191日目 大改造ルマルマ壱號
191日目
俺のタオルケットが毛だらけ。くそっ!
タオルケットを外に干し、執拗にパンパンしてからギルを起こして食堂へ。休日だから人は少なく、そして今日は男子に秘密の特別メニューもないらしい。『さすがに毎週豪華なのを用意するのは堪えるんだよね』っておばちゃんは言っていた。おつかれさまです。
朝食にはシリアルをチョイス。せっかくなので今日もちゃっぴぃカオスミックスエディションにしてみる。『きゅーっ♪』ってあいつは毎回嬉しそうにいろんなものをぶち込んでいくけれども、自分もそれを食べるってことを理解しているのだろうか?
なお、今回のちゃっぴぃカオスミックスエディションシリアルはバナナチップが多め。俺的にはレーズンかチョコチップがマシマシのほうが嬉しいんだけど、たまにはこういうのも悪くないか。
俺のお膝の上のちゃっぴぃも『きゅーっ♪』って美味そうに『あーん♪』を受け入れていた。案外こいつ、口に入れば何でもいいのかもしれない。少なくとも、シリアルに好き嫌いの好みはなさそうだ。
ギルは今日も『うめえうめえ!』ってジャガイモ食ってた。『やっぱ無理そうなの』ってミーシャちゃんが貰った割にはろくに口をつけなかった牛乳も『うめえうめえ!』って飲み干していた。こいつは本当に幸せな脳みそをしていると思う。
さて、そんな感じで朝のひと時を過ごし、クラスルームに戻ったところでジオルドとアリア姐さんを発見。しかも、いつもの水浴び(?)じゃなくて、なんか横たわったアリア姐さんをジオルドが一心不乱に揉んでいた。
『あ……朝からなにやってんだッ!?』ってアルテアちゃんがジオルドの頭を引っぱたく。『し……信じてたのに……!』、『もう、戻れないところまで行ってしまったの……!?』って何人かの女子がめそめそ。割といつも通りの光景だ。
『話せばわかる』ってジオルドは弁明。なんでもアリア姐さん、普段そこまで運動しないためか、昨日ハッスルしすぎて全身が筋肉痛になってしまったらしい。『特に腰が酷いっぽい。二の腕もヤバい』ってジオルドは言っていた。
「ゆ……油断したわ……これ、思ったよりキツいわ……」とでも言わんばかりにアリア姐さんも苦悶の表情。腰に手を当ててウンウン唸ってる。そんな姿でさえ様になると言うのだから恐ろしい。
しかもジオルドのやつ、いつもの葉焼けの薬と奮発したのかマッサージオイルまで使って揉んでいたものだから、アルテアちゃんが勘違いするくらいにはアレな感じだったんだよね。
一応書いておこう。ちゃっぴぃやヒナたち、あとミーシャちゃんその他参加者は全然問題なし。アリア姐さんの腰のキレが半端なさ過ぎたのか、あるいは若さの違いか。そう思った瞬間に、パレッタちゃんから『女として鉄槌を下す』ってケツビンタされた。女の子の察知能力が時々恐ろしくなる。
ともあれ今日もなんだかんだで暇だな……と思っていたところ、クラスルームの端にルマルマ壱號があるのを発見。そして、主であるアリア姐さんはマッサージ中でこちらに気づいていない。同じくルマルマ壱號をじっと見ていたポポルと目が合った。
『やっちゃおうぜ!』って互いに口パク。心と心が通じ合った瞬間であった。
『とりあえずカッコいい角をつけておこう』って俺が秘蔵の角(ちゃっぴぃがどこからか拾ってきたやつ)をルマルマ壱號の前の方に着けてみる。これだけでカッコよさ三割増し。やっぱ角はロマンだ。
『ギザギザの刃とかあると最強じゃね?』ってポポルがノコギリみたいになった板をルマルマ壱號の側面にセット。攻撃力大幅アップ。強い。
