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179日目 発展魔法材料学:魔硬について

179日目


 ギルに枝毛がいっぱい。なぜ?


 ギルを起こし、ちゃっぴぃをお姫様抱っこして食堂へ。ロザリィちゃんとイチャイチャしつつミートパイを食していたところ、またしてもライラちゃんがやってきた。『余ってたらでいいんだけど、ナエカを分けてもらえないかな?』とのこと。


 なぜかロザリィちゃんがきらっきらした瞳で俺のローブをくいくいと引っ張ってきたため、快く譲ることにする。『ナエカなんてそこらで簡単に手に入るんじゃない?』って聞いてみれば、『ルマルマのナエカは活きの良さが普通のとはダンチだもん! 文句なしの最高品質じゃん!』ってライラちゃん。


 『クラス栽培のでしょ? 何かコツとかあるの?』って聞かれて、俺もロザリィちゃんもあいまいに笑うことしかできなかった。いったいどうして、この純粋な瞳に栽培のコツはギルの脇から放たれる月光などと言えるだろう。字面も絵面もひどすぎる。


 ちなみに、『ナエカの代金はゼクトにツケといて!』ってライラちゃんはちょう笑顔だった。あと、やっぱりロザリィちゃんとこそこそ『……今のところは順調』、『……解読がちょっと難しい。熟成が少しアレかも』、『想定していた以上の結果が出ている』……とかなんとか話していた。


 『何の話をしていたの?』ってロザリィちゃんに聞いてみるも、『ひ・み・つ・♪』ってキスされ黙らされてしまった。心臓が破裂しそうで文字通り二の句が次げない。ドキドキしすぎてなんかすべてがどうでもよくなっちゃったっていう。


 ギルは今日も『うめえうめえ!』ってジャガイモを食っていた。グッドビールも「くぉんくぉん!」ってジャガイモの山に頭をつっこんで美味そうに食ってた。ミーシャちゃんがその様子を呆然と見つめていたので、『遠慮せずに混ざってもいいんじゃないかな』って背中を押したらガチギレされてリボンで滅多打ちにされた。解せぬ。


 さて、今日の授業はシキラ先生の発展魔法材料学。教室に入ってくるなりすんげえ笑顔。なんかいつにもまして上機嫌。ちょうにっこにこで嬉しそうな顔を隠そうともしない。


 『なんかいいことでもありました?』って聞いたら、『これから起こる予定だぜ! 確定じゃないが、俺の勘だとほぼ間違いなく起こる!』とのこと。さらにさらに詳細を聞いてみたところ、『この前の休みに図書館行ったら、すげえ面白いことに気づいた!』とのこと。


 『どうせまたロクでもないことじゃ……』ってアルテアちゃんのつぶやきを、シキラ先生は聞き逃さない。『いいや、むしろお前らが好きな甘酸っぱい感じのアレだぜ? 男よりも女受けのいい話であるのは間違いねえな』とのこと。


 『変に干渉しないでくださいね!』、『悪いことはするなってヴィヴィディナも言ってる』、『助力を請われたとしても、まっとうに、その人が望んだままの意味で助けになってあげてくださいっ! いいですねっ!』ってシキラ先生はルマルマ女子&再履女子にすんげえ剣幕で口酸っぱく言い聞かされていた。


 『えっ、俺そんなに信用ないの? ちょっとショックなんだけど』ってシキラ先生は驚いていたけれども、逆になんで信用があると思っていたのだろうか。本当に不思議でならない。


 そんな一幕があった後は普通に授業。今日は魔硬について学ぶ。前もなんだったかの授業(たしかシューン先生の授業?)でちょこちょこでてきたけれども、魔硬ってのはその魔法体の魔法的な硬さのことを指す。


 今までの魔法材料学においては、主として魔法材料の壊れやすさを評価できるようにすることで設計指針を立てられるようにしましょう、だから材料の構成から破壊時の挙動まで、いろんなことを調べましょう……ってのがその大まかなコンセプトだったわけだけれども、当然この魔硬ってのも材料の強度の評価に大きくかかわってくる要素となる。


 『一口に魔硬っつっても、まぁいろんなものがある。そもそも硬いってのはどういうことだ? 壊れないってことか? 変形しないってことか? 壊れないって意味なら無茶苦茶に柔らかいモノも“硬い”ことになっちまうし、変形しないって意味なら、そこらの岩は十分に“硬い”。ただし、脆くて壊れるけど』ってシキラ先生はつらつら述べていく。


 で、偉大なる先人たちが“硬い”について色々諸々頑張って調べたらしい。『死んだ先人に感謝してもしょうがないから、俺に感謝しながら板書取れよ!』って言われたそれを下記に記す。



