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177日目 ルマルマのパパ

Happy golden week !

177日目


 ギルの鼻に羽ペンが突き刺さっている。なんで再生して……呪われてね?


 羽ペンをトイレに流してから食堂へ。今日も今日とて人は少ないだろう……と思ったら、なんかやたらと女子が多い。聞き耳を立てると、『休日限定スペシャルクレープ』だの『季節限定の逸品』だのそんな単語が聞こえてくる。


 相も変わらず、なぜ女子だけにその情報が伝わっているのだろうか。本当に不思議でならない。


 ともあれ、俺も女子に交じって休日限定スペシャルクレープをゲット。選んだのはちょっぴりオトナなビターチョコを用いたチョコレートのクレープ。深いカカオの香りとちょっぴりのほろ苦さ、そして生クリームの底なしの甘さが絶妙なハーモニーを醸し出していて最高。朝からちょっと重いかもと思ったけど、全然そんなことはない。


 俺のお膝の上のちゃっぴぃも『きゅーっ♪』って美味そうに食っていた。三粒しか入っていないラズベリーも全部食いやがった。あいつ酷い。


 ちょっぴりしょんぼりしていたところ、『パパ、あーん♪』ってロザリィちゃんが隣に。ロザリィちゃんの選んだそれは、ベリー&ピーチの女の子らしさ全開のやつ。フルーツがこれでもかと盛られたまさにデラックスにふさわしい逸品。


 もちろん、ぱくっと一口。最高に甘い。『パパの、もーらいっ!』ってロザリィちゃんも俺の手のクレープをそのままぱくり。そのうえで自らのクレープの、俺が口をつけた部分に口をつけた。


 『……間接ちゅう?』って頬を赤らめながらわき腹をつついてくるロザリィちゃんのなんと愛おしいことか。もうお口の中も心の中も甘々のベリースウィート。


 『別に直接でもいいんだけれど』って呟いたら、ロザリィちゃんってば妖しく笑い、俺の耳元で『今はだぁめ♪』って囁いてきた。『クレープに集中できなくなっちゃうからね!』とのこと。ホントなんでこの娘こんなに可愛いんだろう? あ、ロザリィちゃんだからか。


 ギル? あいつ、ジャガイモを握りつぶして生地っぽくして、それでジャガイモを巻いて『うめえうめえ!』って食ってたよ。『これが俺のデラックスだ……!』ってすんげえ自慢げだったけど、だれも見向きもしていなかったことをここに記しておく。


 さて、そんな感じでイチャイチャしながら朝餉の余韻を楽しんでいたところ、ティキータ・ティキータのライラちゃんがやってきた。珍しくメリィちゃんを連れていないな……と思ったら、『なんかあの子、あれ以来──くんに怯えているみたいで。ちょっと近づくだけで尻尾でお尻を隠して逃げちゃうの』とのこと。俺ほど優しくて穏やかな人間はいないのに。ちょう悲しい。


 ともあれ、用件を聞く。『ちょーっとお願いがあって……』とライラちゃん。その目は、俺のお膝の上でふんぞり返り、ロザリィちゃんに存分に甘やかされているちゃっぴぃに。


 『ちょっと作ってみたい魔法薬があるんだけど、その材料の一つに夢魔の体液があって……』とのこと。夢魔の材料なんてそうそう手に入らないし、市場に流れていても結構なお値段がする。学生の俺たちにとってはなかなかに痛い出費だ。


 でも、ウチにはちゃっぴぃがいる。こんなんでもこいつは魅惑種の最上位だ。でもって、魔法薬の材料に使うなら、採れたて新鮮なほうが良いに決まっている。ついでとばかりに、ちゃっぴぃはぴちぴちだ。これ以上にないくらいに都合がいい……ってことで、ライラちゃんは目を付けたらしい。


