207日目 発展魔法材料学:後期中間テスト
207日目
ギルの爪が呪われて……ない。これそういう風に色がついてるだけじゃん。
ギルを起こして食堂へ。なんだかちょっぴり今日は冷え冷え。金のないこの学校らしく、食堂では冷たい隙間風がぴゅうぴゅう吹いていてなんだかぽんぽん壊しそう。『さっむ……』、『これだからスカートは……』って愚痴りながら女子たちが固まって暖を取り合っていたのを覚えている。
一方でミーシャちゃんはものすごく自慢げな顔。『ウチの子とってもあったかいの!』ってグッドビールをぎゅーっ! って抱きしめてご満悦。グッドビールの方も構ってもらって嬉しいのか、なんかすんげえ勢いで尾っぽをぶんぶん。ミーシャちゃんのセット、盛大に乱れていたけれど良いのだろうか。
ギル? あいつは普通に半裸でジャガイモを『うめえうめえ!』って食ってたよ。あまりの暑苦しさに逆に可能性を見出してしまった渇欲のパレッタちゃんがその背中にぴっとり張り付いていたけれども、『……ぺたぺたする』ってすぐに離れていた。なお、暖は十分以上に取ることができたらしい。
クソどうでもいいけど、寄り添いあう女子たちを見てジオルドが『女子ってずるい。女子ってだけで寒い日にああして抱きあえるんだから。ちくしょう』って愚痴っていた。直後にアリア姐さんが全力の愛を込めたハグをプレゼントしていたことをここに記す。
さて、今日のテストはシキラ先生の発展魔法材料学。『最近誰もカンニングとかしてくれなくてよぉ……せっかく徹夜で最高の呪を考えたのに、意味ねえんだよなぁ……』ってシキラ先生はテスト用紙を配りながら文句を言っていた。
聞けば、テストの中身そのものを考えるよりも、いかに高度でいやらしくて解呪が難しく、そしてバレにくい呪を考えるかの方に時間をかけているらしい。
『先生って損な職業だよな。裏でどれだけ努力しても認められねえんだもん。かーっ! やってらんねえ!』ってあの人は言ってたけど、そんな努力認められてたまるか。
肝心のテスト内容だけれども、おおむね予想通り暗記問題がほとんど。き裂進展の概念やなぜそれが大事なのか……ってのを記述式で解かせ、あとは魔硬に関する定義やその測定原理についてが大半。
いや、マジでそれだけ。なんかこう、虫食いになった魔硬の一覧まとめ表みたいのがあって、『代表的な魔硬試験であるヴルナル、ヴィックス、ナーパ、ルックウェム、シャウ魔硬試験における試験方法の概略とその特徴(長所と短所)について述べよ。ただし、クソみたいな汚い字である場合や説明としてピクシーのジョークレベルのものが書かれた解答用紙はそのままルンルンのおやつになるので注意すること』って書かれていたからね。
図を使って説明してもいいとのことだったので、俺の華麗なるウルテクで完璧な図を仕上げておいた。図というよりかはもはや絵画のレベル。ちょっぴりのアレンジとしてステラ先生をモデルにした【教えて☆女神先生(作・俺)】を枠に添えることで、まるで【教えて☆女神先生】が黒板(解答の枠)に板書しているかのような仕上がりに。
我ながら本当に素晴らしい出来だった。これはもうこれからのテストのスタンダートになるんじゃないかと期待しちゃうレベル。味気も華やかさもないクソみたいな解答欄よりも、こっちのほうが絶対見ていて楽しい気分になること請け合い。
そうそう、一番最後の問題は恒例(?)のサービス問題だった。【次のカチコミの意気を語れ(配点:心意気)】とのこと。つまりまぁ、そういうことだろう。
とりあえず、余白いっぱいすべてが消えるまでステラ先生の素晴らしさを書き込んでおいた。出来ればその詳細をここに書きたいけれど、それを書くには日記の余白が足りないので泣く泣く止めることにする。
ちなみに、サービス問題はもう一つあった。【次のカチコミの勝敗予測をせよ。(配点:予測精度の高さによる。ざっくり予測だと的中してもあまりもらえません。詳細な予測が当たったら、この時点で単位取得相当の点を得られるのも夢じゃない!?)】とのこと。学生部にバレたらまずいんじゃないかと思わなくもない。
一応、予測例として【試合数】、【試合内容(ルール)】、【試合の勝敗】、【試合の決まり手】、【MVP(先生の主観)】、【総合的な勝敗】が挙げられていた。
これに参加者や試合時間、あとは……どういう風に試合が動いたのかってのを詳しく書けば書くだけ、予測が当たった時の点を多くもらえるってことなんだろう。
とりあえず、【ルマルマ組長の華麗なる魔法によりウィルアロンティカが総合勝利】とだけ書いておく。ぶっちゃけこの段階でまともに予想できるのなんて総合的な勝敗くらいじゃね?
なんだかんだでテストはあっけなく終了。『意外とできた……むしろ、簡単なほうじゃなかった?』、『だよね!?』って安心してきゃあきゃあはしゃぐ人がいっぱい。男子も女子も、再履の多さゆえに色々心配だったのだと思われる。
そんな浮かれたクラスメイトを、『……そう思わせるのが、あの人の汚いところだよ』、『減点方式と加点方式の悪いところだけを取り入れた採点をする人だから』って再履の先輩が憐みを込めた表情で見つめていた。見なかったことにしておこう。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、なぜかちゃっぴぃが甘えんぼモードで抱き着いてきたので存分に抱きしめておいた。『ずるいぞーっ!』って湯上りほわほわロザリィちゃんまでもが抱き着いてきた。幸せすぎて気絶しそう。ちゃっぴぃのやつは『きゅうん♪』ってもっと幸せそうだったけれども。
明日は一応普通に授業。だけど、明後日のテストがヤバそげだからそれに備えよう。ここのところ夜更かしが続いていたし、詰められるところは詰めなくては。
ギルの鼻には発展魔法材料学の問題用紙兼解答用紙を詰めておく。『なんか余分に作っちゃったっぽいからやるわ』ってシキラ先生が復習用にくれたやつね。危険物はさっさと始末するに限る。グッナイ。
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