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20日目 発展触媒反応学:断面二次極サークリアについて

20日目


 異常魔力波を放つ埃の塊を発見。なんかビクビク脈動している。とりあえずトイレに流しておいた。ばっちぃ。


 ギルを起こして食堂へ。今日は雲一つない見事な晴天……だったけれど妙に風が強い。風で葉っぱがめっちゃざわざわしていてたいそう賑やか。それに負けじとヒナたちもケツをふりふりしまくる。春らしい平和な光景だったといえるだろう。


 ギルは今日も『うめえうめえ!』ってジャガイモの大皿をぺろりと平らげていた。『なんかたまに無性に食べたくなるんだよな』ってジオルドもジャガイモを食っていた。せっかくなので俺も塩コショウを振ってジャガイモを食ったんだけど、『きゅ!』ってちゃっぴぃにはそっぽを向かれてしまった。好き嫌いするとかこいつどんだけ贅沢なのだろうか。


 そうそう、食後にロザリィちゃんが『おいしくなぁれ♪』って言いながら特製のカフェオレを作ってくれた。なんだかんだで飲むのは結構久しぶり。もちろん文句なしに美味しい。ロザリィちゃんってばどれだけ俺の心を盗めば気が済むのだろうか。


 なお、底の方の一番濃くて甘くておいしいところは『きゅーっ♪』ってちゃっぴぃが全部飲み干してしまった。しかも何を思ったのか、コップの縁すべてに口をつけてよだれでレロレロにするというおまけ付き。


 『マーキングみたいなもんじゃねえの?』ってフィルラドは言ってたけど、そんなマーキングあってたまるかと思う。キイラムじゃあるまいし、こんなガキと間接キスしたところで面白くもなんともないのだ。


 さて、今日の授業はキート先生の発展触媒反応学。キート先生にしては珍しくちょっと遅れてきたと思ったら、『いい天気だったのでローブとか干してたんですけど、風で湖のほうまですっ飛ばされたと連絡が入りまして……』とのこと。なんか研究室の方で使っていたローブや寝袋なんかをまとめて干していたらしい。


 『うっかり忘れがちですけど、寝袋類は定期的にお日様で干すようにしましょう。これをするとしないとでは泊まり明けのスッキリ度がダンチです』ってキート先生は言っていた。触媒反応研究室の学生室にある寝袋には、最後に手入れしたのが何年前かわからないヤバい寝袋もあるんだって。


 『ヤバい魔法成分由来のカビが生えてる寝袋があったので、そのまま培養して実験に使ってます。なぜか従来の培養キットよりしっかり培養できてるんですよね』ってキート先生が言ってたけど、そもそも研究室に寝袋がある時点でだいぶヤバいと思う。クレイジーな人たちってその自覚が無いから困る。


 授業内容は断面二次極サークリアについて。俺たちが魔法陣、あるいは魔法陣のそれと同義であるとみなせる魔法体(例えば杖とか)を用いて魔法を使う場合、その魔法陣の強度が重要になってくるわけだけれど、じゃあそれはどういう風に評価されてるのって話。


 魔法陣や魔法体の強度として真っ先に思いつくのはその構成材料だけれど、もう一つの大きな要素としてその断面形状が挙げられる。すごく極端な例だけれど、薄っぺらい物はすぐに変形する(魔剛性が低い)し、分厚くてがっしりしたものなら強い魔力に晒されてもビクともしない(魔剛性が高い)。


 断面二次極サークリアってのは、この断面形状による魔剛性の大きさ(魔法的変形のしにくさ)を示すものらしい。『ホントは一つ一つの対象ごとに面倒くさい計算をしなきゃいけないんですけど、よくあるパターンのものは先人たちが公式化しています。今回はその概念の理解という観点から、公式の証明をしてみましょう』ってキート先生は話を進めていく。


 で、肝心の公式だけど……面倒くさいからここに書くのは省略する。公式の中に魔法演算学で習った積構が普通にあってびっくり。あれって計算手法のはずなのに、どうして公式の中に計算される前のそれが入っているんだろう? 公式ってそういうの諸々終わらせた後の最も簡単な状態になってる式じゃなかったの?


 証明が終わった後は練習問題を解く。いつも通り俺とクーラスが率先して解き、他の連中がわらわらと俺たちの周りに集まってきた。背の低いミーシャちゃんは人垣のせいでノートが見えなかったらしく、ギルの肩車に乗っていた。同じく背の低いポポルはいつもの場所を奪われたため、『お前でいいや』ってジオルドによじ登ってその肩車にすっぽり収まる。なんとも平和な光景だ。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、パレッタちゃんがおいしそうに秘蔵のハゲプリンを食べていたんだけど、ちょうどそこでストックが切れたらしい。『近いうちにハゲプリン作らないとガチハゲの呪とチビの呪をかけるからね』ってすごく優しい笑顔で告げられた。ちょう怖い。


 最近ちゃっぴぃの乳しぼりをしていないし、タイミングとしては悪くないのかもしれない。エッグ婦人の卵はちょくちょく集めて保存してあるから大丈夫だろう。あとは上等の砂糖があれば言うことなしなんだけど……ティキータの連中にでも聞いてみるか。


 ギルは今日も幸せそうに大きなイビキをかいている。ふと思ったけど、なんで俺ってば毎回ギルの寝付きの良さを日記に書いているのだろうか。クセって怖いよね。


 奴の鼻には使用期限の切れた特殊栄養液を垂らしておく。なんかコレ、今日の教室の机の中に放置されていたんだよね。たぶん誰かが面倒くさくなって捨てていっただけだと思うけど。おやすみなさい。

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