 ともあれ、断る理由もない。俺のお膝の上に載っているちゃっぴぃの腹のあたりをポンポンと叩き、『ほれ、ばんざーい』って声をかけてみる。こういう時だけ素直でこどもらしいちゃっぴぃは、『きゅう?』って普通にばんざいした。


 その両手を片手でガシッとまとめてつかむ。ついでに立ち上がり、ぶら下げてみた。『きゅううう!?』ってちゃっぴぃはじたばたするも、足がブラブラするだけで俺の拘束から逃れられるはずもない。


 で、そんな無防備なわき腹を俺の黄金のミスリルハンドでくすぐりまくる。『きゅっ! きゅうっ! きゅうんっ!!』ってちゃっぴぃが全力で悶え始めた。吊り下げてる腕の手ごたえがマジ半端ない。魚に例えるならあの日見たヌシレベル。こいつぁ大物だと評価せざるを得ない。


 『きゅうううう!』ってちゃっぴぃが泣き叫ぶのを聞き流しつつ、『ほら、いつでも採取していいよ』ってライラちゃんにちゃっぴぃの涙の採取を促す。絶好のチャンスだというのに、なぜかライラちゃんは『えええ……』って固まっていた。不思議なこともあるものである。


 最終的に、小さな小瓶にほんの少しくらいのちゃっぴぃの涙(夢魔の涙)の採取に成功。採取直後、『ふーッ! ふーッ!』ってぜえぜえになったちゃっぴぃに全力で顔面をひっかかれたのがわけわかめ。なんかいつもよりガチだったし。子供の癇癪はこれだから困るっていう。


 『あの、普通にあくびとかで出る涙で十分だったんだけど……今すぐってわけじゃなくて、自然に採れるやつでよかったんだけど……』ってライラちゃんは言っていた。宿屋の息子的に考えて、お客様からの要望にすぐ応えるのは当たり前だというのに。


 ちなみに、『よだれだったら、いくらでも好きなだけあげられる。こいついつも垂れ流しだし』って聞いたら、『ごめん、それは別にいいかな』って断られた。夢魔の涎も結構な魔法材料なんだけどな。


 あと、ロザリィちゃんがライラちゃんとこそこそ話していたのを覚えている。『……もしかして、アレ?』、『……実は最近ちょっとマンネリ気味で。そしたら、すごいレシピを見つけて』、『もちろん、完成したらちょっと分けてあげるね』……とかなんとか言っていた気がする。なんのことかわからないけど、ロザリィちゃんがやたら嬉しそうにしていたから、特別気にすることでもないか。


 その後は普通にまったり過ごす。より正確にいうならば、未だご機嫌斜めのちゃっぴぃにベッド代わりにされてしまっていた。俺の麗しの膝枕とケツ枕も使われた気がする。動こうとしたら『ふーッ!』ってあいつすんげえ怒るし。ご主人様のことをいったい何だと思っているのだろうか。


 午後も大体そんな感じ。あ、ちゃっぴぃにケツを叩かれてクッキーを焼いていたら、その匂いにつられたらしくステラ先生がやってきていた。なんかマジで本当にいつの間にかクラスルームにいて、ミーシャちゃんやポポルと並んでソファで『まだかなあ、まだかなあ』ってそわそわしてたの。そんな姿がマジプリティ。


 で、クッキーを焼きつつ先生たちの雑談を聞いていたんだけど、昨日のアルテアちゃんの発言について話していた。『アルテアちゃん……先生なんか、すごくうれしい……!』ってステラ先生はすんごく笑顔。『なんだろ……自分のことじゃないのに、すごくうれしいの……!』ってにっこにこ。『家族……うん、家族……! いい響き……!』って何度も確かめるようにつぶやいていた。


 先生のあまりに無邪気な姿に、アルテアちゃんと男子は照れくさそうにしていた。一方で女子の方はノリノリで、『ルマルマが家族なら、アルテアはママなの。先生はお姉ちゃん!』、『ミーシャは妹。これ確定。ロザリィは悪い遊びばかり教えるいとこのお姉さん。これ真理』、『先生の家族になれるのは良いけど、ルマルマの父が誰になるかでだいぶ変わってくるね……』……なんて話が聞こえてきた。


