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131日目 ノスタルジックデート

131日目


 ギルのタオルケットがハート模様。ミーシャちゃんにあげたら喜びそう。


 ギルを起こして食堂へ。朝食は朝からカルボナーラをチョイス。卵の旨味とピリリとした胡椒の刺激がなんともステキ。シンプルながらも後を引くあの感じ、なかなか侮れない。


 ギルは今日も『うめえうめえ!』ってジャガイモの大皿を平らげていた。いつもよりちょっと離れたところに座るロザリィちゃんが『ほぇー……』って感じで眺めていてめっちゃかわいかった。


 しかもロザリィちゃん、ギルを眺める自分を眺める俺に気付いたのか、にこって笑ってひらひらと手を振ってくれた。ロザリィちゃんマジプリティ。


 朝食後はなんとなく……そう、なんとなく俺専用ロッキングチェアで過ごす。悪夢椅子はなぜかちゃっぴぃをお膝に乗せたアルテアちゃんとフィルラドが占拠していたし、ソファはパレッタちゃんが全力で寝そべっていた故である。


 手持無沙汰で暇をしていたら、『──くん、ちょっといいかな?』ってロザリィちゃんに声をかけれらた。『ちょっとお菓子を作りたいの。──くん、お菓子作りが得意だって聞いたから……手伝ってくれる?』とのこと。


 全力で頷いたら、『ありがとうっ!』って手をぎゅっとされた。一瞬で俺のお顔が真っ赤っか。ついでに心臓ドッキドキ。赤くなったの、絶対バレた。


 ともあれ、さっそくお菓子作り開始。作るのは無難にクッキーがいいとのこと。どんなフレーバーが良いのかと聞いてみたところ、『──くんは、どういうのが好きなの?』と聞き返されてしまう。


 『どれも好きだけど、しいて言うならチョコチップ入りかラングドシャかな』って返答すれば、『じゃあ、チョコチップを作ろ!』ってにこって微笑まれた。幸いにして材料は十分にあったのでそういうことに。


 いやはやしかし、ロザリィちゃんと一緒にクッキーを作ることのなんと楽しいことか。クッキーの型抜きをするだけでもあれだけ楽しかったのなんて、もしかしたら生まれて初めてかもしれない。


 クッキー作っている途中に砂糖の袋を取ろうとしたところ、同じく砂糖の袋を取ろうとしたロザリィちゃんと手が重なった。『ご、ごめん!』、『あっ、わ、私も!』ってお互い慌てて離したけど……出来ることなら、もっと握っていてほしかった。


 あと、悲しいことが一つだけ。なんとなく『そう言えば、どうしていきなりお菓子作りをしたくなったの?』って聞いたら、『……その、ね? 好きな人が、お菓子が好きで……特に、チョコチップのクッキーが好きなの』ってはにかみながら言われてしまった。


 あの時の照れるように笑うロザリィちゃんの表情を、なんと表現すればいいのか。あ、この子マジで恋してるなって、誰もがそう認めるくらいに眩しい笑顔だったの。絶望の宣告をされたはずなのに、冗談抜きに見惚れてしまったよ。


 そんなこんなでクッキー完成。焼き立てほやほやちょういい香り。『いいにおーい!』ってお鼻をすんすんさせるロザリィちゃんが最高に可愛い。クッキーなんて気にならなくなるレベル。


 焼き立てクッキーの一部を、ロザリィちゃんは丁寧にラッピングしていく。愛しの彼にプレゼントするらしい。『えへへ……でも、ちゃんと渡せるかなぁ。……勇気、出るかなぁ』ってちょっと自信なさそうにしていたので、『キミからクッキーを貰えるなんて、相手はとんでもない幸せ者だよ。俺が保証する』と励ましておく。


 『もしも相手が受け取ってくれなかったら教えてほしい。全力でそいつをぶん殴るから』ってウィンクしたら、『……応援してくれてありがとっ! もしも、その……受け取ってもらえなかったら、代わりにこれ、貰ってくれる?』って言われた。全力で頷いておいた。


 ラッピングも終わり、出来たクッキーをクラスのみんなに振る舞おうとしたところで『お……おやつ、してる?』ってステラ先生がやってきた。クッキーの匂いにつられてついつい遊びに来ちゃったらしい。


 『もちろん、先生の分もたっぷりありますよ』って声をかければ、『やったぁ!』ってぴょんぴょこ跳ねて喜んでくれた。そんなステラ先生マジ女神。


 美味しそうにクッキーを頬張るステラ先生を見つめていたら、誰かに足を軽く踏まれた。あと、ロザリィちゃんが『んっんー!』ってなんかむせていた。背中をさすってあげ……るのはさすがにレベルが高かったので、無難に水を渡しておく。なんか小さくごにょごにょ言ってたけど、アレなんだったんだろ?


