130日目 設備メンテのバイトとプチランチデート
130日目
鼻の穴いっぱいにオウル・アイが。綺麗だったけど不気味だからトイレに流しておいた。
ギルを起こし、ちゃっぴぃをお姫様抱っこしながら食堂へ。やっぱりふかふかのベッドで寝心地が良かったのか、朝飯の時間であってもちゃっぴぃは『きゅう……』ってとろんとした眠そうな目をしていた。男連中に至っては起きてすらいないらしく、アルテアちゃんが『ジョギングのコース、もっとハードにするべきか……?』って真剣に検討していたっけ。
朝食はシュガートーストをチョイスする。優しくシンプルな甘さが後を引く逸品。寝ぼけ眼のちゃっぴぃも一口食った瞬間に『きゅーっ♪』って覚醒。そのままけっこうな量を『あーん♪』させてきやがった。
あと、大きめサイズのシュガートーストをミーシャちゃんとはんぶんこするロザリィちゃんが最高に可愛かった。互いに食べさせ合いっこ(?)していて、『あーんっ♪』って齧りついた瞬間の笑顔のなんと素晴らしいことか。直後にこっちに気付いて顔を赤らめるところも最高にキュート。『しーっ!』ってくちびるに指を当てる仕草とか、もうマジで心臓が破裂するかと思った。
ギル? 普通に『うめえうめえ!』ってジャガイモを食ってたよ。今日はグリル、ソテー、マルヤキもジャガイモの山にヘドバンして食っていたっけ。よく食べるのは良いことだと思った。
さて、午前中は何をしようかな……なんて思っていたら、『──くん、指名依頼がきてるよー!』って私服姿ステラ先生がやってきた。ひゃっほう。
なんでも、いつぞやの飲食店から設備メンテの依頼が来たらしい。言われてみれば、最後にあそこのメンテナンスをしたのは……たしか、この前の春休みの直前。半年ちょいくらい前だと考えれば、まぁ不思議はないだろう。
『よかったらロザリィちゃんも来てほしいって書いてあるよ?』とはステラ先生。『行く!』って即答するロザリィちゃん。『きゅ!』って自慢げに俺にひっつくちゃっぴぃ。さすがにバイト先には連れていけないのでアリア姐さんに預けることにした。
ホントは私服姿ステラ先生とお話を楽しみたかったけれど、そうも言ってられないのでその後は二人で現場へと赴く。『ひさしぶりだねー! 元気そうでなによりだよー!』ってシェフ兼オーナーの眠そうなおねーさんが迎えてくれた。すでに仕込みを始めているようで、美味しそうなスープの香がぷんぷん。『お、おなか鳴っちゃいそう……!』ってあわあわしているロザリィちゃんがとてもかわいかったです。
とりあえず、例の調理器具の触媒に魔力を補充していく。器具をバラしているときに気付いたけれど、魔法回路実験で見たことのある魔法回路が随所に見受けられた。やっぱりあの授業、本当に大事な基本的なものを扱っていたらしい。あるいは、この魔道具が単純な造りをしているだけかもしれないけれど。
知識がついたからか、その機能や構成もある程度は理解することが出来た。身近にあるわかんなかったものがわかるようになるってちょっと楽しい。
ただ、ロザリィちゃんはそうでもなかったっぽい。『うぇ……っ!』って魔法回路を見た瞬間に真っ青になり、眼に涙が。トラウマになっているのだろう。とりあえず無言で抱き締めて背中をさすっておいた。
『……仕事してくれるなら文句言わないけど、あんまりどうどうとイチャつかないでほしいよー』っておねーさんに言われてしまった。俺たちのアツアツっぷりは一般人にはちょっと刺激的過ぎたかもしれない。
その後もガンガン触媒に魔力を込めていく。雑談しながらだったとはいえ、さすがにこの程度の作業に二年次の魔系がミスなんてするはずもない。俺のメンテがしっかりしていたからか、経年劣化や動作不良を引き起こしそうな魔法回路も見受けられず。せいぜいがちょっと魔力で補強したくらいで、マジでこれと言って問題が無かった。
なんだかんだで予定よりだいぶ早い時間に作業終了。終了の旨を告げたところ、『お昼過ぎまで待っててくれれば、まかないを用意するけど……どうするー?』ときかれたので、全力で首を縦に振っておく。『ちゃっぴぃには悪いけど、久しぶりに二人きりでランチだね!』ってロザリィちゃんも嬉しそう。
まかないを頂いた後は、そのまま二人で歓談を楽しむ。オーナーのおねーさんがサービスでアイスカフェオレを淹れてくれたので、結構長く話し込んでしまった。思いのほか仕事が早く終わったのか、あるいは単純に興味本位かはわからないけれど、『せっかくだし私も混ぜてよー』って最後の方はおねーさんまでカフェオレ片手に話に交じってきたっけ。
なんだかんだでおやつの時間ごろには寮に戻った。まかない&プチランチデートであれだけ報酬を貰えるとか、かなりおいしかったと言わざるを得ない。たまにはああいうちょっとしたデートも悪くない……というか、最高だ。なんだかんだで学校だと、ああして二人きりでちょっぴりオトナっぽく時間を楽しむってことはできないしね。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。今日はあまり書くことが無いけれど、ここ数日日記の量が凄まじかったし、たまには短めで終わらせるのも悪くないだろう。
最後に一つだけ、大事なことを書いておく。
ランチ後の歓談にて、明日デートを執り行うことが決定した。しかも、ただのデートじゃなくて、『お互い入学してちょっと経ったくらいの頃になりきって一日過ごしてみよう!』というロザリィちゃんの提案。今の熱々ラブラブデートも大好きだけれど、出会った当初の片思いしあっていた頃……甘酸っぱくてピュアな気分をまた思い出したいのだとか。
だから、俺もそれに応えようと思う。なんだかとっても新鮮な気分だし、あの頃はあの頃で別種のドキドキ感があったのは間違いない。さしあたって、どれだけキスを我慢できるか……それだけが問題だ。
ギルは今日もぐっすりすやすやと寝こけている。今日はこいつ、なんか力仕事関係のバイトをしていたらしい。『【親友銀行】、よろしくな!』って自分から稼ぎを俺に預けてきたんだよね。まったく、ギルは俺がいないとダメだから困るっていう。
そんなギルの鼻には……初恋の雫でも垂らしておくか。おやすみにりかちゃんちょうかわいい。