199日目 魔法流学:テスト前自由勉強
199日目
ギルのお肌がきめ細やか。前にもあったような?
ギルを起こして食堂へ。なんとなく健康を意識して野菜ジュースを飲んでいたところ、ティキータのゼクトに『裏金隠し持ってたんだって?』って絡まれた。ニタニタ笑いながら肩を組んできて、『やっぱお前やることやってんのな』というシューン先生を彷彿とさせるウザ絡みも。
らしくないと思ったら、『うちも女子たちがドレスドレスってうるさくてさぁ……なんだかんだで、先輩に金を借りて買うことになったんだよね』とのこと。クラスみんなの問題ということで、男子も女子のドレスの借金返済に付き合う羽目になっているのだとか。男子自身は適当な安物をレンタルして済ますというのに。
『ま、嬉しそうな顔を見られたからよかったんだけどさ』ってさらっといえるあたり、ゼクトは性格イケメンだと思う。
ちなみに、ダメもとで先輩達に借金を申し込んだらしいんだけど、意外なほどに彼らはそれを快く受け入れてくれたらしい。『特に女の先輩がすんげえ親身になってくれてさ……「こういう機会なんてそうそうないんだから、今は後のことなんて考えずに突き進みなよ!」ってみんなが言うんだ』ってゼクトは言っていた。
なお、金利こそないものの、『先輩方の卒論や修論を手伝うことを約束させられた。「金で解決できる問題って最高」って先輩たちは言っていた』とのこと。手伝いでいったい何をさせられるのか、気にならないことも無い。
ギルは普通に『うめえうめえ!』ってジャガイモ食ってた。この調子でコンディションを整えてほしいと思った。
さて、今日の授業はミラジフの魔法流学。ミラジフは相変わらずの仏頂面で、『ただでさえ忙しいのに……対応は面倒くさいし生徒どもは浮かれてるし……』ってずっとブツブツ。
人間なのだ、愚痴の一つや二つはしょうがないにしても、それを生徒の前で言うんじゃねえって思ったよ。俺、間違ってないよね?
肝心の授業内容だけれども、『来週は中間試験がある。よって本日はそれに向けたテスト勉強とする。各々自習し、質問がある場合は教科書をよく読みこんだという前提の上で質問に来るように』ってミラジフは告げる。まぁ悪い選択ではない。
そんなわけでテスト勉強。とりあえず普通に立ち歩いてガヤガヤしつついつも通りの流れ。当たり前のように机をガタガタさせて勉強会スタイルを確立させた俺たちにミラジフは一瞬ぎょっとした顔をするも、舌打ち一つしてあとは不干渉。教卓のところでなんか書類仕事していた。
もちろん、ミラジフに質問しに行く奴なんて皆無。だいたいみんな俺かクーラスに聞いてくる。それで対応できてしまうのだから、マジでミラジフがいる意味はなかったと言えよう。
いつぞやラフォイドルが言ってたけど、あいつはマジに置物か何かだと思っていたほうが、俺たちにも、ミラジフ自身にとっても幸せなのかもしれない。
勉強の進み具合はそこそこ。俺はちゃんと復習しているから、計算問題がメインの魔法流学に特に不安はない。今のところは難しい問題もないし、触媒反応学……というか、魔系の基礎計算とさして変わらない。例えるなら、シマシマシマとマシマシマシマくらいの違いでしかない。
一方でミーシャちゃんやポポルはダメそう。なんかあいつらもう、魔法式を見た瞬間に拒絶反応みたいなのを示している。取り組んでみればマジで簡単に解ける問題でもだ。これは早めに手を打つべきかもしれない。
あ、フィルラドはこの手の計算は割と得意で、赤点の心配はないレベル。その代わりあいつ暗記科目がヤバいけど。
ロザリィちゃん? 『……先生が怖いから、これで我慢してね?』って俺の手をそっと握ってくれたっけ。『我慢しているのは、本当に俺の方だけかな?』って聞いてみれば、『……いじわる』っておでこをつんってしてくれた。もう最高に可愛くて俺どうにかなっちゃいそう。
授業についてはこんなもん。テスト勉強しかしてないから書くことが無い。
夕飯食って風呂入って雑談して今にいたる。雑談中、週明けだというのにネグリジェ姿ステラ先生が遊びに来てくれた。うっひょおおおお!
しかもしかも、『改めて、昨日はいろいろありがとね!』って手をぎゅっ! って握ってくれた。『先生だけじゃ、どうにもできなかったけど……──くん、本当にいつもありがとう!』って軽くハグまでしてくれた。文字通りの夢心地だったと言えよう。
あと、女子も『……その、ホント、ありがとう』、『なんだかんだで照れくさいけど、感謝してるのはマジだからね』ってなんかわざわざ俺にお礼を言いに来てくれた。『ほんの気持ちだから』と秘蔵のおやつまでつけてくれるというサービスっぷり。
あと、なぜか女子たちは『本当は全力の感謝の気持ちを込めて手作りお菓子にしたかったけれど、私たちだって命は惜しいの。それはわかって』って口をそろえて言っていたけど……アレ、なんだったんだろう?
なお、貰ったお菓子の大半は『きゅーっ♪』ってちゃっぴぃがご機嫌で食ってしまった。あの野郎、俺がもらったものは全部自分の物でもあると思っている節がある。『虫歯になるからやめろ』って取り上げようとしたら、「えっ、取り上げちゃうの……?」って言わんばかりに泣きそうな目で見てくるしさあ。
まぁ、お菓子程度なら別にいいんだけどさ。俺はいつか、あいつがロリコンどもにお菓子で誘拐されないか本当に心配だよ。
夕飯……じゃない、ギルは今日も大きなイビキをかいてぐっすり寝ている。俺もあともうちょっとテスト勉強して、ちゃっぴぃのドレスを進めてから寝るとしよう。とりあえずざっくりデザインは決まったから、型紙作って布を切り出すところまでは行きたい。ベースさえしっかり作ってしまえば、あとから修正なんていくらでもできるしね。
ギルの鼻には……そうか、もうこんな時期か。
【ステラ先生にたくさんの女友達を作ってほしい】、【この部屋いっぱいのジャガイモが欲しい】、【ミーシャちゃんの使い魔になって】……と彫り込んだジャガイモをギルの鼻に詰めておく。
ジャガイモ妖精へ。お忙しいところ恐れ入りますが、何卒ご検討のほどよろしくお願いいたします。