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190日目 使い魔たちとの一日

190日目


 ギルの笑顔が悪魔っぽい。それだけ?


 ギルを起こして食堂へ。食堂へ入った途端、ギルのデビルな笑顔を見て腰を抜かす奴が多数。『なんか魂抜かれそう』、『理不尽な契約を押し付けてきそう』などと評価は散々。ギル本人は『筋肉は嘘をつかない。そうだろ?』ってトンチキなこと言ってたけど。


 朝飯にはカルボナーラをチョイス。なんとなくパスタの類が食べたかったためである。卵の甘みとぴりりと効いた胡椒のバランスが絶妙だったと言えよう。俺のお膝の上のちゃっぴぃも『きゅーっ♪』って美味そうに食ってた。


 気になることが一つ。ロザリィちゃんと一緒に休日限定パフェをはんぶんこしていたパレッタちゃんが、ヴィヴィディナを懐から取り出して『ヴィヴィディナのママはママディナ。ママディナのママもママディナ』ってずっとぶつぶつ呟いていた。どうしたのかと何気なく気にしていたら、『ヴィヴィディナの原点を忘れないために、たまに言い聞かせている』との返答が。


 それだけならよかったんだけど、『最近のママディナはヴィヴィディナでさえ胸やけを起こすほどの色欲を持て余している。ヴィヴィディナの第二光臨に影響を与えかねない。なんとかしてよ、パパディナ』って言われたのがだいぶ困るところ。そういえば最近ロザリィちゃんが妙に積極的なような気がしなくもないような?


 あと俺いつからパパディナになったんだろ?


 肝心のロザリィちゃんは、『べ、別にそんなことないもんっ!』って真っ赤だった。どうやらロザリィちゃん、未だに自分がヴィヴィディナが七大罪、ひいてはルマルマの色欲を司っていることを受け入れていないらしい。俺なんてヴィヴィディナでさえ吐き気を催す底なしの形容しがたきナニカなのにね。


 ギルは今日も『うめえうめえ!』ってジャガイモを食っていた。その悪魔的な笑みには思わずヴィヴィディナもにっこり。ギルの背中で狂ったようにカサカサしていたよ。


 朝食の後はなんとなくクラスルームでのんびりすることに。女子たちは買い物に行ったらしいほか、ギルは筋トレで外出。ヒモクズとおこちゃまは惰眠を貪っているため、なんとも閑散としていて寂しい感じ。


 これはもう俺もお昼寝するべきか……とお気にのクッションをちゃっぴぃから取り戻そうとしていたところ、「くぉん!」ってグッドビールがどこからかボールを持ち出してきた。たぶんロフトのガラクタ置き場かポポルの宝箱からだろう。


 とりあえずボールを投げてみる。「くぉんくぉん!」ってグッドビールが猛ダッシュして拾ってきた。もう一回投げてみたら、そりゃもう嬉しそうにグッドビールがそれを追いかけ、頭突きを入れる勢いで俺に突進。腰が壊れるかと思った。


 暇だったのでそのままグッドビールで遊んでやることに。途中からは辛抱堪らなくなったちゃっぴぃが『きゅーっ!』って参戦。あの野郎、グッドビールの背中に張り付き、奴がボールをくわえそうになったところで上からさっとかすめ取るというなんとも卑怯な戦法を披露していた。一度ボールを取ってしまえば、あとは飛んで俺のところに戻ってくるだけだしね。


 『きゅうん?』ってちゃっぴぃは「ん、序列を教えてやってもいいんだぞ?」とでも言わんばかりにグッドビールを見下す。が、グッドビールは構ってもらえてうれしいのか、「へっへっへっへっ!」ってちゃっぴぃの顔面を容赦なくぺろぺろしまくりんぐ。


