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142日目 ショッピングとお酒

142日目


 室内が塩っぽい。目に染みる。ちくしょう。


 ギルを起こ……す前、まだ普通にスヤスヤタイムな時間に腹に衝撃。リアとちゃっぴぃが俺のお腹にダイブを決め込んでいやがった。『きゅ!』、『今日はおでかけするよっ! 早く準備してっ!』とのこと。


 なんでこんな朝早くに……と思ったけれど、よく考えてみればマデラさんの宿だったら普通に通常業務に入っている時間。規則正しすぎる生活というのもちょっと考え物だ。


 そうそう、せっかくなのでリアとちゃっぴぃにはギルのベッドにもダイビングしてもらう。『きゅーっ!』、『起きろーっ!』ってあいつらは盛大にベッドに飛び込んでいったけど、次の瞬間に『きゃん!?』、『ぐぇっ!?』って悲鳴。ギルの腹筋が硬すぎて体をしたたかに打ち付けてしまったらしい。


 当然のごとく、ギルは普通にスヤスヤ。いくらガキで軽いとはいえ、腹にまともに入ったはずなのに。今度俺も全力で飛び込んでみようかな?


 ギルを起こした後は普通に朝食。今日は朝から贅沢にジャンボピザなる逸品をチョイス。そのデカさといったら一枚の上にポポルとミーシャちゃんが同時に乗れるんじゃないかってくらい。なんでおばちゃん、朝からあんなに手の込んだものを作っていたのだろうか?


 ともあれ、男子連中&ガキ二人で頂くことに。ケーキ奉行であるジオルドがピザカッターで切り分けてくれた。みょーん! って伸びるチーズがマジで美味しそう。香りも大変素晴らしく、食欲が刺激されまくりんぐ。


 あと、ジオルドはリア、ちゃっぴぃ、ポポルのだけサイズ大きめ&具材たっぷりな所が当たるように切り分けてあげていた。あいつのこういう優しさは本当に見習うべきだと思う。……そういやあいつ、妹がいるんだっけか?


 ギルはもちろんジャガイモを『うめえうめえ!』って貪っていた。女子組が食べきれなかったジャンボピザも『じゃあ俺食っちゃうよ!』って美味そうに『うめえうめえ!』って平らげていた。『うそ……あれ、五人分以上あるわよ……?』ってアレットが目を点にしていたけれど、ギルがピザの五人前程度片付けられないわけがない。


 朝食後はリアのリクエスト通り町に買い出しへ。メンツはリア、アレット、ミニリカ、ロザリィちゃん、ちゃっぴぃ、そして意外なことにナターシャと、そしてステラ先生(!)。ひゃっほう。


 が、悲しいことに『ちょっとこっちは用事があるから別行動で』ってナターシャがロザリィちゃん、ステラ先生を連れて行ってしまう。『ミニリカとアレットとリアでもいいだろ』って文句を言ったのに、『まだいくらでもバラせることあるんですけど?』ってだいぶストレートに脅された。


 『たまにしか会えないんだから、意地張らないで素直にサービスしてあげなよ?』、『せ、先生もちょっとナターシャさんに個人的に聞きたいことがあるから……!』ってロザリィちゃんとステラ先生に頭をぽんぽんしてもらえていなかったら、たぶん俺は悲しみのあまりその場で泣き崩れていただろう。


 ともかく、その後はミニリカ、アレット、リア、ちゃっぴぃと行動する。迷子になると困るからちゃっぴぃを肩車し、リアと手をつないだ……のは良いんだけど、終始ミニリカがめそめそしていたのが頂けない。


 『私だけ手を繋げないのは嫌なのじゃあ……!』って言ってたけど、なんであいつの中でナチュラルにアレットが候補から消えているのか。


 肝心の内容だけれども、アレットのリクエストにより雑貨その他アクセサリー類を見ることに。『この辺、割と珍しくて質が良いものが多いのよ?』とのこと。近くに魔法学校があるからか比較的レアな材料が多く流通しているらしく、雑貨に限らず全般的に珍しい品ぞろえをしているんだって。


 『ほう……なるほど確かに……』ってミニリカもなんかチャラチャラした鎖的なアクセサリーを眺めていた。『でも明らかにボッタクリだよね!』ってリアはちょう笑顔で露店のアクセサリーの粗を突きまくっていた。テッドの悪い癖が移ったのだろう。目利きが出来るのはいいとしても……あいつホントろくなことしねえな。


 ショッピング中、『せっかくじゃし食べ歩きしようぞ!』ってミニリカがワガママを言い出したため、みんなでアイスを食べることに。しかも意外なことに、『荷物持ちしてくれたんだし、ごほうびね?』ってアレットが奢ってくれる運びとなった。


 が、あの野郎、俺がどれだけ訴えても一段のアイスしか認めてくれなかった。『ミニリカは普通に三段アイス奢ってくれるし、あのアバズレでさえ俺が泣いて喚いたら二段のを奢ってくれるぞ』って言ったのに、『良いから言う通りにしなさい。奢ってもらえるだけありがたいと思いなさいな』って軽くいなされる。


 結局ミニリカが三段(自腹)、俺が一段、アレット、リア、ちゃっぴぃが二段のアイスとなった。『長女は自腹、長男は一段にさせるとか、ひでえかーちゃんもいたもんだなあ! ま、子沢山の家庭なんでどこもそんなもんだから気にしなさんな!』って肩をポンポンしてくれた屋台のおっちゃんだけが俺の癒しである。


 ちなみにそのおっちゃん、直後に『こんな大きな子供を持った覚えはないんですが? ……いったい私がいくつに見えたのか、教えてくださる?』ってアレットに静かにキレられていた。アレットの片手がアイスで塞がれていなかったら、おっちゃんの体にはエグめの鞭の痣が出来ていたと思う。


