138日目 学校見学
138日目
ギルが汗だく。……夏だしこんなもんじゃね?
ギルを起こして食堂へ……行く前にナターシャのヨダレ枕カバーを回収しに。意外なことに、『身内の恥をおねーちゃんたちに任せるわけにはいかないから』ってすでにリアが回収しておいてくれていた。どうやらこいつ、昨晩はロザリィちゃんのところで寝ていたらしい。リアのくせにマジずるい。
枕カバーを処理した後は普通に朝食。今日は特別講座も無いからか、昨日や一昨日に比べれば人も少なめ。そしてやっぱりというか、老害らしく早起きなミニリカとルフ老は普通にいた。
『せっかくじゃし、朝餉くらいはいっしょに取ろうぞ!』ってミニリカが俺の隣に座ってきたのがわけわかめ。そこはロザリィちゃんの場所だというのに。しかもあの野郎、なぜだか『ほれ、久しぶりに「あーん♪」してやろうぞ!』ってべたべたしてくるしさあ。
老い先短いババアロリなのだ、周りにクラスメイトがいないなら乗ってやるのもやぶさかではないけれど……みんなの前でああも露骨に子供扱いするのはホントやめてほしい。まぁ、優しい俺は付き合ってやったけどさ。
一応書いておく。ミニリカが俺に執拗に『あーん♪』してきたのは目玉焼きの白身だった。そして『おぬしにはこっちじゃの!』ってロザリィちゃんのお膝の上のちゃっぴぃにはイチゴを『あーん♪』していた。ちゃっぴぃの隣でちゃっかり構えていたパレッタちゃんとミーシャちゃんにもイチゴを『あーん♪』していた。その優しさをなぜ俺に向けてくれないのか。
当然のごとく、ギルは『うめえうめえ!』とジャガイモを貪っていた。『おもしろーい!』ってリアはギルの大皿のジャガイモをギルの口の中に放り投げて遊んでいた。構ってもらえてギルは嬉しそうだった。そしてルフ老が『平和でいいのう……』ってその光景を好々爺スマイルを浮かべて和やかに見ていた。違和感しかない光景だと思ってしまった俺はおかしいのだろうか?
朝食後は普通にクラスルームでゆっくりする。今日も暑くてあまりやる気が起きなかった故である。それに、休めるときに休んでおかないと体がもたない。夏季講座だってまだあと二日もあるのだから。
ぼんやりと俺専用ロッキングチェアで揺られていたところ、ようやっとナターシャ、アレット、アレクシスが起き出してきた。ナターシャはいかにも寝起きですよって感じのツラで、そしてアレットとアレクシスはなぜだか妙に髪が乱れている。
一応アレクシスに『妙な真似はしてないだろうな?』って確認を入れたところ、『限界ギリギリの健全なイチャイチャしかしてねえよ』と返される。うっかりその発言を聞いてしまったアルテアちゃんがかぁっと真っ赤になっていたっけか。
『限界ギリギリ……ギリギリって……!?』、『や、でも、夫婦なんだし……』、『いったいいつ……? どこで……?』ってアルテアちゃんはブツブツと呟く。言われてみれば、今日はアレットもアレクシスも寝所が別だ。隙あらばイチャイチャするとか、あいつらの頭の中ってどうなってるのだろう。
さて、そんなこんなをしていたところ、アレットが『悪いんだけど、ちょっと学校を案内してくれないかしら?』等と言い出した。前々からどうして講師でもないのにアレットとリアがくっついてきたのか不思議に思っていたけれど、どうもリアの将来を決める一環として魔法学校の見学をしたかったのだとか。
『武系の道に進むのかなってなんとなく思ってたけど、あなたの話を聞いているうちに魔系の方にもかなり興味が出て来たみたいで……でも、親としてはあなっ……魔系の道に進ませるのはだいぶ不安というか……だから、一回この目で見たほうが良いかなって』ってアレットは言っていた。一瞬口ごもった意味を問い質さなかった俺ってマジ優しくね?