・魔硬

 魔法的な硬さのことを指す。これは学術的な意味だけにとどまらず、実用的な意味でも魔法材料の強度評価項目として大変重要な概念であるのにもかかわらず、その厳密な意味合いの繊細さより、現代においても明確な定義がされていない。あえて言語化するならば、【魔法材料が持つ外部影響に対する抵抗力そのもの】となるが、それでもまだ十分ではない。ひとまず、魔硬とは材料の性質、特に魔法強度と良い相関性のある要素だと認識があればよい。


 そもそも古代魔法界においては、魔硬とはある対象とある対象を魔法的に干渉させたとき、欠けたり傷ついたりしたほうが弱い、すなわち魔硬が低いとしていた。しかし、簡易的なものならともかく、厳密な意味では魔硬の評価としてそれだけでは不十分である。


 今日では、一般的に評価対象として扱われる魔硬として以下のものがある。


【原始魔硬】

・マーセ魔硬

十種類の標準魔法体(その多くは精錬した魔法鉱)を魔法的にこすり合わせ、魔硬による序列ランクを制定。標準魔法体に対し、どのランクに値する魔硬なのかを示す。マーセ魔硬においては、最軟は軽石の1、最硬はダイヤモンドの10である。マーセ魔硬では感覚的におおよその魔硬を求めることはできるが、厳密な値を求めることはできず、求められるのはせいぜいが「5以上6未満なので5.5程度。でもなんかそんな気分なのでおまけして5.8くらい」といったところである。


【静的魔硬】

・ヴルナル魔硬

・ルックウェム魔硬

・ヴィックス魔硬

・ナーパ魔硬

 詳細は次の授業にて。


【動的魔硬】

・シャウ魔硬

 詳細は次の授業にて。



 なんか中途半端でざっくりした感じだけどこんなもん。肝心の各魔硬の詳細については、『魔硬評価試験と密接なかかわりがあるから、来週の授業で試験方法と一緒に教える』とのこと。今回はあくまで魔硬がどんな概念であるのかってのを理解してもらえればそれでいいらしい。


 そう言われてみれば、シューン先生の授業だと魔硬はマジで「魔法的変形のしにくさを表すパラメータである」くらいしか言ってなかった気がする。いまさら一年生の授業内容とも被ってくるとかホントに二年時の授業は倒した敵が復活してくるパターンが多くて怖い。


 ……待て、思い出してきた。たしか魔硬の話、白紙の日記に書いた気がする。俺の記憶力マジすごい。


 ちなみに、シキラ先生は『俺としては不完全燃焼気味だし、このまま徹夜でぶっ続けで教えたい。正直トシだし徹夜は辛いが、愛する生徒のためならそれすら厭わない』って言っていた。


 徹夜でもなければ教えきれない量に対し平然とそんなことを言うとか、やっぱあの人だいぶクレイジーだと思う。夜はきちんと寝ないとお肌が荒れちゃうっていう。


 夕飯食って風呂入って雑談して今にいたる。今日は授業内容的にも板書の量的にも大したことなかったから、雑談中のみんなの顔が結構明るかった気がする。平日なのにいつも以上にカードゲームに盛り上がって、ついつい微妙に夜更かししてしまった。


 ただ、最近女子がちょっと図太くなってきたのか、ゲームに熱中しているといつのまにか夜のお供のおやつがごっそり減っているから困る。なんであいつら自分じゃ絶対に用意しないくせに、男子の皿からは平然とかっさらうのだろう? そんなことをしても、食べたという事実は変わらないのに。


 あ、ロザリィちゃんなら話は別ね? むしろおなか一杯好きなだけ食べてほしいと思う。にこにこ笑って嬉しそうにしているロザリィちゃんが一番ステキで可愛いのだから。


 ギルは今日もぐっすりすやすやと大きなイビキをかいている。毎度のことながら、こいつの寝付きの良さが羨ましくてならない。まぁ、最近は幾分か寝苦しい暑さも和らいできたんだけどさ。それでもまだ快適とはいいがたいんだよね。


 ギルの鼻にはスナックのクズでも詰めておこう。『食べすぎだぞ』ってアルテアちゃんがヒナたちから取り上げたやつ(皿に残ってたクズ)ね。なんでこんなものをわざわざ自室にまで持ってきてしまったのか自分でも謎だったけど、きっとこのためだったのだろう。おやすみ……み……み……思いつかない。ちくしょう。

【参考】

魔系学生の日記 223日目 魔法構築学:魔法刃に求められる性質について

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― 新着の感想 ―
[一言] 硬度は面倒だよなぁ……専門違うけど 本命 : 大きめのスナック菓子が出現 対抗 : ギルが塩を吹く 大穴 : 部屋の中がスナック菓子まみれ
[良い点] お帰りなさい! 昨日再開してましたのに今日になって気付きましたorz 理系大学出たものの勉強と下宿の往復だけだった僕によってはこの物語は眩しい限り! またダラダラ読ませていただきますw
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