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158日目 発展魔法材料学:概要

158日目


 オレンジキャンディがイチゴキャンディになってる。ミーシャちゃんにあげようかな?


 ギルを起こして食堂へ。今日はお楽しみパンがメニューにあったのでそれをチョイス。食べてみるまで中に何が入っているかわからないドキドキワクワクがたっぷり詰まった至高の逸品。中途半端に余ったジャムや昨日の残り物の処理とか言ってはいけない。


 俺がチョイスしたお楽しみパンの中には真っ赤なジャムが入っていた。味はラーヴァベリーだけど風味はパッションチェリーでちょっと混乱。悪くはないけど味覚でぶん殴られたような気分。


 ちゃっぴぃはロザリィちゃんとお楽しみサンドをはんぶんこして食べていた。『チョコとキャラメルが入ってる!』ってにっこり笑うロザリィちゃんがホントに可愛い。『ちゃっぴぃってば、お口汚してるよ?』ってちゃっぴぃの口の端のチョコを人差し指でさっとすくい、そのまま舐めちゃうところに宇宙の愛を超える母性を感じた。


 ちくしょう。俺もあれやってほしかった。ちゃっぴぃのくせにずるい。


 そうそう、ギルがジャガイモを『うめえうめえ!』って食っているのを眺めていたら、アエルノチュッチュのラフォイドルが絡んできた。『よぉ、ミラジフの授業はどうだった?』とのこと。


 『お前の所の担任らしい、陰険で嫌味な授業だったよ、親友』って返答したら、『俺たちは入学した最初のオリエンテーションからアレだったんだ。少しはお前らも俺たちの苦労を思いしれ』ってラフォイドルはちょう笑顔。もしかしたら、アエルノの連中の性格があそこまでひねくれ曲がってしまったのも、ミラジフという毒のせいなのかもしれない。


 とりあえず、俺たちの会話を聞いて震えていたゼクト(今日魔法流学をやるらしい)に優しく肩ポンをしておいた。『半裸になると顔を覚えてもらえるぞ』とのアドヴァイスも忘れない。ラフォイドルもゼクトに肩ポンして、『あの先公、あれでカエルが苦手なんだ。なんならうちのロベリアのブチちゃん連れてっていいぞ』ってアドヴァイスしていた。


 さて、今日の授業は発展魔法材料学。教室に行ってみたところ、やっぱり再履の先輩がいっぱい。去年の基礎魔法材料学の再履がそっくりそのままこっちに移ってきたんじゃねって思うレベル。


 『おっじゃましまーす♪』ってロザリィちゃんが俺の隣に座ってくれてちょう幸せ。混んでいるから必然的に密着する形になって心臓がヤバい。あったかいし柔らかいしいい匂いがするし、しかも時折からかって肩でどーん! ってやってくるっていうね。


 あ、ミーシャちゃんはギルの肩車に着席していた。たまたま空いている席が背の高い人の後ろしかなかったらしい。『どうせノートは後で写させてもらうから、せめて黒板をよく見ておきたいの』とのこと。戦略としては間違っていないのか?


 ある意味当然のごとく、登場したのはシキラ先生。『今回も再履の人数やべえな! 会いたかったけど会いたくなかったぜこんちくしょう!』ってノリノリ&うっきうき。『最初に言っておく。再履に人権はねえ! 人扱いされたかったら、脳ミソに中身が詰まってることを行動で証明しろよ!』って名言も。


 肝心の授業内容だけれども、最初ということもあって簡単に概要をおさらいした。『基礎魔法材料学では魔法材料の破壊挙動の基本的な所を押さえたが、発展魔法材料学ではより踏み込んで、もっと実際の現象に近いところをやっていく』とのこと。


 『文字通り、基礎が出来てなけりゃ発展内容なんてできるわけねえからな。再履の連中は基礎魔法材料学を天判定取れるくらいに復習しとけ。お前らの場合、そこまでやってようやっと二年目の連中と肩を並べられるってのを覚えておけ』ってシキラ先生は言っていた。逆に言えば基礎さえしっかりしていればそこまで恐れるものでもないらしい。


 授業内容についてはこんなもん。『どーせ初回は気合入らねえし、そのうち時間なんて欲しくても貰えなくなるから今日はこんなもんでいいだろ!』ってシキラ先生が宣ったゆえである。


 そしてシキラ先生は俺たちルマルマに向かって、『ところでよぉ、ミラジフ先生の授業どんなだったよ!?』ってちょう笑顔で聴いてきた。本当に楽しそうだった。


 とりあえず、ルマルマを代表して俺が昨日の出来事をすべて伝える。シキラ先生は腹を抱えてゲラゲラ笑い、『完全にお前らが悪ぃじゃん!』って言っていた。『普通の先生はそれくらい厳しいぜ?』とも。


 『俺はこれでもミジンコみたいな小心者だし? 優しくてフレンドリーな先生を演じることでなんとかやってるんだよ。そうでもしないといつ訴えられるかわかったものじゃねえからな!』ってシキラ先生。さらには、『ただまぁ、甘くし過ぎて舐められてるように思わなくもない。マジ悲しいぜ!』とも言っていた。この人本気で言ってるのかって思ったよね。


 ホントに優しくて小心者の先生なら、決闘を見物したいがためだけにルマルマとアエルノの両方にヤバい情報をリークしたり、知恵を授けたりなんてしないだろう。


 あ、そうそう。話しも盛り上がったので、『そう言えば、この前の飲み会の後は大丈夫でしたか?』って煽ってみる。『てめえ、あれで勝ったと思うなよ』って割とガチめの声で脅された。グランウィザードとしての迫力が半端ない。マジでちびるかと思った。


 あと、上級生に『お前が神か』って崇められた。何でも再履の上級生たちはみんな、『俺に酒で勝ったら単位をやるよ』ってシキラ先生に唆され、そして再履全員纏めてかかったのに見事に返り討ちにあったことがあるらしい。


 『三十人掛かりで挑んで負けたんだぞ、俺たちは』、『最後に残ったプライドもズタズタだよ』、『救済策として、魔法生物学のTAを言い渡された。張り切って手伝いに行ったら、【甘言に惑わされ、勝てもしない勝負に挑むような知識も判断力も無い再履】って新手の魔法生物として一年生に紹介された……』って嘆きが教室のあちこちから聞こえてきていた。あの人本当に教師という職を楽しんでいると思う。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、クーラスがうっかりグッドビールの尾っぽを踏んでしまいミーシャちゃんに泣かれていた。当のグッドビールは遊んでもらえると勘違いしたのか、クーラスのまたぐらに猛ダッシュを決め込んでいたけれど。


 『ひどいの……! うちの子に、あんまりなの……!』って涙ぐむミーシャちゃんを見て、ボロボロになったクーラスが『女の子の涙ってズルい。なんで俺こんな罪悪感覚えてるんだろ』って零していた。気持ちはよくわかる。


 ギルは今日もぐっすりと大きなイビキをかいている。鼻には……ミーシャちゃんに渡しそびれたイチゴキャンディを詰めておこう。グッナイ。

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