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194日目 創成魔法設計演習:マジックベアリングの選定について

194日目


 ギルの筋肉から波動を感じる……なにこれ?


 ギルを起こして食堂へ。みんなギルの筋肉から発せられる波動を感じ取ったのか、『いつにもましてプレッシャーを感じる……』、『これが筋肉の極みか……』ってざわついていた。いつも通りギルによじ登ろうとしたミーシャちゃんも、『なんかうまく近づけないの……!』って残念そう。朝から半裸の男によじ登ることのほうがよほど残念だと思わなくもない。


 朝食はなんとなくシーザーサラダをチョイス。たまには体にいいものをたらふく食べるべきだと思った次第。せっかくなのでギルに頼んで筋肉の波動をシーザーサラダに送り込んでもらったところ、なんかサラダが全体的に筋肉質になった。びっくり。味は普通だったけど弾力がダンチだった。


 『ハァッ!』ってギルはジャガイモにも波動を送り込んでいた。が、ジャガイモは普通。試しに一つ貰ったけどマジでいつも通りの蒸かしたジャガイモ。『どうせならカッコいいジャガイモを食ってみたかったなァ……』ってギルは残念そうにぼやいていたけれども、一口食べた瞬間にはちょう笑顔になって、『うめえうめえ!』ってがっつきだした。


 一応書いておこう。身の危険(?)を感じたのか、ちゃっぴぃはロザリィちゃんのお膝の上だった。でもって、ロザリィちゃん特製の極甘カフェラテを飲ませてもらっていた。『ゆっくり飲むんだよー?』、『きゅーっ♪』ってあのやり取り、ちゃっぴぃのくせにずるい。俺もロザリィちゃんに飲ませてもらいたかった。ちくしょう。


 今日の授業は我らがステラ先生の創成魔法設計演習。『この時期はお洋服のチョイスに困るよねー』って言いつつ杖をコンコンしながら出欠を取るステラ先生が最高にプリティ。『夏服だとちょっと肌寒いし、かといって羽織ると暑いし……』って若干胸元をパタパタするのも最高にマーヴェラス。思わず目が釘付けになった。わぁい。


 直後に後ろに座っていたパレッタちゃんに思いっきりがんっ! って椅子を蹴り上げられたのがわけわかめ。しかも『パパディナからパパを取ったら何になるの? ただのディナ? 答えて。答えてよ。答えろ。答えてみろよッ!』って呪ってくるし。まぁ、呪われたのは俺だけじゃないんだけどさ。


 肝心の内容だけれども、今日はマジックベアリングの選定について学んだ。風魔法的な魔道具を作るってことで今までいろんな要素の設計方法、検討事項について学んできたわけだけれども、回転する以上、マジックベアリングに触れないわけにはいかない。


 『何かの授業でやったかもだけど、マジックベアリングそのものは規格が決まっている魔法要素……なんだけど、じゃあその中からどういうのを選べばいいのっていうのは自分たちで考えなくちゃいけないからねー』とはステラ先生。


 結局のところ、すでに用意されているパターンがあるっていうだけであり、設計として俺たちが考えなくっちゃいけないっていう事実は変わらない。そりゃあ、ある程度決まっているものがすでにあるっていうのは便利っちゃ便利だけど、逆に言うと自由に自分たちで決められないということでもある。


 『例えばね……こーんなマジックベアリングがいいなって計算で出せても、実際はそんな規格寸法は存在しなかったり……そうなると、大本の方を設計しなおすか、あるいはコストや利便性、入手性を犠牲にしてオーダーメイドの特注品にするか……』って顎に指を当ててうんうん悩むステラ先生が最高にキュート。もうなんか眺めているだけでお金払いたくなってくるくらい。


 ともあれ、目的に沿ったマジックベアリングを選定することはめっちゃ大事だったりする。以下に、ステラ先生が『最低限ここは覚えておくよーにっ!』って教えてくれたポイントを示す。



・マジックベアリングの構造の種類

 主に中に入っている回転を円滑に受けるアレで種類分けされている。一般的なのは真球が入っているもの。ちょっと珍しいところだと棒が入っているもの、魔法流体を封入してあるもの、そもそも何も入れずに属性反発を利用した反発作用で支持(押し付けあっているイメージ)しているものなど。今回は普通に真球のでいいってステラ先生が言ってた。


・マジックベアリングの受ける魔力の方向

 どの方向からの魔力を受けるかってのでマジックベアリングの種類(構造)も変わってくるらしい。『よっぽどのことが無い限りは普通のやつで大丈夫だよー』ってステラ先生がチャーミングに教えてくれた。


・その他特殊用途用マジックベアリング

 『こんがらがっちゃうから……今回は教えないよ……どうしても教えてほしいなら……個別に教えてあげるよ……』ってステラ先生が遠くを見つめながら教えてくれた。ぜひとも休日あるいは放課後に二人きりでマンツーマンの秘密の個人授業をしてもらいたい。その際には先生のお気にのジャムクッキーと、それに合う紅茶と……あとは何が必要だろう? クッションやひざかけは普通にあるし、もっとしょっぱい系の軽くつまめるものを用意したほうが飽きないだろうか? いやしかし、あんまりここでがっつり食べてしまうと先生がお夕飯を食べられなくっちゃう。それは避けたい。とりあえず、カードとコインの準備は確実にやっておこう。


・耐浸食魔力

 定常状態においての魔力に耐えられなければ意味がない。普通に魔力の強度計算すれば大丈夫。よっぽどトチ狂った構造でもなければ、サイズが合っていればまず大丈夫っぽい。ただし、こちらはあくまで静的な状態でのものであることに注意。