 マジな話、ルマルマの父って誰なんだろ? 組長的に考えるなら俺だけど、俺はロザリィちゃんとステラ先生以外をお嫁さんにするつもりはない。アルテアちゃんには申し訳ないけれど、そこは譲れないし、それにルマルマの父になったらルマルマの子たるステラ先生と結婚できない。そんなの絶対に嫌だ。


 ルマルマの母の相棒って考えるとフィルラドがルマルマの父になるけれど、あのヒモクズを父とは認めたくない。それだけはノーセンキューである。


 案外、安心感と前向きで明るい性格、そして誰もが認める大きな背中という意味では、ギルが一番ルマルマの父にふさわしいのかもしれない……いや、それはないか。


 ともあれそんな感じで午後のひと時を過ごす。クッキーを焼き上げたころには、なぜかステラ先生がアルテアちゃんに抱き着いて甘えていたことを記しておく。最近やたらとステラ先生がアルテアちゃんに抱き着いているような気がするけど、俺ってばアルテアちゃんへの嫉妬がマジでヤバいことになりそう。ずるい。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。今思い出したけど、寝る間際にちゃっぴぃがやたらと乳下をぼりぼりしているのを発見。まさかと思ってずいっと持ち上げて確認してみれば、それはもう見事な汗疹が。


 なんであいつ、掻くなって言ってるのにこうも言うことを聞かないのか。『余計にひどくなるぞ』って手を押さえたら、『きゅうん! きゅうん!』って上目遣いで懇願してくるしさあ……。ガキのあいつがやっても滑稽なだけだっていう。せめてあと十五年くらいは経ってからやれって話である。


 ギルは今日もスヤスヤと大きなイビキをかいている。そういやこいつ、日中はクラスルームにいなかったけどどこにいたんだろ? まあ、どうせ外で筋トレでもしていたに違いない。こいつはそういうやつだ。


 ギルの鼻には汗疹の薬でも詰めておく。ホントはちゃっぴぃに塗ろうとしたんだけど、古くなってたからやめたやつね。明日、時間を見つけてロザリィちゃんに新しい薬を渡しておかないと。


 とりあえず、乳下ぼりぼり防止策として今日はちゃっぴぃの手をしっかり握って眠ることにする。グッナイ。


※燃えるごみは汗疹だから消す。魔法廃棄物も汗疹だから滅す。

【この連載小説は未完結のまま約4ヶ月以上の間、更新されていません】ってメッセージ、心がちくちくするよね……。


 お仕事は相変わらずです。在宅勤務がかなり増えたのに、残業時間はさして変わりありません。家だろうとオフィスだろうとやることは腐るほどあるのですが、『在宅だとやることがない……』という世間一般のアレは幻か何かなのでしょうか?


 ともあれ、最近は更新再開に向けてぼちぼち準備を進めています。今回はゴールデンウィーク記念による繋ぎ的な一回のみの更新ですが、お察しの通りのタイミングで本格的な更新再開を行う予定です。それまでしばしお待ち下さい。


 なお、進捗状況についてはTwitterのほうで呟いています。ここ近日の状況を追っていただければ、どれだけ進んでいるかはわかると思いますので、気になる方はチェックしてみてください。


 あ、あとちょっと浮気しちゃいました。そっちも気になる方はどうぞ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今更ですが更新ありがとうございます! 気がついたらルマルマの皆と年齢が同じになりそうで驚いてます!お仕事頑張って下さいねー!
[一言] 更新待ってました!コロナに気をつけながら次話も更新して下さい。 それと浮気はあとちょっとで済ませていい話では無いのでは…
[良い点] 更新ひゃっほい! [一言] ・・・4か月更新ない作品はブックマークを最近更新ない枠移動させてますね
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