200日目 発展魔法材料学:テスト前自由勉強
200日目
返事どころか何もない。とうとうあの野郎、こっちを無視しやがった。舐めやがって。
ギルを起こして食堂へ。今日は朝からちょっぴり冒険しておさかな(なんか妙に小骨が多かった)を食していたところ、やはりティキータのゼクトが『ちくしょう、世の中金かよ』って絡んできた。
『どうした?』って一応聞いてみる。『ウチはパパのポケットマネーからみんなのドレス代出してもらったんだよね』ってバルトラムイスのシャンテちゃん。前々からそう思ってはいたけれど、やはりシャンテちゃんは良いところのお嬢様らしい。最近じゃお嬢様って言うよりかは、ブチ切れた修羅のような顔をしていることのほうが多いけれども。
『俺たちは先輩から金を借りてなんとかドレスを見繕ったのによぉ……かたや姉貴の、かたや親からの援助で用意するとか……ホント羨ましいぜ』ってゼクトは愚痴る。『……羨ましいと思えるその感性を、大事にしたほうがいいよ』ってシャンテちゃんは遠い目。『メリットばかりに目が向いて、その裏に潜むあまりにも大きな代償に人は目がいかないものだ』って俺も遠い目。金と理不尽、どちらに皿が傾くかはその人の天秤によるのだろう。
俺たちがそんな話をしている間も、ギルは『うめえうめえ!』ってジャガイモを貪っていた。それだけ。
今日の授業はシキラ先生の発展魔法材料学。『面白くなってきたよなぁ!』、『正直中間テストとかどうでもよくね? 期末の一回で全部決めたほうがみんな楽じゃね?』、『ダンスなんかよりも、いかに相手をブチのめすかのほうが大事だろ?』って終始うっきうき。あの人がこんな面白そうなイベントに興味を示さないほうがおかしいか。
『実は俺が学生の頃も似たようなのあったんだけどよぉ……エントリーしようとしたら、当時のクソ先公どもに全力で止められたんだよな』ってシキラ先生は言っていた。自身は全く参加できなかっただけに、ホームで開催、それも教え子が戦うというだけで自分のことのように血が滾るのだとか。
当時の先生たちの判断は間違っていないと思う。むしろよくシキラ先生を止められたと思う。その実績そのものに大いなる拍手を送りたくなった。
授業内容だけれども、『来週は中間テストだから、今日は自習な!』とのことだった。『再履ばかりのこの授業だけど、ちゃんと勉強時間取ってるんだから頑張ってくれよ。そうしないとマジで俺が学生部に怒られるんだよ!』とも。相も変わらず、シキラ先生は学生部から【実はちゃんと授業してないんじゃないか疑惑】をかけられているらしい。やはり普段の行いのせいだろうか。
また、『あんまり成績が悪いと、魔法大会の選手に選ばれないからな』とも言われた。学校の看板を背負って戦うだけに、学校側としても実力のない……座学すらまともにできない奴を出したくはないらしい。『とはいえ、基本は選手選定はお前らの役割で、学校側は最終承認をするだけだ。要は勝てれば何でもいいわけだしな!』ってシキラ先生は言っていた。
肝心のテスト勉強はそれなり。今のところはそんな難しい概念も出てきていないから、マジで暗記をするだけ。魔法材料のき裂と強度の関係、強度評価手法としての魔硬とその試験方法について覚えておけば問題ない。まぁ、魔硬については色々覚えることが多いから、その辺はちょっとアレだけれど。
ジオルドは『去年の魔法材料学のほうが大変だったような』って言っていた。俺もそう思う。たぶん中間テストの後からヤバくなるのだろう。そうでもないと再履の多さの説明がつかない。マジ怖い。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。ちょっと……いや、だいぶ短いけれど今日はマジでこれくらいしか書くことが無い。あと、テスト勉強とちゃっぴぃのドレスも作らなきゃいけないし。
今日は仮縫いくらいまでは終わらせておきたい。糸の処理が甘いと後で大変なため、そこだけは注意を払わないと。あとあいつの場合、ガキなのに胸のところだけは大人仕様にしないとならないから面倒。となると、うまくやらないと全体のバランス感が悪くなる。まぁ、ざっくりベースで完成させたら、一度着せて細かい修正をしていくほかないだろう。採寸の時、大人しくしてくれるといいのだけれど。
ああ、出来ればいちゃいちゃしながらロザリィちゃんの採寸を行いたい。そういえば今日はあまりロザリィちゃんとお話できなかった。テスト勉強の時と、寝る前にほっぺにキスしてもらったくらいか? こっちの作業があるから、早めにちゃっぴぃをロザリィちゃんに預けて別れざるを得なかったんだよね。
面倒なことはさっさと片付けてしまおう。大きなイビキをかいているギルの鼻には……ほどほどに呪ったジャガイモでも詰めておく。いい感じのものが思いつかなかった次第。おやすみにりかちゃんまじびじん。