表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/367

2日目 魔法回路実験ガイダンス

2日目


 ギルの額に第三の瞳。始まってんな。


 ギルを起こして食堂へ。世にも珍しい三つ目人間がここにいるというのにもはや誰も気にした様子がない。『どうせ実害はないんだ。そんなことよりちゃんと食べるほうが重要だ』って朝からがっつりサンドイッチをロザリィちゃんとはんぶんこするアルテアちゃんがめっちゃ凛々しかった。


 もちろん、ギルは『うめえうめえ!』とジャガイモを貪る。ジャガイモを食べる度に第三の瞳が高速で瞬きしてちょう怖い。ミーシャちゃんは『ちょっとたれ目でかわいいの!』、パレッタちゃんが『ヴィヴィディナと見つめ合うべき』、ポポルが『あの目玉ジャッキーって名前にしようぜ!』ってはしゃいでいた。なんとも平和な光景だと思う。


 朝食の後は魔法回路実験のガイダンス。なんか珍しくいつもは使わない大きな教室でやるんだな……と思ったら、まさかのRumaRumaルマルマTykyeetaティキータ・TykyeetaティキータValtRamuisバルトラムイスAerunoアエルノThuthuチュッチュ合同でのガイダンスだった。


 『みんなでガイダンスするのって初めてじゃね?』、『たかが実験のガイダンスでここまでするものなの?』と、ティキータの組長ゼクト、バルトの組長シャンテちゃんと突発組長会議を行う。


 『クレイジーどもに何度も説明するのは面倒だってだけだろ』って空気の読めないアエルノ組長のラフォイドルが言ってきたので、『クレイジー筆頭が言うと説得力が違うな』って返したら、『てめえが言うな』って返された。ゼクトやシャンテちゃんからも同じことを言われた。解せぬ。


 俺ほどまともで真面目な人はいないってのに、一体奴らは何を考えているのだろう。もしかしたらゼクトたちはラフォイドルに呪われていたのかもしれない。陰険なアエルノらしい卑怯なやり方だと思う。


 さて、なんだかんだで待機していたところ、ステラ先生がやってきた。わが女神の降臨に思わずテンションマックスに……と思ってたら、続いてキート先生、グレイベル先生、天使ピアナ先生、ミラジフ、シキラ先生、さらには知らない先生が何人かと、おまけにキイラムをはじめとした数人の上級生までもが登場する。


 あまりの規模の大きさ(?)にみんなビビる。たかがガイダンスでどうしてこうも人が集められたのだろうか。


 んで、最後に割と年配の先生(ポシムって名前。時や場合によってテンションの差が激しそうないかにもな感じのおっさん。ちょっとぽっちゃりでヘッドはルフ老じゃない。グランウィザードだった)がやってきたところでガイダンスが始まる。


 おさらいだけど、このガイダンスは魔法回路実験のガイダンスね。この魔法回路ってのは魔道具とかに組み込まれているもので、要は魔力に起因する複雑だったり面倒な現象を制御し、誰でも簡単に扱えるようにする仕組みの大本……でいいのかな? ともかくそれを実際に作成し、いろいろ諸々勉強しますってやつ。


 『みなさん話には聞いたことあるでしょうし、実際使ったこともあるでしょうが、その特性を理解し、一から理解しているわけではないでしょ? そんなんじゃあ魔系としてモグリもいいところってわけで、こうして実習でその基礎を叩き込むとともに、まだまともにレポートの一つもろくすっぽ書けないみなさんを根本から鍛え上げようっていうわけね』……ってポシム先生は言っていた。なんか妙に話が長いし理解しづらいのは気のせいだろうか?


 で、この魔法回路実験だけど、大きな魔力を扱ったり、ちょっと特異な魔法現象の制御を試みる関係上、すっごく危険なんだとか。当然俺たちは魔法回路なんてほとんど知らない、あるいは知っていても実際に組んだことのないド素人ばかりなわけで、そんなヤバい実験を(実習とはいえ)そのままやらせるわけにはいかないから監督者として先生&上級生が補佐に集められているんだって。



『言っときますけど、これ本当に一歩間違えれば大変なことになる実習ですから。当然我々も悲しい事故を防ぐために本気になりますし、時にはちょっとアレな……君たちからすればムッとするような言動を取ることもあるでしょう。しかし、それらは全て君たちの安全を守るためであり、同時にそれは私たちの仕事であることを理解してください』


『ついうっかり君たちを罵倒することもあるでしょう。つい本気になって君たちをぶん殴ることもあるかもしれません。全力で魔法をぶっ放して止めることも間違いなくあります。ですが、私たちはその一回こっきりで全て終わりです。後に引くことは絶対にありません。次の瞬間には平常に戻って普通に接します。君たちは自分の失敗だけ反省して、それだけで後はいつも通りでいいんです。仕事ってのはそういうものです』