 ちゃっぴぃのやつ、『きゅうん……! きゅうん……!』って半べそかいて俺に抱き着いてきた。こっそり俺の服で顔を拭いていなければ可愛げあったのにね。


 そんな感じでボールを投げて遊んでやっていたところ、今度はエッグ婦人とヒナたちまでもが参戦。マルヤキ、ピカタ、ソテー、ポワレ、ロースト、グリルという小さく素早いながらも抜群のパワーを持つ精鋭たちにより、ちゃっぴぃとグッドビールの勝率は大きく低下。


 今更だけど、見た目は普通のヒナがくちばしにボールぶっ刺してデカい犬と夢魔の追撃をおちょくる様に躱して戻ってくるってだいぶヤバい光景だと思う。


 そうそう、一応その光景を見ていたアリア姐さんにも『なんならやってみるか?』ってボールを投げてみる。アリア姐さん、「挑戦と受け取ったわ!」とでも言わんばかりに日傘をフルスウィング。ボールすっ飛んでってなんかヤバそげな音。外でやればよかったと後悔した瞬間だ。


 その後は使い魔どもと外に出てボール遊び。俺がアリア姐さんにボールを投げ、アリア姐さんが日傘でそれをすっ飛ばし、ちゃっぴぃ、ヒナたち、グッドビールがそれを追いかけて俺の元に戻ってくる……っていう何が楽しいのかよくわからん遊びだったけれども、やってる本人たちは楽しそうだった。


 特にアリア姐さんは、「やだ、これ……か・い・か・ん♪」とでも言わんばかりにバカスカボールを打ちまくっていたっけ。最後の方なんてあまりにも腰と技のキレが冴えわたってきたからか、もはやグッドビールでもないとボールのとこまで追いつけない領域になってたよね。


 そのころにはもう、ちゃっぴぃは完全に離脱。普通にグッドビールにまたがって、『きゅーっ!』って得意げに乗り回していた。いや、乗り回していたっていうか普通に乗っていただけなんだけど。


 午後もそんな感じで使い魔で遊ぶ。響き渡る打撃音にひかれたのか、他寮のやつらがちらちら見学に来ていたのを覚えている。ただのギャラリーならよかったんだけど、アエルノチュッチュのラフォイドルが『てめえそれ、絶対ウチにぶち込むなよ』ってすんげえ怖い顔して脅かしてきてびっくりしたっていう。


 一応書いておこう。普通に遊んでいたつもりなのに、いつの間にかメリィちゃんやエドモンドも混じっていた。見慣れぬ使い魔がいっぱいいたところを見るに、辛抱堪らなくなってやってきてしまったのだろう。一つのボールを何匹もの使い魔が争って持ってくる様子はかなりの迫力であったことを記す。


 あと、ブチちゃんだけはアリア姐さんの頭の上でぼーっとしていた。あの娘、そんなアグレッシブなタイプじゃないもんな。


 おやつの時間が近づき、さすがにそろそろ疲れたな……と休憩していたところ、『…よう、楽しそうだな』ってグレイベル先生がやってきた。


 しかもなぜか、小脇に『すぴー……っ』って安らかな寝息を立てるステラ先生とピアナ先生を抱えている。ついてるって思ったよね。


 『…昼寝しようとしたら、すでに俺のハンモックが占拠されていた』とはグレイベル先生。グレイベル先生のお昼寝用ハンモックは大きい(少なくともグレイベル先生、ポポル、ミーシャちゃんの三人で使っても問題ない)から、どうしてもお昼寝したくなったステラ先生が共犯者としてピアナ先生を誘ってグレイベル先生のそれを占拠したのだろう。そんなことしちゃうステラ先生も最高に可愛いと思います。


 ともあれ、スヤスヤと幸せそうに眠る二人をそのままになんてできるわけがない。寝顔を堪能したいという本能をなんとか断ち切り、『ステラ先生はウチで預かりますけど、ピアナ先生は? もしかして、ルマルマにくれるんですか?』って聞いてみる。『…………そういやなんで俺、こいつまで連れてきたんだ?』ってグレイベル先生も首をひねった。眠くてぼうっとしていたのだろうか。


