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159日目 創成魔法設計演習:概要とメンバー決め

159日目


 鼻にイチゴが詰まってる。そうきたか。


 ギルを起こして食堂へ。今日もまた一段と暑く、男子はみんな腕まくりしているし、女子もみんな髪をアップにして眩しいうなじをさらけ出していた。


 この光景にうなじマニアのクーラスは思わずにっこり。ふとももと違い、うなじは意識して晒すことってあまりないから、ガン見しても問題ない箇所の割りにはガン見する機会があまりないのだとか。


 とりあえず、俺もお膝の上のちゃっぴぃを髪をアップにセットしてみる。結うのと編むのを組み合わせた、ミニリカの一族風のテイストを目指してみた。我ながら良い出来。うちの子ってばすっごくプリティ。やはり素材が……いいや、俺の手にかかればこんなもんよ。


 『ちゃっぴぃってば、ずるーいっ!』ってロザリィちゃんが甘えてきたため、僭越ながらロザリィちゃんもちゃっぴぃとお揃いにしてみる。髪が滑らかできめ細やかで、まさに美髪……っていうかこの世のものとは思えないくらい。あんなにもきれいで良い匂いをする髪を触らせてもらえるだなんて、俺はきっと世界で一番幸せなのだろう。


 おそろになったロザリィちゃんとちゃっぴぃは大変うれしそうであった。ただ、なぜか調子に乗ってちゃっぴぃが『きゅーっ!』って俺の髪を適当に弄りだしたのがわけわかめ。俺のステキなヘアセットがぐしゃぐしゃ。やんなっちゃう。


 でも、ロザリィちゃんがくすくす笑いながら『パパってば、とっても可愛くてステキだよ!』ってほっぺにキスしてくれたのはよかった。これから毎日ちゃっぴぃにヘアセットを頼むのもいいかもしれない。


 ギル? 『うめえうめえ!』ってジャガイモを貪っていた。ミーシャちゃんが髪型を変えてアピールしてるのに全然気づいていない。あいつはマジでもう少し女心を学ぶべきだと思う。


 今日の授業は創成魔法設計演習。魔法陣製図の流れとなる授業で、今まで魔法陣製図の基礎及び発展内容を学んできたから、今回はより実用的に、ガチの魔道具を想定して製図を含めた一連の【設計】を学んでいきましょうってやつ。


 ある意味恐ろしいことに、前期の実験と同じく、この製図の授業も他クラスとの合同授業。ルマルマの相手はバルトラムイス。なんだかんだで授業での関わりってほとんどなかっただけに、なんかちょっと新鮮な気分。


 そして肝心の担当の先生は……ステラ先生! うっひょぉぉぉぉ!


 もうね、最高にステキだったよね。『今期もよろしくっ!』って杖をコンコンしながら出欠を取る姿もそうだし、黒板の上の方に手が届かなくて頑張って背伸びしてぷるぷる震えちゃうところも本当にキュート。真っ赤になった御顔なんてもう、国宝指定しても良いレベル。


 ただ、俺ってば合法的にガン見していただけなのに、バルトのシャンテちゃん(が召喚した土精霊)に首の後ろに土を入れられてしまった。『気付いたら体が動いていた。後悔なんて、あるわけがない』とのこと。女の子の考えることってよくわかんないや。


 さて、肝心の授業内容だけれども、今回は初回ってことでこれからの授業内容についてざっくりと触れられた。


 さっきも書いた通り、今までの製図の授業で製図の基礎や実用的な魔法要素についての製図の修練を積んだから、この授業ではそもそもの製図の目的……魔法要素の設計を学んでいくらしい。


 当然、ただ単純に【図面を描ける】、【作るものを決定する】だけでは設計とは言えない。作るものの目的に合わせていろんなことを考慮しなくちゃいけないのは確定的に明らか。ついでに言えば、そのためのノウハウだって腐るほどある。


 『例えばだけどね……モノとして同じ魔法要素や魔道具でも、それが量産品か特注品かで細かい形とかが変わってきちゃうの。シューン先生の魔法構築学とかで習ったと思うけど、量産に適した加工法があれば、その加工法に適した材料がある。これだけでもう、かなり変わってきちゃうって想像がつくよね?』ってステラ先生は素敵にウィンク。ドキドキしすぎて男子全員話の中身が頭の中に入ってこなかった。


