141日目 ジジイとガキの水遊び
141日目
ギルの頭がホワイトモヒカン。こいつはちょっと予想外。
ギルを起こして食堂へ。なんだかんだで夏季特別講座も終わり、そして暦上は普通の休みだからか、夏休みモードに戻っているやつが多数。食堂にはあまり人はおらず、そして今日も今日とてクソ暑い。
あ、でも、老害らしく早起きなミニリカとルフ老はいた。この時ばかりはミニリカのいろんなところが出ている涼しげが服装がうらやましい。ルフ老の涼しげなヘッドはノーセンキューだけれども。
『せっかくじゃ、一緒に朝餉を取ろうぞ!』ってミニリカが変に甘えてきたのがわけわかめ。ババアロリは情緒不安定なのか、こうして時折妙に甘えたになるから困る。『見た目と年齢がちぐはぐで、本人の性格がこれじゃからな。拗らせるのも不思議は無かろうよ』ってルフ老はコメントし、そして盛大にケツを蹴り上げられていた。
とりあえず、『どうだ、膝にでも載せてやろうか?』ってミニリカに言ってみる。『なんじゃ、私のお膝は卒業したのかえ?』って妖艶に微笑み返された。そんなことを言っている間に『きゅーっ♪』ってちゃっぴぃが俺のお膝にイン。『隣で我慢してやろうかの』ってミニリカが俺の隣(普段はロザリィちゃんのポジション)につきやがった。
あえて書くまでも無いけれど、その後は隣のババアロリと膝の上のワガママお姫様のためにひたすらリンゴをグリフィンさんにする地獄を迎えることになった。あいつらむいた傍からひょいひょいぱくぱく喰いやがって。『それ俺この前予約しといたよね』ってポポルまでつまんでいくしさぁ。
まぁでも、『いいこいいこ♪』ってロザリィちゃんが頭を撫でてくれたのはよかった。『パパもちゃんと食べなきゃダメだぞぉ?』ってリンゴを『あーん♪』してくれたのもよかった。出来ればおはようのキスもしたかったけれど、隣でなんかミニリカが複雑そうな顔をしていたので機会は訪れず。相変わらずババアロリの考えることはよくわかんねえや。
ちなみに、今日もギルは『うめえうめえ!』ってジャガイモを貪っていた。珍しくエッグ婦人が六匹のヒナたちと一緒にギルのジャガイモの大皿にヘドバンしていたことをここに記しておく。なんでかあいつら、ギルのジャガイモを食べるときだけやたらとワイルドになるんだよね。
暑くてやる気がでなかったため、午前中はぼんやりと過ごす。アレットとアレクシスは二人でどこかに出かけたらしく、リアが一人で暇そうにしていたのであずかることに。
で、どうやって時間を潰そうかな……ってぼんやりしていたところ、ジオルドがアリア姐さんに水やりをしているのを発見。アリア姐さんは例の日傘を差しながら、ジオルドのぞうさんじょうろの水を浴びて大変心地よさそう。
『前から気になってたけど、あれなんなの?』ってリアが聞いてきた。『いくらでも甘えさせてくれる気の良い姐さんだぞ』って言ってみる。『わーいっ!』ってリアはアリア姐さんに飛びついていった。
アリア姐さん、「あら、可愛い娘ね♪」と言わんばかりににっこりと笑い、飛びついてきたリアをぎゅっと抱きしめる。『ふぉぉ……! ステラ先生並みの安心感……!』ってリアの言葉に、俺ってば思わず歯ぎしりしてしまったよ。
ちなみにリアは、『ママもこれくらいあったらよかったのになあ』って言っていた。子供は本当に残酷だと思った。
その後はなんやかんやで水遊びタイムに入っていたと思う。『しょうがないな……』ってジオルドが虹の如雨露を具現魔法で具現化し、アリア姐さん、リア、ちゃっぴぃ、ヒナたちにぶわーっ! ってかけて遊んであげていたっけ。
リアとちゃっぴぃは輝く水を頭からかぶって遊んでいて、たいへん無邪気で和やかな光景が広がっていたと言えよう。
ただ、アリア姐さんはヤバかった。濡れた髪(?)とかうなじとか胸とかおみ足とか、いつも以上に色気が凄まじい。見せつけるように日傘を持ってポーズを取ってくるところなんて、子供のリアがかぁっと真っ赤になるくらいだったよ。
