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185日目 魔法流学:パソクラの原理について

185日目


 ギルがジャガイモに恋してる。異性でも同性でもなく、動物の枠を超えるとは予想外。


 ギルを起こして食堂へ。ギルのやつ、ギル専用に用意されたいつものジャガイモの大皿を見て、すごく熱烈に愛の言葉を囁いていた。割といつも通りな光景だと思わなくもない。


 なんとなくそんな気分だったので、朝食にはポテトサラダをチョイス。サラダと銘打たれているのに、これならちゃっぴぃもおこちゃまポポルもガツガツ食うのが不思議といえば不思議。ミーシャちゃんも、『今日くらいは付き合ってやるの!』ってギルの隣でポテトサラダをがっつり食ってたっけ。


 あんま関係ないけど、『うめえうめえ!』ってジャガイモを食べるギルを見てゼクトとライラちゃんが複雑そうな顔をしていた。とりあえず色々諸々誤解は解けたっぽいけれど、思うところがあるのだろう。『私も筋肉……つけないとな……』ってライラちゃんが死んだような顔で呟いていたのを覚えている。


 あと、『愛があるなら何でもできるよ!』ってライラちゃんの肩を抱くロザリィちゃんがマジプリティでした。一瞬女神がこの世に顕現したのかと思っちゃうレベル。今日も笑顔がホントにステキ。一生眺めていたい。


 さて、今日の授業はミラジフの魔法流学。あの野郎、片手にあるジャガイモに延々と愛を囁くギルを見て、『教えてくれ。私の頭がおかしいのか、諸君の頭がおかしいのか。もう本当に気が狂いそうだ』って言いやがった。


 『気が狂いそうって思っているうちは、正気なんじゃないでしょうか』って答えてみたところ、『諸君らにまともな答えを期待した私の頭がおかしかったのだな』って嫌味たっぷり。どう答えるのが正解だったのか、小一時間ほど問い詰めたいところだ。


 ともあれ、ジャガイモに対する愛の言葉(ゴツゴツしていて美しい、土だらけの素朴で自然な姿に惹かれた、蒸したら美味しそう、その身に世界が宿ってる、など)をバックミュージックに授業が始まる。


 今回はパソクラの定理について学んだ。前回までに魔法流体の基礎的な挙動やそれを利用した測定器の原理なんかを学んだわけだけれども、じゃあそもそもとして魔法流体のこの基礎的な挙動ってのはどんな法則に基づいて行われるのってのがでてくる。


 それを説明するのがパソクラの原理。例によって例の如く、昔の偉いおっさんの名前が元になっているらしい。


 毎回のように思うけれど、なんで連中は新しい発見に自分の名前を付けたがるのか。だったら、俺が発見した【ロザリィちゃんとのデートは楽しすぎて時間が一瞬で過ぎ去る】現象はロザリィの原理って言ってもいいのではないだろうか? 【ナターシャは絶対に自分の下着を畳まずにぐちゃぐちゃにする】はナターシャの原理だし、【ミニリカは顔面パックすると高確率で真夜中に徘徊する】はババアロリの原理だ。


 ともあれ、このパソクラの原理について以下に記す。



・パソクラの原理

 魔法的に密閉された空間(多くは結界内など)で空間内の流体的な魔力が静止しているとき、そのどこかに加えられた魔侵圧力はその空間、その魔法流体の形状に関係なく、魔法流体のあらゆるすべての個所に全く同じ大きさで伝播していく。



 何言ってんだよって思ったけれど、マジでこれだけの話でしかないらしい。変に回りくどくてわかりづらい言い回しをしているけれども、要は【一か所に力を加えたら全部に影響があるよ】ってだけ。わかりやすく言えば、誰もいない朝風呂の真ん中にダイブしたら、風呂の水面全部が揺れるって感じだろう。


 ここで重要になってくるのは、【空間や流体の形状に関係なく~】ってところ。魔侵圧力の定義的に考えると、例えばある一端はすんげえ小さい面積とし、もう片端を大きな面積にしたうえで小さい面積の方に力を加えると、そこで発生した魔侵圧力を釣り合いとして帳尻を合わせるべく、面積が大きいほうでは原理に則って大きな力が生じる。


 つまり、入り口で小さい力を入れたのに、出口では大きな力となってやってくる……魔法的な昇圧効果の機構を作れるってわけだ。


 『毎年のように勘違いする愚か者がいるが、だからといって魔力を無限にすることはできない。封縮性や粘性に伴うロス等が生じるため、見かけ上そういうふうに見えるだけで、実際は少しずつ魔力は目減りしていく』ってミラジフは言っていた。それでもまぁ、そのロスも考慮するならば、最初と最後で魔力の総量のつり合い取れているんだろうけどさ。


 ちなみにこのパソクラの原理、少し前の授業でやった魔侵圧力の説明(方向に関係なく大きさは同じ)とも合致している。というか、その性質を説明しているのがこの原理だ。


 あと、この原理は静止魔法流体であるならば、すべての位置で魔侵圧力が大体おんなじですよってことも示しているとかいないとか。


 『厳密には異なるが、実用上は何の問題もない。考えなくてもいいことは考えないに限る。それでなお気になるというならば、私に聞きに来る前にまずは自分で調べろ。話はそれからだ』ってミラジフはぶすっくれた顔で言っていた。あいつ、マジでもうちょい愛想よくできないのかね? アエルノチュッチュの担任って言ってもひどくない?


 授業についてはこんなもん。みんなミラジフにビビっているからか、授業中は一切の私語が無くピリついているから困る。これがステラ先生の授業だったら和気藹々と笑顔あふれる和やかな授業だし、シキラ先生だったらあらゆる意味でスリルたっぷりで愉快な授業だというのに。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、久方ぶりにポポルがギルによじ登っているのを発見。『定期的に登っておかないと体が鈍るから』とのこと。触発されたのか、ミーシャちゃんもよじ登っていたし、うちのちゃっぴぃも『きゅーっ!』ってよじ登っていた。三人そろってギルの肩車を奪い合う姿はなかなかに微笑ましかったと言えよう。


 気になることが一つ。その様子を見ていたジオルドが、『むちむちの弾けるふとももの持ち主を肩車したい。できれば生足で、かつその人が高所恐怖所だともっといい』って死んだ目をして呟いていた。


 『肩車したい』だけだったら何人かの女子が満更でもなさそうにチラチラ見ていたのにね。普段は比較的まともなのに、妙なところでチャンスを逃がすこの現象……ジオルドの原理と名付けるべきだろうか?


 ジャガイモに愛を囁き続けていたギルは今日もぐっすりと大きなイビキをかいている。結局、究極の愛の形としてギルは最愛のジャガイモを丸ごと食べてしまったらしい。『これが……俺の愛なんだ……こうするしか……なかったんだ……ッ!』ってあいつは言っていた。


 愛って難しいんだなって思った。二秒でどうでもよくなったけど。


 ギルの鼻には……ポポルの髪の毛でも入れておくか。これ、ギルのベッドにあったやつね。状況的にも色合い的に間違いないだろう。 みすやお。

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― 新着の感想 ―
[一言] 当たり前のことが意外と重要だったりするからなぁ 勘違いするのはいるけど 本命:ギルの髪がテンパ 対抗:ギルがロン毛 大穴:書き手がロン毛
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