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208日目 創成魔法設計演習:アイディア検討

208日目


 ギルの筋肉に未知の証明問題が。【ジャガイモの最終定理】、【大宇宙筋肉予想】、【黄金の親友方程式】とある。解けたら賞金とか出るのかな?


 ギルを起こして食堂へ。今日はテストじゃないからか、割とみんな牛乳を飲んでいた。最近は牛乳と何かを合わせて飲むのが流行らしく、『コーヒー牛乳っていいよね』、『果汁入り牛乳もいい感じ』、『ジャガイモ牛乳とか最高だぜ!』なんて声がチラホラ。


 せっかくなので俺も牛乳をチョイス。『きゅ! きゅ!』ってちゃっぴぃがうるさかったため、だいぶ甘めのコーヒー牛乳を飲むことになった。


 どうもちゃっぴぃの中ではコーヒーを飲める奴は大人ってイメージがあるらしく、あいつはコーヒー牛乳を片手に食堂をうろちょろし、『きゅうん?』って腰に手を当てて飲むさまをみんなに見せつけていた。実にガキらしいムーヴメントだと思う。


 ちょっと意外だったのが、『レディならちゃんとお口くらい拭きなさいな』ってアエルノのロベリアちゃんがちゃっぴぃの口を拭いてあげていたことだろう。あの娘、アエルノとは言え意外と母性が強いのかもしれない。口拭くのに使ってたの、ラフォイドルのローブだったけどな!


 そうそう、ロザリィちゃんも牛乳を腰に手を当てて飲んでいた。そりゃもう惚れ惚れするほどの飲みっぷり。『昔からけっこう好きなんだよねー。夜とかも、内緒でこっそり飲むホットミルクが結構好きだったり……』って照れている顔がちょう素敵。そういえば、ステラ先生も似たようなことを言っていた気がする。


 俺に乳搾りの才能があってよかった。ロザリィちゃんとステラ先生と結婚したら、乳牛を三頭くらい飼おう。でもって、毎朝搾りたて新鮮ミルクを食卓に添えるのだ。今のうちにいい業者探しておこうっと。


 一応書いておく。ギルは今日も『うめえうめえ!』ってジャガイモ食ってた。あいつもうジャガイモだけでいいんじゃないかな。


 さて、今日はステラ先生の創成魔法設計演習。『中間テスト中の授業って、あんまり身に入らないよねー』って言いながら出欠を取るステラ先生が今日も素敵。ついつい杖をコンコンしちゃって自分で気づいていないところが最高に可愛い。俺、大きくなったらステラ先生の杖になりたい。


 冗談はともかくとして、今日はアイディア検討を行った。前回までに風魔法要素の設計にかかわる共通のポイントは大体学び終えたから、今回はそれらをもとに自分たちオリジナルの魔道具を考えましょうって感じ。


 『一口に風魔法の魔道具って言っても、いろんなものがあるからね。何に使いたいのか、どうしてそれが必要なのか……奇抜で珍しいアイディアっていうのも評価点になるけど、ちゃんとニーズに応えられている道具なのかってのも重要だからね?』ってステラ先生がにっこり笑顔。ずっと見ていたい。


 ともあれ、班員……俺、ギル、ロザリィちゃん、ミーシャちゃん、フィルラドで顔を突き合わせてアイディア出しを行う。真っ先に口を開いたギルは『風魔法による全自動蒸かしジャガイモ冷却器はどうだろう?』などと言い出した。


 『魔法回路実験でやった魔度検出を応用した温度検出回路を組み込んで、蒸かしたてジャガイモがちょうどいい温度になるまで風を送る魔道具だ! これもう優勝だろ!』とのこと。


 アイディアとしては面白いし、学んだことを活かして応用するという点ではかなり高評価……なのに、いかんせん肝心の用途が限定的すぎる。あと単純に、温度周りの設計要素……風魔法以外のそれを考えるのが大変そう。とりあえず保留。


 『何を作りたいかってよりかは、こういうのが欲しいとか、あったら便利なものを挙げていくべきじゃね?』ってフィルラド。ヒモクズの割には意外にも建設的な意見。


 こっそり他の班の偵察に行っていたミーシャちゃんからは、『だいたいどこもその方向性で話を進めているの。でも、逆にそのせいでカブる可能性がかなり強いの……』との意見が。やっぱりどこも考えることは同じらしい。