 あと、ただ単純に作ればいいってものでも無くて、予算的なことも考えなくっちゃいけないらしい。いつぞや何かの授業で習った、能率・コスト・品質のバランスを考えて加工法や材料の選定、ひいてはそれに伴う形状や寸法の決定を行わなくてはならないのだとか。


 『消耗品かつ量産品ならね、品質はあまり気にしなくてもいい場合があるし、とーっても大事な特注品なら、能率やコストは度外視することもある。くどいようだけど、目的のものがどういう風に運用されるかで、設計は本当に大きく変わるから……ここでは一概にこれ! っていうことはできないかな』とはステラ先生。


 もしこの世に一概にこれ! と言えることがあるのだとすれば、それはステラ先生があまりに美しくて聖母なステキすぎる先生だということだろう。というか、久しぶりの先生スタイルステラ先生を見て、正気を保てた男子っているのだろうか?


 ともあれ、概要についてはこんなもん。次にスケジュールや全体の進め方についてステラ先生は教えてくれた。


 『【設計】は一人じゃ絶対できないからね! みんなで協力して創るのが大事なのっ! だから、協調性・コミュニケーション・意見の取りまとめができるようにするために、グループで一つの課題に取り組むって方式でやってもらうよ!』とのこと。マジかよって思ったね。


 当然のごとく、成績評価もこのグループで決定されるらしい。もちろん、グループでの役割なんかも総合的に鑑みて評価はされるみたいだけど、どれだけ頑張ったところで周りがあまりにも足を引っ張っていたら、最終的な評価もお察しの通りになるだろう。


 そしてこの授業は、俺たちが魔系として培ってきた様々な知識を必要とする。製図の知識はもちろん、ステラ先生がざっくり例題を話しただけで魔法構築学が出てきた。たぶんだけど、普通に触媒反応学も出てくるだろうし、基礎魔法材料学だって必要になるだろう。


 『グループ分けは、先生はみんなを信じてるから自由に決めていいよ』ってステラ先生は言っていた。一グループは原則的に五人で、評価の関係上他クラスとは組んじゃだめ。一緒に進めるのが面倒になるから、今まで他クラスと組んだ例はないらしいけれど。


 『頭の良いやつと組まないと……!』、『いや、それより協調性が……!』、『フォローすることも考えると、普通はなるべく均等に……』なんてざわざわとした声が教室に響く。やはりみんな、考えることは大体同じらしい。


 とりあえず、『よう、俺と組もうぜ』ってクーラスに声をかけてみる。クーラスは一瞬嬉しそうな顔をするも、周りにいた女子がすんげえ形相で俺のケツを叩いてきたため、一瞬で真っ青な顔になった。


 『それだけはさせない』、『過剰戦力。もっとクラスのこと考えて』、『なんで格好の機会を奪うの?』って女子に言われたのがわけわかめ。やっぱり女の子って何を考えているかよくわかんねえや。


 最終的に、



ギル

ロザリィちゃん

ミーシャちゃん

フィルラド


クーラス

ジオルド

ポポル

アルテアちゃん

パレッタちゃん



 って組み合わせに落ち着いた。どことなく俺の負担が大きそうな気がしなくもないけれど、ロザリィちゃんと一緒だから別にいいか。


 なお、クーラスは『せっかく女子にカッコいいところ見せられると思っていたのに……』ってしょんぼりしていた。『すまんな、女子の協定があるんだ。それに、実習中に間近でイチャつかれるのを見る羽目になるよりかはマシだろ?』とはアルテアちゃん。


 クーラスもジオルドもすごく納得した顔をしていたけれど、ギルもミーシャちゃんもそこまでイチャつく方じゃなくない? 


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。なんだかんだで今日は概要とメンバー決めだけで、肝心の設計テーマ決めは来週やるらしい。設計に伴う計算なんかの講義もやってくれるそうだから、意外とそこまで難しくはなさそう。さすがはステラ先生だ。


 ギルは今日もクソうるさいイビキをかいている。コイツの呑気さが本当に羨ましい。俺がいない時に見せる社交性を、俺がいるときでも見せてくれたらどんなにいいか。まぁ、ギルはギルらしくしているのが一番なんだけどさ。


 さっさと寝よう。ギルの鼻には……製図室に落ちていた木くずでも詰めておくか。おやすみにりかちゃんまじうるわしい。

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