 とりあえず、クラスルームの大きめソファにクッションをデコり、二人を寝かせる。ついでにぽんぽんを冷やさないようにタオルケットもかけておいた。


 ステラ先生とピアナ先生、隣同士に寝かしつけた瞬間に互いが手をさ迷わせ、そしてぎゅって握った。でもって、『ん……!』、『みゅ……!』って本当に幸せそうに顔をほころばせるの。なんかもう全力で心が浄化されるレベル。この世でこんなにも美しくて清らかな寝顔があっただろうか。


 『…ホントに幸せそうに寝てるな』ってグレイベル先生もしみじみと呟いていた。そういや、この二人って小さい頃はいつも手をつないでお昼寝していたって言ってたっけ?


 出来れば俺もステラ先生とピアナ先生の真ん中でお昼寝したかったものの、涙を呑んでその場を後にする。『…眠気覚ましに、ちょっと動くか』ってグレイベル先生までもがボール遊びに興じ出したほか、帰ってきたミーシャちゃんたちまでもが『あーっ! ずるいの!』ってボール遊びに加わったため、俺の出番が消失。


 しょうがないのでささっとおやつ作り。今日はあえてカップケーキにしてみた。シンプルに焼き上げシンプルにパウダーシュガーで仕上げた素朴な逸品。焼きたての良い匂いが充満するころにはステラ先生とピアナ先生が起きて、目をこすりながら『ママ、おやつ!』とか言ってきてびっくり。


 『ちち、違うの! これはちょっと、寝ぼけていただけで……!』、『そ、その、お昼寝の後は、おばさんがおやつの支度をしていたから……!』って二人は真っ赤になってあわあわしていた。そんな姿も最高に可愛かったです。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。俺がおやつの支度をしている間になんだかんだでルマルマの大半が帰ってきていたらしく、先生を起こしちゃ忍びないとばかりに使い魔&グレイベル先生に交じって遊んでいたらしい。


 思った以上に使い魔の数が多かったのと、帰ってきた人間も多かったこと、さらには恥ずかしさをごまかすように先生たちがカップケーキをおかわりし、動いておなかが空いちゃったおこちゃまたちも遠慮なくガツガツ食っていたため、結構な量のカップケーキを焼き直す羽目になったっていう。


 あと、寝る間際にロザリィちゃんが『……今日はおつかれさまっ!』ってキスしてくれた。これだけでもう何もかも報われた気分。たまには使い魔の子守(?)をするのも悪くない。


 ギルは今日も大きなイビキをかいている。こいつも使い魔に交じってボール争奪戦をしていたわけだけれども、きちんと負けてあげているあたり、結構気を使っているというか、すげえ優しいんだなって思う。しかもこいつ、相手に全力を出させたうえでギリギリ負けるっていう……なんだろうね、子供遊びの心得ってのをよくわかってるんだよね。こんな悪魔的な寝顔なのに。


 まぁいい。ギルの鼻には……よくわからん使い魔の毛でも詰めておこう。おやすみなさい。

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― 新着の感想 ―
[一言] ルマルマの色欲と形容し難きナニカであるママディナとパパディナ。こんだけヤバくても学年単位の形容詞にならずに「ルマルマの」ですむ魔系の学校ヤバイな。
[一言] おやつにカップケーキなんて、なんだかお洒落ですね。自分が小さい時はホットプレートを出して来て、ホットケーキを焼いてました。 先生達二人とも、きっと幸せな子供時代を過ごされたのでしょうね。 …
2020/10/04 00:03 退会済み
管理
[良い点] なんだかんだ書き手が面倒見良いのは自分も宿に止まってる冒険者達に可愛がってもらってたからなのかねぇ…… ちゃっぴぃへの対応を見るになんだかんだ言いながら甘やかすツンデレな親バカになりそう …
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