・定格魔力

 いわゆる動作時における耐浸食魔力のこと。今回の場合、動作……つまりがっつりバリバリ風魔法要素における羽根車的なものがぐるんぐるん回っていても大丈夫ですかってのを検討する。当然、一つ前の項で述べたものよりも動作時のほうが作用する魔力は強いから、それに見合った耐久性であることを確認する。魔法陣回転数や寿命係数、寿命時間なんかを用いて算出する。正直こっちの計算だけすればよくねって思った。



 大雑把にはこんなもん。これだけ弾き出せばあとは規格一覧から要項に見合ったものを選定すればいいらしい。もちろん、上記のはあくまで最低限考えなくちゃいけないってだけで、実際はもっといろいろ考える必要があるとのこと。


 『その辺の実際の問題やノウハウなんかは……全部の講義が終わった後の設計演習の時に教えてあげるね。そのほうが、たぶんしっかり身に着くと思うから』ってステラ先生は言っていた。机上の知識としてではなく、実際に自分がブチ当たった問題にどうアプローチをかけるかってのを体感したほうが身に着くってことなんだろう。さすがステラ先生だ。


 授業の終わり頃、なんとなくステラ先生と雑談タイムに。俺ってばこの前の魔法生物学で得た知見を深めるために『本当に抵抗できないか試したいので魔女の吐息をやってください。統計的に検証データを増やすためにも、魔法界の新たな道を開くためにもお願いします』って先生にお願いしますしてみた。


 が、ステラ先生は『そ、そそそ、そんなの恥ずかしいっ!』って真っ赤になるばかり。『別に変なことじゃありませんよ』、『授業の一環ですから』、『みんなやってましたよ』って説得してみれば、『……ああっ! あっちでロザリィちゃんが投げキッスしてる!』ってステラ先生が叫ぶ。


 慌ててそっちを見る。ロザリィちゃんの投げキッスを受け損ねるなんて事態はあってはならない。たとえマデラさんが目の前に立ちふさがろうとも、それだけは許されない。


 が、先生が指した方向ではギルがポージングしているばかり。絶望。


 ──と思ったら、『……ふうっ!』って耳元に甘い吐息が。一瞬で腰が砕けた。


 『ふっふーん! 何度もオトナをからかえると思わないことだねっ!』って俺の目の前に偉大なる胸を張る(おそらく)得意げドヤ顔ステラ先生。(たぶん)すんげえ勝ち誇ったように見下してきて、なんか背筋とかわき腹のあたりがゾクゾク。ステラ先生の魔女の吐息マジヤバい。


 なんでこんな書き方をしているかって? そりゃあ、俺は背中を床に着けていて、ステラ先生は胸を張って俺の前に立っていたんだ。見えないものは想像で書くしかないだろ?


 『こんなこともあろうかと、練習しておいたの!』ってステラ先生は言っていた。『これに懲りたら、オトナをからかうようなことはしちゃダメだよ?』ってめっ! ってしてくれた。


 『先生、それ逆効果』、『もっとやってくれって言われるよ』って女子がコメント。なぜわかった?


 あと、『腰が砕けて立てないので手を貸してください。出来れば肩も貸してくれるとありがたいのですが』って俺ってば紳士的に先生に手を差し出す。そこまでは練習(想定)していなかったのか、『……ふ、ふしゅう』ってステラ先生は真っ赤になって固まってしまった。ホントなんでこの人こんなに愛しいのだろう?


 なお、腰が砕けて動けない俺はギルに運ばれる羽目に。『この人にはこれで十分』、『運んでもらえるだけありがたい話よね』って女子たちがステラ先生を抱きながらギルを呼んだためである。


 『しょーがねえなあ、親友!』って笑顔のギルに運ばれるのは、思いのほか屈辱的だったことをここに記す。なんかあいつ、『親友ってば今足腰動かないんだぜ!』ってすげえダッシュしてほかのクラスにまで俺を見せに行ったんだよね。マジなんなの?


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、俺がギルに見世物にされている間に発覚した衝撃の事実をみんなに教えてもらった。


 なんと、ステラ先生レベルになると女子にも魔女の吐息が通じるらしい。マジかよって思った。


 『いや、ホント……すごかった』って頬を赤らめたアルテアちゃん。『無理……もう、足腰ダメ……』って頬を赤らめたパレッタちゃん。『すっごいくすぐったかったの!』ってギルにしがみつくミーシャちゃん。『目覚めた』、『やはり私は間違ってなかった』って扉のさらにその先に到達してしまった女子。


 いったいどうしてそんなことになったのか、非常に気になる。あと、女子って女子ってだけでステラ先生とイチャイチャできるからずるい。マジで嫉妬に狂いそう。


 ギルは今日もぐっすりと大きなイビキをかいている。そしてちゃっぴぃが俺のベッドにもぐりこんでいる。ちょっと前までは尾っぽがぷらぷら揺れていたけれど、今はすっかりおとなしい。たまに無性にこいつの尾っぽをくいくい引っ張りたくなるんだけど、機嫌良いときじゃないと『ふーッ!』って引っ掻かれるんだよね。


 まぁいい。ギルの鼻には……マジックベアリングのボールでも入れておこう。見本としてステラ先生が持って来てくれたやつ(壊れた廃棄品扱いのもの)ね。おやすみ。

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― 新着の感想 ―
[一言] > 女子って女子ってだけでステラ先生とイチャイチャできるからずるい は?尊いだろ何言ってんだてめぇ 本命:隣の部屋狙撃 対抗:アエルノ狙撃 大穴:ベアリングたくさん
[良い点] よくよく考えれば魔女の吐息ギルの耐性突破できるんだからそりゃ性別なんか突破できるよね……
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