そんなわけでリア、アレットを引き連れて学校探索。ロザリィちゃんとちゃっぴぃが一緒なのはもちろん、なぜかミニリカまでついてきた。『リアは娘みたいなもんじゃし別に良いじゃろ……!?』とのことだけれど、年齢的に言えば孫じゃないだろうか。
一番最初に寄ったのはステラ先生の所。今日も麗しくてマジ素敵。ノースリーブのサマースタイルが堪らない。『じゃあ、先生も一緒に案内するねっ!』ってにこって笑うところがもう本当に女神。くらくらしちゃいそう。
その後は図書館、畑、実験室、教室、グレイベル先生の所……などなど、無難なところを巡っていく。ただ、授業期間外だから閑散としていて正直見ていて面白くはなかった。
あと、やっぱりというか『魔系のことはよくわからないけれど、ちょっと設備が古すぎない……?』ってアレットには言われてしまったっけ。『よ、予算がしょっぱいんですぅ……!』ってステラ先生は恥ずかしそうにしていたよ。
なんだかんだでリアのお気に入りはクラスルーム(ルマルマ)、食堂、風呂場だった。『マデラさんの宿並みの安心感!』とのこと。場所が場所だけに雰囲気が似ているからだろうか。あいつにとってはマデラさんの宿が事実上の実家なわけだしね。
ロフトにてリアにルマルマの使い魔(エッグ婦人、ヒナたち、ヴィヴィディナ、ちゃっぴぃ、アリア姐さん、ギル)と遊ばせていたところ、「みゃー……」っていつぞやのにゃんこがやってきた。マジでこいつどこから入り込んできているんだろうね?
『この子、ウチの子にしてもいいっ!?』ってリアはにゃんこを抱きしめながらキラキラ笑顔。このにゃんこ、やっぱり男よりも女に懐く傾向があるらしい。ミーシャちゃんが見たら嫉妬の炎が燃え盛るような勢いでリアに甘えていたっけ。
とりあえず、『お前にはまだ早い』と言っておく。俺だって使い魔を持てたのはつい最近なのだ。リアに使い魔を最後まで面倒見られる能力があるとはとても思えない。ガキが一時の気の迷いで無責任なことするんじゃないってマデラさんだってガチギレケツビンタするに決まっている。
ギルは『誰の使い魔でもないみたいだし、別にいいんじゃね?』って言っていた。その直後ににゃんこが「ふーッ!」って怒り狂い、ギルのケツを執拗にひっかいていた。爪とぎとしてはなかなか悪くないケツだったんじゃないかと思う次第。
おやつの時間ごろ、しょうがないので秘蔵のハゲプリンを振る舞うことに。甘いものを切らすとナターシャがなにをしでかすかわからないし、ミニリカが妙に寂しそうにしていた故である。
『──くん、素直じゃないよねえ?』ってロザリィちゃんに脇腹をつんつんされたのが嬉しくもあり恥ずかしくもある。あと、『おいしーっ!』って嬉しそうにハゲプリンを食べるステラ先生が最高に可愛かったです。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。なんだかんだで今日はそんなに大きなイベントは無かったように思える。精々が風呂上がり後にミニリカとアレットからアルテアスペシャル美容液の作成を依頼されたことくらいだろうか。今日改めて女子たちから分けてもらって使ったらしいんだけど、やっぱりいつものそれよりも性能がダンチでほしくなってしまったらしい。
『アンチエイジングのためじゃ。もはや手段も過程も問わぬ』、『非合法のヤバいブツが材料って聞いたけど……筋やケジメ的には問題ないんでしょ? なら、私としては問題ないわ』とのこと。
ババアロリと人妻なんだからもう気にする必要もないだろ……って思っただけなのに二人ともにケツを引っ叩かれた。これだから老害とヒステリーは困る。
ギルは今日もぐっすりすやすやと腹を出して大きなイビキをかいている。そして今日はちゃっぴぃもリアも俺のベッドにもぐりこんできた。思えばこいつら、夜な夜なよそ様のベットを渡り歩いていやしないだろうか。ナターシャのアバズレが移ったか?
とりあえず、寝る前に二人ともしっかりトイレに行かせたから大丈夫だろう。顔面パックモンスターにも遭遇しなかったし、心配することは何もないはずだ。
ギルの鼻には……アレクシスが拾ってきたセミの抜け殻でも詰めておく。なんかあいつ、今日ポポルたちと外に遊びに行ってたらしいんだよね。グッナイ。