拶していた。
俺たちの相手は誰かな……ってところで、向こうと目が合う。
うん、あのリバルトっていういけ好かないクソね。
しかもその傍らには、シエルゼルというクソ(とその取り巻き)も。あんまりだ。
『やあやあ、これはこれは……!』ってリバルトのクソが馴れ馴れしくも挨拶。『お噂はかねがね……いやはやしかし、若い女性だとは聞いていましたが、これほど美しいとは……!』って歯の浮いたおべんちゃらまで。人目が無ければぶん殴っていたところだ。
シエルゼルの方も、『キミが代表者の一人かな? ……短い間だけど、実のある交流になることを願っているよ』って片手を差し出してきた。
日記だとニュアンスがあまり伝わってこないけど、あのクソ野郎、『どうせお前らから学ぶことなんて何もないんだよ』って感じでへらへらしてたからね。ロザリィちゃんに後ろをこっそりちょんちょん小突かれなければ、握手していなかったっていう。
とりあえず、当たり障りも意味もない言葉で適当に挨拶。ステラ先生もそんな感じ……というか、間違いなくリバルトはステラ先生の苦手なタイプだ。先生若干涙目というか、かなり焦っていたみたいだし。
あとシエルゼルのクソも俺じゃなくてロザリィちゃんにずっと話しかけていた。マジぶっ飛ばすぞコラ。
もちろん、俺のロザリィちゃんはシエルゼルの話に対して黙ってにこにこするばかり。俺の腕を取って、知らんぷり……じゃないけど、すまし顔。
『やれやれ……見せつけられちゃったな』ってシエルゼルは敗者の顔。奴の取り巻き(?)のクソも、『お前がフラれるなんて、ウチじゃ考えられないな』とか偉そうなこと言っていた。
というかあいつ、傍らにおめかししたパートナーがいるのにロザリィちゃんに色目使うか普通? あいつの倫理観マジでどうなってんの?
まぁ、そのパートナーもお高く留まった高飛車な嫌味っぽいやつだったけど……あんまり話しかけてはこなかったけど、随所随所でロザリィちゃんと視線でバチバチやってたんだよね。
とりあえず、面倒な奴は酒でごまかすに限るので、近くのボトルをひっつかみ、『どうです、ここは一つ友好のための交流として、無礼講でこいつで勝負するのは?』って持ちかけてみる。
『それはここにいる七人全員で、という意味かい? 悪くないね!』って乗り気のシエルゼル。
『もちろん潰れるまでだよな? 俺もゼルも、酒は強いぜ?』って乗り気のクソ。
『あら、酔ったら介抱してくださるのですか……?』って猫撫で声&上目づかいで微笑んでくる女。嫌悪感しか覚えなかったのはなぜだろう。
ともあれ、こいつらが乗り気になったので、度数の高い酒をブチ込んで明日の朝動けないくらいに飲ませてやろう……と思ったのに、『いや……止めておくよ。キミの目を見ていると、なぜか嫌なことを思い出しそうになる』ってリバルトがイモを引いたためお流れに。これだからケツの穴の小さい男は困る。
で、だ。
クソ、意味もなく机を殴ってしまった。俺らしくない。
そのやり取りをしていたら、会場に音楽が流れだした。そろそろいいタイミングだってことで
クソが
ダンスパーティの合図が何かのつもりクソがだったんだろう。雑談&ディナーの雰囲気がクソが消え去り、辺りは一気にダンスのクソがムードに。最初の一人が踊りだせば、クソが続々と後から踊りだす奴が出てくる雰囲気がクソがひしひし。
クソがふざけるな舐めやがって
ああ、思い出すのも忌々しい。
あの時の俺をぶん殴ってやりたい。
クソがクソがクソがクソがクソが。
あのクソ、ほんの一瞬の隙だった。
クソがクソがクソがクソがクソが!!!!
あのクソ、『では、友好のためにも私たちが先陣を切りましょうか』……とか言って!
ステラ先生の手を取って、手の甲にキスしやがった! ふざけんじゃねえマジでぶちのめすぞクソ野郎が!
マジで目の前真っ白になった。あまりにも一瞬のこと過ぎて
何が起きたかわからなかた
でもあのクソマジでクソなことしてた
ぜったいにゆるさない。
(この空白に血の染みが数滴ほどありました 【訳者】)
俺は近くにいたから聞けたステラ先生『ひっ……!』って声を漏らしてた拭きたくて拭きたくてたまらなかっただろうにそれでも健気に顔にえがおをはりつえてた
ステラ先生、泣きそうだった。ゆるさない。ぜったいにゆるさない。俺はあのクソを絶対に許さない
しかも。
しかもくそが。
ステラ先生が、泣きそうで、なお、手を取られた状態だというのに。あの、シエルゼルていうクソは。
『じゃあ、僕たちもパートナーを変えてダンスしようか』なんてマジふざけんなよお前マデラさんにぶん殴ってもらうぞマジで
認められるかそんなもん しかも取り巻きのクソが
ああああああ、クソがクソがクソがクソが!
