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202日目 魔導工学:テスト前自由勉強

202日目


 ギルのおめめがちょうぱっちり。さわやか。


 ギルを起こして食堂へ。なんか今日はすっきりいい感じの快晴。さすがに暑さも和らいでいて過ごしやすいいい天気。風が気持ちよくてなんか駆けだしそうになっちゃう気分。


 久しぶりの良い日光だからか、アリア姐さんが珍しくはしゃいでいた。ジオルドの腕をつかみ、「はやく、はやく♪」とでも言わんばかりにくいくい引っ張っている。どうやら短距離ならばルマルマ壱號を使うよりもジオルドの抱っこのほうが早いらしく、『しょうがないな……』って言いつつジオルドはアリア姐さんを外に連れ出していた。


 『朝から美人を合法的に抱けるなんて羨ましい』ってフィルラドが呟いた。直後に尋常じゃないケツビンタ音。ガチギレアルテアちゃんが『ふーッ! ふーッ!』って猛っている。相も変わらず女の子がしちゃいけない表情で眉間にくっきりと皺。


 とりあえず俺も『ふーッ!』って真似しておいた。ちゃっぴぃも『ふーッ!』って真似してた。俺だけケツビンタされたのが本当に意味が分からない。


 ギルは普通に『うめえうめえ!』ってジャガイモを貪っていた。何気にあいつ、女子からのケツビンタ回数はかなり少ないと思う。ジャガイモと筋肉にしか興味が無いから、ある意味じゃ当然なのかもしれない。


 今日の授業はテオキマ先生の魔導工学。『本当なら授業を進めたいが、諸君らの理解度を鑑みてテスト勉強にする』とのこと。


 数年前まではテストとかお構いなしに授業を進めていたらしいんだけど、お試しで一回だけテスト勉強授業を取り入れたところ、それなりに効果があることがわかってしまったらしい。『復習なんて授業時間外にやるのが当たり前のはずなんだがなぁ……これも時代か』ってテオキマ先生はぼやいていた。


 ともあれ、せっかく時間があるのだから勉強を進める。魔導工学はクソ意味のわからん計算式ばかりで正直今回のテストでは一番ヤバいんじゃあないかって危惧している。暗記だらけの魔法材料学、曲がりなりにも言っている意味が分かり、触媒反応学と大して変わらない魔法流学に比べ、こっちは何言っているのかさっぱりわかんないんだもん。


 とりあえず、いつものメンツには『意味を考えるな。パターン通りに立式して、そのまま計算をすればいい。立式さえきちんとできれば、欲しい答えが自然と出てくる』と教えておく。無駄に考えたところで混乱するだけなら、せめて問題を分割して解決できる小さな問題にしてしまおうと思った次第。


 しかし、『そう教えるのは結構だが、教科書通りの問題を出すといつ俺が言った?』ってテオキマ先生はニヤニヤ。『確かにわざわざ教科書やノートの例題にない設定の問題を考えるのは面倒だし、実際さっきまではちょっと数字を変えたり求める対象を変えるだけで済ませるつもりだったが……そう煽られると本気で作りたくなってくるなぁ?』……って絶望の宣告も。


 『いやいや、ただでさえお忙しい先生に、そんな手間を取らせるわけにはいきませんよ。それに、時期が時期ですしお仕事も普段以上にあるのでは?』ってやんわりと俺が起死回生の一手を放つ。が、『俺自身が考えずとも、研究室の学生に賞金付きで募集したらすごいのがいくらでも出てきそうだ』ってテオキマ先生はニヤニヤを止めない。


 なんかあの人、もっと頑固で厳しい先生だと思っていたのだけれど。どことなくシキラ先生テイストがあったというか、ここにきてなんか親しみ(?)なのを見せてきた。案外、テオキマ先生も魔法大会の件で浮かれて……血が滾っているのかもしれない。


 最終的には、『これで勘弁してください』って秘蔵のおやつのクッキーセットで手を打ってもらうことにした。『どうかここは……こいつで……ッ!』ってギルも苦悶の表情を浮かべながら秘蔵のジャガイモを渡していた。ミーシャちゃんも『これで許してほしいの!』ってキャンディを渡していたし、ポポルも『これ俺の宝物なんで』ってセミの抜け殻を渡していた。あいついつもアレ持ってんな。


 『……お、おう』って気の抜けたようにテオキマ先生がそれらを受け取っていたことをここに記す。クッキーやキャンディはともかく、セミの抜け殻なんて渡されたらそらそうなるわな。