『秘密のポケットは鉄板だろ』ってことで俺が即席でルマルマ壱號の……こう、縁の裏のところに革袋をセット。板でカモフラージュし、ぱっと見はそこに収納スペースなんて無いように仕上げる。これで非常用の武器や食料も問題なく隠せる。
『せっかくだし変形機構もつけようぜ!』ってポポル。でもさすがにそれは無理。ロマンがあるのは認めるけれども、そもそもいったい何に変形させるというのか。
ここで新たなる参戦者が。『美しさが足りねーなあ?』ってエッグ婦人とヒナたちの抜け羽を持ったフィルラドがやってきた。『それだ』って俺もポポルも同意しちゃったよね。
とりあえず、そのままでは羽を張り付けても美しくないので、まずはその土台となる翼の作成を試みる。幸いにも材料はこの前の日傘のが余っていたのでそれを使う。あと、クラス財産からもかっぱらっておいた。
作り方はいたって単純。芯となる骨組みを作成し、そこに軽い布を張って羽をつけまくっていくだけ。最初に形を作ることにこそ難儀したものの、作業時間そのものはそんなに長いものでもなかった。
できた翼をルマルマ壱號に取り付けてみる。角に刃、隠しポケットに翼まで持つ最強すぎるそれが誕生してしまった。自分が生み出したものがあまりにもすごすぎて、逆に恐怖さえ覚えてしまったのを覚えている。
満足げにルマルマ壱號を眺めていたところ、体に違和感。『げぇっ!』ってフィルラドの悲鳴。なんか俺たちの体に蔦的なものが絡まっている。非常に強固。抜け出せない。
「な・に・や・っ・て・る・の・か・し・ら……?」……とでも言わんばかりににこにこガチ笑顔(目は笑っていない)のアリア姐さんが後ろに立っていた。やべえ。
『話せばわかる』って弁明を試みる俺たち。問答無用で抱きしめに来るアリア姐さん。マジで背骨が折れるかと思った。泣きそう。
『自業自得だな』って笑うジオルド。『……だいたい、必要なのは余計な装飾じゃなくて、弓矢発射機構だろ』って弓矢を持ち出すジオルド。あいつもアリア姐さんにバキバキにされていた。
夕飯食って風呂入って雑談して今にいたる。アリア姐さんのハグのダメージが大きかったのと、俺、ポポル、フィルラド、ジオルドの全員なぜか各々使い魔を抱いた状態でずっと立たされていたため、ちょっと短いけど今日はここまでとしたい。
普段は普通に抱っこできるちゃっぴぃでも、さすがにハグのあとに長時間抱き続けるのは結構堪えた。あとあいつ、やっぱり気のせいじゃなく間違いなく重くなってきている。これが成長期という奴だろうか。
地味に許せないのは、あまり重さを感じなかったであろうフィルラド(エッグ婦人とヒナたちにどれだけ重さがあるというのか)と、「ちゃんと反省してるの、ダーリン?」ってアリア姐さんに甘えられていたジオルド(そもそも口実に使われただけではないのか?)と、ポポルは……重さは無かっただろうけど、ヴィヴィディナだからそんなの関係ないか。
まぁいい。今日も寝る前にネグリジェ姿ロザリィちゃんが『あんまりイタズラとかしちゃダメだからね?』ってキスしてくれたら最高に幸せだ。
ギルは今日も大きなイビキをかいている。今日もこいつは筋トレしていたけれど、毎日毎日飽きないのだろうか……いや、飽きないのだろうな。だってこいつギルだし。
ギルの鼻にはルマルマ壱號から取り外した角を詰めておく。あの後、ルマルマ壱號は角と刃と翼をもいでアリア姐さんに返却されることになったんだよね。いつかアリア姐さんの心が変わって俺たちにカスタマイズさせてくれる日が来ることを強く願う。グッナイ。
※燃えるごみはカスタマイズできない。魔法廃棄物も不要パーツ。