 割とどうでもいいけど、アリア姐さんの傘がとうとう完成したらしい。おやつの時間過ぎ頃にジオルドがお披露目していた。ちょっと大きめな真っ白なパラソル。石突きと持ち手には俺たちが採掘した石が使われていて重厚かつ煌びやか。持ち手の所にはストラップ的なアクセサリーも。なんかお貴族様のご令嬢が持ってそうなくらいに上品な仕上がり。さすがは匠ジオルドだ。


 「ありがと、ダーリン♪」と言わんばかりにアリア姐さんは傘を片手に嬉しそう。そのまま全力の愛をこめてジオルドを抱いていた。『おーおー、さすがはジオルドさんですなぁ』、『いやはや、うらやましいですわ。とても真似できませんわ』って男子の大半が煽っていた。せっかくなので俺も煽っておいた。


 夕飯食って風呂入った後の雑談中、悪夢椅子でぼんやりしていたら『お隣お邪魔するね?』ってロザリィちゃんがやってきた。風呂上がりのネグリジェ姿でなんかぽかぽかでふわふわしている。破裂しなかった俺の心臓マジすごい。


 『どうしたの?』って聞いてみれば、『……これ、受け取ってください』って……


 ──丁寧にラッピングされたクッキーを手渡された。


 いやもう、一瞬何が何だか信じられなかったよね。真っ赤になってはにかむロザリィちゃんは最高に可愛かったし、しかも微妙に不安だったのか、手が少しだけ震えているのを見た時なんてもう、ロザリィちゃんが愛おしすぎて他の何も考えることが出来なかったよ。


 もちろん、受け取る。『キミに伝えたいことがあるんだけど、聞いてくれますか?』って問いかければ、ロザリィちゃんってば無言でこくんと頷いた。


 『大好きです。世界で一番愛しています。どうか俺の恋人になってくれませんか』って伝える。『……よろこんで!』ってロザリィちゃんはぱあっと笑顔。おまけにほっぺにキスまでしてきた。天国はここにあった。


 『はー……たまにはこーゆーデートもいいねぇ……!』ってロザリィちゃんは嬉しそう。一応、ご要望に応えることは出来たらしい。『なんかすっごく初々しい気分!』ってかなりの上機嫌。後はもう寝るだけだというのに、『あーん♪』ってチョコチップクッキーの食べさせ合いっこまでしてしまった。


 途中、一日中我慢して辛抱堪らなくなったちゃっぴぃが『きゅーっ!』って俺たちに突撃してきたけれど、我らがおかんのアルテアちゃんがさっと後ろから抱き上げる。『ごめんな、今日だけはカンベンしといてやれな』って頭を撫でてあげていた。


 夕飯食って……じゃない、ロザリィちゃんにおやすみなさいのキスをして今に至る。純粋なイチャイチャはここ最近のデートよりも少ないとはいえ、なんか今日の充実感は凄まじかった。初心を思い出したというか、あの甘酸っぱいドキドキを思い出したというか……普段の熱々なイチャイチャもいいけれど、やはり定期的にこういう懐かしのデートはしていきたいところだ。


 ギルは今日もその鍛え上げられた腹筋を惜しみなく晒しながらぐうすかと寝こけている。そろそろこいつも自分からミーシャちゃんをデートに誘うべきだと思うんだけど、そこのところマジでどうなんだろ? こいつからミーシャちゃんを誘ったことってあったっけ?


 まあいい。ギルの鼻には……うっかり床に落としてしまったチョコチップクッキーの欠片でも詰めておこう。ネズミの餌になるよりかはマシだろう。おやすみ。

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