 なお、例によって例のごとく、ミニリカは食べあいっこを強要してきた。もちろんリアもちゃっぴぃも互いのアイスを食べあいっこし、そして俺のアイスから『おいしーっ♪』、『きゅーっ♪』ってバカでかい一口を持っていきやがった。あいつらマジ何なの。


 そしてやっぱり、ミニリカはちょっぴりしか俺のアイスを食べていかない。『前から言っとるが、私のお口はちっちゃいのじゃ』ってこういうところだけカマトトぶるから困る。普段の宴会の時はバカでかい口で肉にかぶりつくくせに。


 あと、『ほれ、もっと食べんか!』って自分のアイスを執拗に俺(とちゃっぴぃとリア)に食わせようとして来たのも困る。俺の口はあんなに開かないし、胃袋にだって限界がある。なにより、あんなにアイスを食べたらぽんぽんだって痛めてしまう。


 ホントにどうして、あのババアロリは自分で食べられる以上の量の物を買うのだろうか。俺、なんだかんだで毎回結構な量のミニリカの食べ物を請け負っている気がする。


 アイスの後は本日のメインイベント(?)。なんとリアの野郎が『水着が欲しいの!』とか言い出しやがった。昨日の水遊びを経て本格的な水着に憧れを抱いてしまったらしい。


 『せっかくだし、お兄ちゃんに選ばせてあげよっか?』ってあいつが言ってきたので、『お前まだ全裸で泳いでも問題ない年齢だろ』って言っておく。直後にケツをひっぱたかれた。本当にこの世は理不尽だ。


 結局、カンカンに怒ったリアは俺を置き去りにして水着屋さんへと行ってしまった。まぁ、別にガキの水着選びなんて面白くもなんともないからこれについてはここまでにしておく。


 ちなみに、ちゃっぴぃはお腹いっぱいになったからか、その時は俺の背中でスヤスヤと寝ていた。また前みたいに駄々をこねられなくてホッと一安心。その後も学校に戻るまでずっと寝ていたっけ。


 なんだかんだで夕方ごろに学校に戻る。すでにロザリィちゃんたちも戻ってきていた。『なんか面白いものでもあった?』って聞いてみれば、なぜかナターシャが『おい、ちょっと付き合え』って酒瓶を片手に絡んできやがった。


 『あんたのお祝いのお酒、まだ飲んでなかったよね? ……冒険者の宿屋の倅なんだから、ちったぁ楽しませてくれるよなぁ?』とのこと。どうやらあいつ、今日は俺の祝いの酒を仕入れに行っていたらしい。ステラ先生とロザリィちゃんからいろいろ情報も仕入れたのだろう。持っていた酒瓶、高級そうかつ今までに飲んだことのないやつだったよ。


 『あっ! ずるい、私も!』ってミニリカもやってきたため、その後は右手にアバズレ、左手にババアロリの体勢でお酒を飲むことになった。『ほら、おねえちゃんがお酌してやるんだから一気に飲め』、『くぅ──……っ! こうして祝いの酒を共にするの、楽しみにしておったんじゃあ……!』ってあいつらは楽しそう&嬉しそうだったけれど、ただ単に酒を飲むダシに使われていやしないだろうか? 俺、出来ればステラ先生かロザリィちゃんにお酌してほしかったんだけど。


 なんとも意外なことに、お酒を飲んでいるというのに二人の雰囲気がいつもと違う。いつもならもっと冒険者らしくアブナイおくすりでもキメてんじゃねーのってくらいに乱痴気騒ぎするくせに、なんかこう、デキるオトナなおねーさんが高級な酒場で静かにお酒飲んでるって感じだった。


 『あんたも無駄にでっかくなったよね……はは、いっちょまえにグラスもってやがる』、『お酌されることは何度もあったが、酒をお酌するのはなんか新鮮じゃの!』って、ナターシャもミニリカも酔っぱらうことなくお酒をちびちび。いつもなら魔法をぶっぱなしたりヘッドロック決めてきたりするのに。


 ちょっぴりオトナ(?)なセンチメンタルな気分になったのか、その後は軽く思い出話なんかをしつつお酒を飲む。俺ってばなんだかんだで酔いつぶれた二人を介抱する覚悟を決めていたのに、全然そんな雰囲気にはならず、普通に和やかに会話している間には酒が尽きた。


 『おねえちゃんとこうしてお酒飲むなんてそうそうできないことなんだから、感謝しろよぉ?』、『なかなかの飲みっぷりだったのう! 次はもっと別の酒の楽しみ方を教えてやるからの!』……なーんて言って、二人は去っていく。


 なんだか微妙に肩透かし食らった気分。……そういえば、なんだかんだで大人っぽくお酒を飲んだのってこれが初めてだったのか? 今まで俺、普通に酒を飲んでいる人を見たことが無かったし……酒盛りと言えば、飲んで脱いで潰して騒いでケンカしてゲロするところまでがセットだってピュアな頃から刷り込まれている。


 だからきっと、【お話でしか聞いたことのない酒盛りを、生まれて初めて行った上に相手がヤバい奴の筆頭達だった】って現実を受け止めきれていないのだろう。まったく、俺もだいぶ甘ちゃんになったものだ。


 風呂入って雑談して今に至る。なんだかんだで一日荷物持ちで炎天下を歩かされたからかだいぶ疲れた。無駄に日記も長くなってしまったし、今日はもうさっさと寝ることにしよう。


 ギルは今日もぐっすりと健やかにクソうるさいいびきをかいている。昨日は塩を詰めたから、今日は砂糖を鼻に詰めておく。おやすみなさい。



※燃えるごみは捨てる。魔法廃棄物は捨てない。

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