『ま、散々脅しておいてなんですが、そこまでブチ切れることなんてそうそうありません。もしそんなことがあったとしても、老いぼれがまた癇癪起こしてるよ、とでも心の中であざ笑ってくれて結構です。ちなみに、去年度は危険だって何度も言ってるのに指示を無視し、炭蟲の尾針に魔力を流した学生を保健室送りにしたくらいしかしていません』



 ……ってポシム先生は言っていた。言動の端々からすんげえデンジャラス臭を感じるのは気のせいだろうか。まともにやっていれば大丈夫とは言っていたけれど、それにしたってこんな言葉が出てくるってちょっとおかしくない?


 なお、説明の途中、シキラ先生はずっとすんげえ嬉しそうにニコニコ笑っていた。ステラ先生は死んだ瞳で慈愛に満ちた笑顔を浮かべていた。キート先生、グレイベル先生、ピアナ先生は疲れ切った表情で笑っていた。彼らがあの時何を考えていたのか興味を隠せない。


 注意喚起&概要説明についてはこんなもん。長ったらしく書いたけど、要は危険で危ないデンジャラスな実験だから全力で注意しろってだけ。あ、あとこの実験に限ってはニクラス合同で行い、実験そのものはペアで行うんだって。『パートナー次第で難易度がだいぶ変わるから慎重に選べよな!』ってシキラ先生が言っていた。


 ちなみに、ルマルマといっしょにやるのはティキータ・ティキータ。『いい意味でも悪い意味でも普通に終われそうにないな』ってゼクトがコメントしていた。いったいどういう意味だろうか。


 ……ああ、もう一つあった。この実験、当然のごとく毎回レポートの提出があるわけだけれど、実験そのものは隔週で行うから、レポートの提出は(建前上は)二週間に一回らしい。実験の無い日は前回の実験の復習と次回の実験の予習をするんだって。この辺は実際に受けてみないと何とも言えないけれども。


 ガイダンスはおやつの時間ごろに終了。道具の配布(魔法抵抗とかリード線とか)があったけれど、面倒だからこれについては省略する。


 夕飯食って風呂入った後の雑談中、実験のペアをどうしようかとクラスのみんなで相談する。ガイダンス終わりにキイラムが放った『この実験のペアになって急接近した連中がたくさんいるぜ。俺は妹が一番だからそんなことなかったけど』という一言を真に受けたジオルドとクーラスが必死過ぎてなんかすごい哀れだった。


 あいつらさ、『俺裁縫やってるから細かい作業得意なんだよなぁ……』、『手先の器用さは自負している……パートナーになってくれたら楽をさせられるんだが……』ってチラッチラッってずっと女子の方を見てたんだよね。


 もちろん、一部の女子がサディスティック(?)な笑みを浮かべるだけで誰も名乗りを上げず。結局なんだかんだでみんなペアを決めてしまい、あいつらは血涙を流すことになっていた。


 『ああいうところ、ほんと好き……!』って笑っている女子がいたけど、マジでクレイジーだと思う。魔系にしても拗らせすぎだ。


 一応書いておくけど、俺&ギル、フィルラド&ポポル、クーラス&ジオルド、ロザリィちゃん&ミーシャちゃん、アルテアちゃん&パレッタちゃんの組み合わせね。やっぱなんだかんだで同室で組むことが多い……っていうか、キイラムの代が異常だっただけだろう。同室のほうがレポート一緒にやるのも楽だしね。


 だいたいこんなもんだろう。今日はステラ先生とあまりしゃべれなかったのが残念。あと、ロザリィちゃんともあまり喋れなかった。マジ悲しい。


 書き忘れたけど、魔法回路実験は必修じゃないものの、根性を鍛える&レポート作成能力の向上の関係上、取得しないと三年次で詰むため、事実上の必修なんだとか。そんな事実知りたくなかった。


 ギルは大きなイビキをかいている。第三の瞳はずっと開いたままってのがちょう怖い。どうやら魚と同じく眠った時でも目を見開いたままらしい。起きてるときは普通に瞬きするくせに。ほんとわけわかんない。


 とりあえず、『なんかポケットに入ってたからやるよ』とキイラムからもらった魔法抵抗をギルの鼻に詰めておいた。抵抗値は1クラウムらしい。大きいかどうかは知らぬ。みすやお。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ルマルマの名前無しメンバーって女子はそこそこいるぽいけど、男子はどれくらいいるのだろう。女性陣が焦ってないということはいないのかな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