 ああでもない、こうでもないと議論は続く。侵入者撃退用暴風装置(そもそも侵入者なんて来ないから却下)、無風日用風車回転風発生装置(風を作る魔力で直接風車を回したほうが建設的なので却下)、魔力学教室用室内換気装置(あのかび臭さを俺たちがどうにかできるとはとても思えないので却下)……などなど、いろんな意見は出るもののイマイチ決定打に欠ける感じ。


 そんなこんなをしていたところ、『やっぱりそう簡単には決まらないよね?』ってステラ先生がやってきた。ステラ先生ってばわざわざ俺のことを心配してきてくれたのかしらん……って思ったら、なんか普通にちょこちょこみんなの様子を見ていただけらしい。ちょっとショック。


 で、ステラ先生、俺たちがノートに書きだしたアイディア集を見て、『ギルくんの、ちょっと工夫すればすごくいいかも?』ってにっこり笑った。マジかよ。


 『どういうことなの?』って首をかしげるミーシャちゃん。『ミーシャちゃんも、先生と同じ悩みを抱えていると思うけど……』ってぱっちりウィンクステラ先生。『……あっ!』って顔を輝かせるロザリィちゃん。


 『ねえねえ! お風呂上がりの髪の毛を乾かす……温風を吐き出す魔道具にしようよ!』ってロザリィちゃんが革新的かつ斬新で誰もが認めるナイスアイディアを披露してくれた。さすがはロザリィちゃんって思ったよね。


 『しっかり水気を飛ばせるようになれば、髪がぐしゃぐしゃになったりしないし!』、『グッドビールのブラッシングにも使えそうなの! きっとフワフワな手触りになるの!』って二人は大はしゃぎ。『髪の毛を乾かす時間ってけっこうかかるもんね。冬だとそのせいで風邪ひいちゃいそうになるし……ニーズとしてはばっちりだよ!』ってステラ先生もなんかテンション高い。


 『……髪なんてタオルで適当に拭いとけばあとは自然に乾かね?』ってフィルラドは不思議そう。実際俺もその通りだと思うけど、女の場合それをやると翌日が大変なことになる。ずぼらアバズレの髪を何度整えてやったことか。あいつたまに風呂で寝こけるから始末に負えないって言う。


 ともあれ、俺たちの班はそういう方向で行くことになった。計算や製図は来週以降。一応、細かいオリジナリティやコンセプトについてももっと詰めていきましょうってことに。企画書も作らなきゃいけないけど……まぁ、大きな方向性が決まったのだから、そんなに心配することはない……はず。


 一応書いておこう。ステラ先生、ギルの筋肉に描かれていた三大問題について、『一見すごく簡単に解けそうだけど、よく見るとすごく難しい魔法式ばかり……』って虚ろな瞳で語ってくれた。『これはたぶん、見なかったことにしたほうがみんな幸せになれるって、先生はそう思うの……』って俺の肩をポンポン。『よくわかんないですけど、自分は忘れっぽい性格なので』って返しておいた。クレバーな返しができる俺ってマジイケメン。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。なんだかんだでクラスの半分くらいは作るものの概要が決まったらしい。『参考までに教えてよ!』、『だめ、ないしょ!』って感じのやり取りを雑談中に何度か聞いた。一応は成績がかかっているから、最後の発表日まで内緒で通したいらしい。そのうちバレると思うんだけどな。


 ギルは今日も大きなイビキをかいている。明日は一番ヤバそうな魔導工学の試験なので、俺も日記はこの辺で切り上げて最後の調整を行おうと思う。


 ギルの鼻には……チビた鉛筆でも詰めておこう。なんかクラスルームの端に転がってたんだよね。おやすみ。

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― 新着の感想 ―
[一言] ギルの証明はステラ先生の目のハイライトすら消し去るのか。おそろしや…
[一言] むしろドライヤーが今まで無かったという不思議 本命:ギルから黒鉛の粉 対抗:ギルが黒い 大穴:ギルの爪が黒鉛
[一言] ドライヤーには金をかけろ 最低一万円からだ
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