なんとなく、ジオルドに『水のあげすぎは大丈夫なのか?』って聞いてみる。『夏場はやり過ぎなくらいがちょうどいいっぽい。すぐ肌の表面が乾燥してくるんだよな……』って言っていた。
ただ、こうしてちょくちょく水をあげると例の葉焼けの薬が流れてしまうために、回復が少し遅れているのだとか。『水を上げないわけにはいかないし……日傘じゃマジで気休めにしかなりそうにない』ってジオルドは言っていた。
エッグ婦人の卵詰まりといい、ちゃっぴぃの発情期といい、ウチの使い魔たちって持病を抱えている奴が多すぎやしないだろうか? 他のクラスの使い魔たちの様子が気にかかる所だ。
なんだかんだで昼過ぎくらいまで水遊びさせていたような気がする。途中でルフ老までやってきて、『そら、特別じゃぞ!』って【夢色泡珠】を発動。デカくて程よく弾んで飛び乗っても割れないという三拍子そろった綺麗なシャボン玉が大量に出現。リアもちゃっぴぃも大喜びで遊んでいたっけ。ヒナたちもヘドバンしてシャボン玉を突き割りまくっていたよ。
なんとなく俺もシャボン玉に飛びついてみたけれど、これが中々に気持ちよかった。感触は意外とモチモチしていて、肌にぴとっと吸い付く感じがクセになりそう。ぽよんぽよんとした弾力は懐かしい何かを思い出しそうになる。ひんやりしていたのもポイントが高い。
……でも、俺が子供の時はルフ老はあんなのやってくれなかった。やってくれたのはせいぜい【昇天翼龍】で小型のワイバーンをひたすら地面から打ち上げてくれたくらい。やっぱりあのジジイ、女の子に甘いらしい。
水遊び終了後、ちゃっぴぃもリアもアリア姐さんもぐしょぐしょだったのでそれぞれタオルで拭いておいた。普段から全裸なちゃっぴぃとアリア姐さんはともかくとして、リアはそのままだと風邪を引きかねなかったのでちゃっぴぃの寝間着と化している舞踊衣装を着させておく。サイズフリー(?)な服はこういう時に便利だから好きだ。
午後も適当に外で遊ばせようと思っていたところ、唐突に天気が崩れて大雨が。遠くの方で雷が鳴る音も。夏の天気は変わりやすいから困る。
そんなわけでガキ二人には室内でトレーニングに勤しむギルのホワイトモヒカンで遊んでもらった。ただ、せっかく俺が『いくらでも引っ張ったり三つ編みにしたりしていいぞ!』って言ったのに、あいつら二人ともすぐに飽きやがった。まぁ、ギルが嬉しそうだったから良しとするか。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、フィルラドがずっと『師匠……! 元の師匠に戻ってくださいよぉ……!』ってルフ老に訴えていたのが気にかかる。『あんた言ってたじゃないか……! いつか学校に来て、合法的に楽園を楽しみたいって……! 夢だったんじゃないのかよ……ッ!』って肩を揺さぶって問いかけてもいた。いったいどれだけクズな師弟だったんだと思った瞬間だ。
一応、ルフ老は『幼子が無邪気なままに笑う姿を見守る。未来ある若者たちが成長する様を見守る。これ以上に年寄りとして幸福なジャスティスがあるのかね? ……まぁ、若人の気持ちもわからんでもないが、そういうのはほどほどにな』って人生の先達みたいな含蓄のある言葉を語っていたけれど……。
『……彼奴の訴えを聞いていると、なぜか頭に鈍い痛みが』とも言ってたんだよね。冗談抜きに恐ろしいよ。
ギルは今日もぐっすりすやすやと寝こけている。なんかちょっぴり眉間に皺が寄っている様に見えるのは、きっとミーシャちゃんにホワイトモヒカンで遊んでもらえなかったからだろう。なんかミーシャちゃん、『それは違うの』ってだいぶそっけなかったんだよね。
まぁいい。ギルの鼻には……シンプルに塩でも詰めておくか。おやすみにりかちゃんちょうかわいい。