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164日目 魔法流学:封縮性と粘性

164日目


 ギルに乳首がいっぱい……いや、これラムレーズンだ。


 ギルを起こして食堂へ。半裸のあいつの乳首がラムレーズンであることに本能で気づいたのか、いつぞやと同じく使い魔共が群がってきた。ヒナたちは我を忘れて競うようにギルの大胸筋(についてるラムレーズン)を突きまくっているし、ヴィヴィディナ(サソリ形態)もギルの腹筋からカサカサと登ってラムレーズンを食っていた。


 ウチのちゃっぴぃも、それはそれは嬉しそうに『きゅーっ♪』ってラムレーズンをぶちぶちもいで食っていた。何も知らないアエルノの連中がその姿を見て、なんかぎょっとした顔をしていたっけ。


 一方でギルは大変楽しそうに『輝け俺の大胸筋!』ってポージングして乳首とラムレーズンを見せつけていた。ポージングするたびに新しいラムレーズンが実る(?)ものだから、ちゃっぴぃたち使い魔たちはもちろん、おこちゃまポポルやミーシャちゃんもきゃっきゃとはしゃいでいたっけ。


 あ、そうそう。途中でギルにしては珍しく『いってぇ!?』って悲鳴が。どうやらちゃっぴぃがラムレーズンと間違えてギルの乳首をもごうとしてしまったらしい。『ごめんな、乳首だけはどう頑張っても鍛えられなかったんだ……』ってギルは苦笑いしながらちゃっぴぃの頭を撫でていたよ。


 あえて書いておこう。ギルがジャガイモを『うめえうめえ!』って貪った瞬間、乳首の傷が癒え、そしてラムレーズンが再び実り芳香な香りをまき散らしだした。通りすがりのシャンテちゃんが『ラムレーズン……好きなのに……!』って苦悶の表情を浮かべ、ロベリアちゃんが『人体って不思議ね』ってコメントしていた。


 さて、今日の授業はミラジフの魔法流学。ミラジフは入って来るなり盛大な溜息。ぶすっくれたツラを隠そうともせず、『どうしてこうも最近のガキは神経を逆なでしてくるんだ……?』ってブツブツ言っていた。


 どうも、ミラジフはラムレーズンはあまり好きではないらしい。詳しくはよくわかんないけど、いろいろあって嫌いになったっぽい。だから、ギルから仄かに香るラムレーズンの良い香りが神経に触るのだとか。


 『個人の好き嫌いでそんな態度を取られても困るのですが……』って俺ってば紳士的に事実を告げたのに、『嗜好の問題以前に、そんな面妖な格好を見せつけるほうがどうかと思うが?』ってミラジフは若干逆切れ。


 ギルは正装だし、ラムレーズンは生理現象だからしょうがないのにね。頭の固い奴はこれだから困るっていう。


 そんな一幕の後は普通(?)に授業。今日習ったのは魔力の封縮性と粘性について。魔法流学では魔力そのものを流体的に扱うっていうのは前回の概要でも触れられたけれど、流体的って具体的になんなのってところの一番基礎ね。


 『他の授業でやっただろうが、魔力、魔法要素は外部からの魔力を受けて封縮、すなわち魔法的な圧縮が働くことがある。触媒反応学における封縮魔力、魔力学のサイクルでも魔法体にかかる力として封縮は取り扱われていただろう』とはミラジフ。


 どうでもいいけど、二年次の授業って当たり前のように他の授業の要素使われてない?


 魔法流学、すなわち魔力を流体として扱っている場合において、魔力に魔応力等外部作用を加えると、対象の魔力(魔法体)の体積は縮んで小さくなる(封縮)。ただし、これは必ずしも一定の割合で起こるものではなく、その対象の魔力やその時の状態によってだいぶ変わってくるのだとか。


 この魔力が持つ封縮する性質を封縮性と呼び、封縮のしやすさを体積変化量を元の体積で除したもの……封縮率で表すとのこと。


 次は粘性について。触媒反応学的な考えになるけれど、通常の魔力は(その定義的に考えて)対象に対して垂直にしか働かない。


 ところがどっこい、流体とした魔力の場合、対象に対して平行に魔力が作用していたとしても、魔力とそれが接触していた場合、魔力に引きずられるように力が働くのだとか。


 『触れてるんだから当然じゃないんですか?』ってクレバーで知識欲が抑えられない俺が質問。『当然だと思うこと自体になぜ疑問を覚えない?』って嫌そうな顔をするミラジフ。


 曰く、全ての魔力にはみんな大なり小なり粘性があるため、そのようなことになっているのだとか。逆に理論上粘性が存在しない魔力(完全魔法流体)の場合、例え接触していても一切魔法的な干渉はしないんだって。


 難しく書いたけれど、文字通り魔力がねばねばしているかどうかってだけの話だろう。あとは裂界魔応力と考えは近い気がする。かけた魔力に対して平行に働く魔力って、つまるところ……こう、横にぐいってずれるようなアレじゃん? まんま裂界魔力のそれだっていう。


 分かりやすくこう書いているけれど、実際は嫌味たっぷりだった。教科書をよく見ておけだの、まずは自分で考えろだの、とても教師とは思えない発言のオンパレード。これがアラヒム先生だったら、質問しただけでめっちゃ褒めてくれるのに。


 フィルラドやポポルも、眠くなっているだろうに居眠りしていなかった。ミーシャちゃんも背筋がぴんと伸びていて体がガチガチ。あんな緊張した空間では、勉強できるものも出来ないっていう。


 ……今更ながら、いつも通り箇条書き項目みたいに書けばよかった。まぁ、見るのは俺だし別にいいか。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、ギルのラムレーズンをもいで遊んでいたポポル(もいだラムレーズンはヒナたちに投げて遊んでいた)が、『そう言えば、お前とギルって乳首もぎられ仲間だね。よかったじゃん』ってこっちを煽ってきた。


 ギルの野郎、『そんな、照れるぜ……!』ってこっちをちらちら見ていた。ぞっとしてしまった俺をどうか許してほしい。


 なお、元凶であるちゃっぴぃは風呂上がりほかほかロザリィちゃんにぎゅーっ! って抱き付いていた。胸に頭を埋めて大変心地よさそう。


 俺の視線に気づいたロザリィちゃん、『……パパはまだ、ダメだよ? 今はこれで我慢してっ!』ってほっぺにキスしてくれた。最高に幸せだった。


 ……いつか、俺も湯上りロザリィちゃんにぎゅっと抱き付いても許される日が来るのだろうか? いや、許される日が来たとして、その時に俺の理性は保つのだろうか? そもそもとして、幸せ過ぎて死んでしまわないのだろうか?


 やべえ、想像しただけでくらくらしてきた。耐えられる気がしない。心臓と共に、もっと精神力を鍛えて幸せに耐えられるようにしなくては。


 ギルは今日も大きなイビキをかいてぐっすりと寝ている。鼻には……精霊の腑でも詰めておこう。なんか教室の机の中に入ってたんだよね。おやすみにりかちゃんまじがんめんぱっく。

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