『お前さっきフラれたんだから、俺が代わりに踊らせてもらうぜ』とかいってロザリィちゃんのかたを抱きやががあががががががが
クソの 腕は バキバキに おれた
さわた しゅんかん かんせつが ぎゃくに おれた
バキッて 音 してたし
なんか ねじれても いた
ざまあ
みろ
……落ち着けないけど、無理やり落ち着く。
クソがロザリィちゃんの肩に触れた瞬間、会場にクソの大絶叫が。たかだか腕の一本が折れたくらいであんな悲鳴を上げるなんて、ティアトの教育はどうなっているのだろうか。ウチのポポルでさえ、腕が引きちぎられながらもひるまず魔法を使えるというのに。
大絶叫のどさくさに紛れてステラ先生の手を引き取る。全力の吸収魔法を込めたハンカチで先生の手を浄化。騒ぎを聞きつけてやってきたパレッタちゃんも、『滅せよヴィヴィディナぁッ!』って全力でヴィヴィディナによる浸食呪浄化を試みる。
『ああああああッ!?』ってクソはブラブラしている腕を抱えてのたうち回っていた。『な……何をしたんだよ!?』ってシエルゼルがロザリィちゃんに詰め寄る。颯爽と割り込む俺。
ロザリィちゃん、『マイナーであまり有名ではありませんが、私、愛魔法の使い手で。【愛を遵守する】自己防衛の魔法が常に働いているので、恐らくそれにひっかかったのかも』って笑顔で答えてた。
『わかりやすく言ってやろうか? 要するにそいつ、下心がある状態で触ったんだよ。天誅だ』って俺の追加攻撃(宿屋仕込みの冒険者のバカ騒ぎ宴会の時でさえ全体に通る張りの良いセイレーンヴォイス)も。
『は、あ……!? おま、それだけのことで……!?』って腕ブラブラクズがわめき出した。『てめえ、その姿を晒しておいてよくそんなデカい口叩けるな? ……これ以上舐めたマネしたら、腕だけじゃ済まねえぞ』って耳元で囁いておく。
そこからのやり取りはあまり覚えていない。とりあえず、腕ブラブラクズが腕ブラブラになったのは、ロザリィちゃんに痴漢をしたからだ……ってことだけは周知させていただいた。愛魔法の特性を知っているロンティカの連中はみんな成り行きを察してくれたし、ティアトの連中も【腕ブラクズがロザリィちゃんに何かをした】、【結果として返り討ちに合った】ことくらいまでは理解してくれていた。
当然、もうダンスパーティなんて雰囲気じゃない。『……不幸な事故とはいえ、原因はこちらにあるようですね』ってクズもその場は認めて引いていく。『ふーッ!! ふーッ!! ふーッ!!』、『ルァァァァァァッ!!』ってちゃっぴぃは最後までティアトの連中にガチ威嚇をしていた。
で、みんなでクラスルームに戻る。『うぇぇぇ……!』って涙目でステラ先生がアルテアちゃんに抱き着いていた。『怖かったね、怖かったね……!』、『よしよし、もう大丈夫だからね……!』って女子が総がかりでステラ先生を慰め、そして先生の手を全力で浄化していた。
男子は『あのクソ絶対に許さない』、『ヴィヴィディナに捧げてやる』、『生まれてきたことを後悔させてやる』って怒りがヤバい。ギルでさえ、『怒りに任せてこの筋肉を使うことを、今だけは許してくれ、親友』って魔王もチビるレベルの怒気をまき散らしていた。
ふう。本当はもっとすごい状態だったんだけど、思い出すのもつらいのでこの辺にしておく。
いいか、俺は絶対に許さない。リバルトというクソと、シエルゼルというクソと、腕ブラクソ野郎というクソだ。あいつらだけは、絶対に許さない。
今日はポポルとフィルラドが担当の日だ。まずは偵察してもらって、可能ならできる範囲でやってもらう手はずになっている。
ギルの鼻には全力オステル。
もう誰も、俺を、俺たちを止められない。
今ここに、改めて宣言する。
俺はやつらを、絶対に許さない。