 夕飯食って風呂入って雑談……じゃない、風呂の時にちょっと事件が。ゼクトと湯船につかっていたところ、アエルノのラフォイドルが端っこの方でのんびり鼻歌を歌っているのを発見。『呑気に鼻歌なんか歌っちゃって、アエルノはドレス代もパパたちに出してもらったんですかぁ?』ってゼクトが煽りに入る。


 が、ラフォイドルのやつ、『いや、普通に家から持ってきてたやつがあるし……むしろなんでお前ら、そういう大事なものを持ってきてないんだよ?』って煽り返してきた。


 『すぐに買えるものでもない、すぐに届けてもらえるものでもない……でもって、こういうのって急に使うかもしれなくなる奴だろ。学校なんて祭典がありそうな場所で過ごすんだから、持ってくるのが普通じゃないのか?』ってさらなる追撃も。


 『持ってない奴もいたけど、普通に貯金があるし。貯金がなかったやつも、クラスの資金で買えたし。……こういう時のための貯金で、こういう時のための共有の資金だろ』ってやつは子供じみた理想論も。


 『誰も彼もが正しい生き方をできると思うなよ!』ってゼクトは捨て台詞を吐いてラフォイドルにウォータースプラッシュをぶちかましていた。完全に嫉妬だと思う。


 ともあれ、せっかくなので俺もそれに参戦しようとしたところ、『お前も同類じゃねーか!』ってゼクトはこちらにもウォーターストリームを放ってくる。『ちくしょう! ウチだけ借金かよ!』ってゼクトは付与魔法込みで渾身のボディプレスによるウォーターインパクトを繰り出してきた。『風呂くらいゆっくり入らせろや!』ってラフォイドルがキレてたので、いい気味だと思った。


 風呂ではそんな感じ。あと、雑談中に女子がダンスの練習をしていた。今日も練習相手はアルテアちゃん。『……なんで私、こんなことやってるんだろ?』ってちょっと顔が死んでいた。自分の練習もろくにできていないのに、足を踏まれた回数だけが増えているらしい。


 『足を踏まれて喜ぶのは男の方だろうに……』ってボヤいていたけれども、それは男は男でも、フィルラド限定だと思う。フィルラドのせいでアルテアちゃんの男子の認識が大変なことになっている。なんとかしないと。


 ギルは今日もぐっすりと大きなイビキをかいている。最後になるけれども、部屋に戻る間際、ちゃっぴぃが『きゅう……!』ってなんか俺の裾をつかみ、足にひしっと抱き着いてきて離れなかったことを記しておく。


 『最近パパが一緒に寝てくれないから、寂しいんだよね?』ってネグリジェ姿ロザリィちゃんがにっこり笑い、ちゃっぴぃを抱っこ。『パパは忙しいから、ちょっとだけ我慢してね?』ってちゃっぴぃのほっぺにキスして、そして流れるように俺のほっぺにもキス。でもって俺の目を見ておめめをぱちぱち。


 『おやすみなさい、いい夢を』って俺もロザリィちゃんのほっぺにキス。ついでに『良い子だから、ママと一緒に寝てくれよ』ってちゃっぴぃのほっぺにもキス。ちゃっぴぃのやつ、ちょっと不満そうだったけど『……きゅーっ!』って俺のほっぺにキスし、そのままロザリィちゃんに抱き着いた。わかってくれてパパはとっても嬉しい。


 さしあたって、さっさとこの地獄のフリフリ&レース部分を仕上げなくては。ここさえ終われば後はだいぶ楽になるはず。今日はテスト勉強は止めにして、ちゃっぴぃのドレスの方に集中するとしよう。


 ギルの鼻には石鹸の欠片でも……あれ、これって前にも詰めたことあったっけ? まぁいいや、気にしないで詰めておく。みすやお。

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― 新着の感想 ―
[一言] 皆が解けない問題は逆にチャンス、なぜなら点数調整入る可能性が高くなるから
[一言] ちゃっぴぃとのやり取りが初期の頃に比べるとストレートになってる?初期の頃はなんかやれやれ感出してた気がする…
[一言] ウチの学校には問題作りが趣味の先生がいましてね……テスト用練習問題として(授業のあった半年で)100問以上も中々難しい問題出された時は絶句した 本命:ギルの鼻息から泡 対抗:ギルの全身がピ…
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