表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/367

128日目 鉱山探索

128日目


 ギルがちょう美脚。ちくしょう。


 ギルを起こして食堂へ。今日はみんな予定がはっきりしているからか、朝からちゃんと食堂にいた。おこちゃまポポルもヒモクズフィルラドも、こういう時はちゃんとしているから侮れない。


 朝食はちょっと贅沢にチキンサンドをチョイス。なんとなく朝からがっつり食べたかったゆえである。ただ、俺のお膝の上のちゃっぴぃが『きゅーっ♪』って真ん中やわらかくて一番美味いところで『あーん♪』の構えを取ってくるから困る。おまけにあいつの一口ってあれで結構デカいしね。


 そうそう、ジオルドは朝の日光浴をしているアリア姐さんに件の塗り薬を塗っていた。腕から始まり、首元、背中……と、その光景はなんとも背徳的。最終的に体の前面、ふともも、その他普通に触ったら女子にブチギレされる場所だけが残ったんだけれど、アリア姐さんは「あらぁ、こっちは塗って……く・れ・な・い・の・?」とでも言わんばかりに妖しく笑い、そして誘うように身をくねらせた。


 顔を赤らめ、動きを止めるジオルド。もう慣れているはずなのに、やっぱり薬でテカる体はだいぶ刺激的だったらしい。


 『代わりにやってやろうか』って名乗りを上げてみれば、『あんただけにはやらせちゃいけない』、『絶対それ以上のことやりそう』、『手つきがすでになんかやだ』と女子に散々に言われ、そして容赦なくケツビンタをされた。みんなひどい。


 最終的にロザリィちゃんとパレッタちゃんがアリア姐さんに薬を塗ることに。『はい、ばんざーいして?』、『この滑らかさ……世界を取れるなり』、『はー……ちょっぴり嫉妬しちゃうかも……』、『おっふ……この重さ、ボリューム……!』なんて呟きが背後から聞こえてきて男子一同大変ドキドキしていたことをここに記しておこう。


 まぁ、アルテアちゃんを始めとしたほぼすべてのルマルマ女子が俺たちに杖を向けていたから、誰一人として後ろを見ることは出来なかったんだけどな!


 なお、やっぱりギルは今日もジャガイモを『うめえうめえ!』って食っていた。塗り薬塗れのアリア姐さんにも目を向けず『うめえうめえ!』ってジャガイモを食っていた。あいつだけ杖を向けられていなかったと言えば、どれだけジャガイモに夢中になっていたかわかってもらえると思う。ミーシャちゃんは『……いろんな意味でフクザツなの』って若干困惑した顔をしていたっけ。


 朝食後は昨日分担した役割の元、各々材料集めに赴くことに。俺はポポルと一緒に鉱山へ。学校の裏手……っていっても歩いてちょっとかかるけれども、そこにそびえる山のような谷のような場所へと行く。


 どうやら頻繁に魔系学生が出入りしているらしく、思っていたより人の形跡があった。作業小屋(?)的なものも拵えられている。魔物の気配もそんなにしない。


 あと、なぜか入口の所に【大漁祈願】と書かれた不気味なハゲたドワーフの石像があったので、とりあえず撫でておく。『それを撫でてる人、初めて見た』ってポポルは普通に手を合わせていた。


 鉱山のベテランであるポポルの話によると、鉱石採取ルートは大きく二つに分かれるらしい。一つは通称外ルートと呼ばれるそれで、山肌や谷間の露出したそこからつるはしなんかでえっちらおっちら採掘するというもの。外での作業だから特別必要な道具も気にすることも無いけれど、すでに結構掘られているから採れるのはクズ石ばかり……ちゃんとした良質のものを確保するには時間と運が必要だとか。


 もう一つは中ルートと呼ばれるもので、山の中に掘られた洞窟的な坑道で採掘をするというもの。地中(?)である分良質な鉱石が見つかりやすいほか、うまくいけば一攫千金も狙えるとのこと。ただし、明かりを始めとしたきちんとした装備が必要なほか、魔物と出くわした時のリスクも高く、仮に良質な鉱石を得られたとしても、迷子になったりなんやかんやで無事に成果を持ち帰ることが出来ない可能性も非常に高いのだとか。


 『俺も去年初めて鉱山に入ろうとしたとき、通りすがりの先輩から「まずは外ルートで慣れろ、あと初めて中ルートに行くときは経験者と一緒にしろ」ってすっごく念を押された』ってポポルは言っていた。たぶんコイツの場合、見た目が見た目だってこともあるだろうけれど。


 ともあれ、今回は中ルートを選択することに。『ガチるときはともかく、浅いところなら経験者がいればそんな準備しなくても問題ない』ってポポルが宣ったゆえである。冒険物語だったらトラブルに巻き込まれる布石でしかない。


 作業小屋にある共有道具を拝借した後は早速中ルートへ。意外なことに、坑道と言ってもそこまで狭苦しい感じでもなく、思った以上に広くて解放感に溢れていた。入ってすぐの所に【中央作業場】なる大きめのホール的なのがあって、トロッコだのつるはしだのが無造作に置かれているほか、ちょっとした休憩スペースにもなっている。おまけに誰が拵えたのか、発光する魔石や魔光ランプもあってなんかちょっとおしゃれな雰囲気。


 そこからさらに、坑道としていくつか道が伸びている。先人たちの功績か、しっかり補強はされているし、随所に明かりがあって落盤とか迷子の危険はほとんど無さそう。『奥に行けば行くほど手つかずになるけどね』ってポポルは言っていた。


 中央作業場から伸びている坑道の一つに入り、ちょっと進んだだいぶ浅めの所で採掘開始。補強の枠もしっかりしているし、まだまだ奥に明かりのある道が続いている……ぶっちゃけ途中の通路に等しいところだったけれど、『最初はこーゆー所から始める。それに、掘り進めたここが新たな横道になる』ってポポル大先生は仰った。まぁ、迷子になるよりかはマシか。


 まずは二人で景気よく掘っていく。やっぱり最初の方はほとんど何も採れないし、採れたとしてもクズ石ばかり。精錬でどうにかなるようなレベルじゃなくて、ちょっぴり魔力の残滓がある……かも? って感じのやつしかない。


 ある程度……新しい明かりが欲しくなってくるくらいに掘ったところで、『俺裏技使っちゃうね』ってポポルが連射魔法をぶっ放す。ガンガン削れていく岩。ぶわっと舞い上がる土埃。俺のお肌あれちゃう。


 『ちょっとは考えて魔法使えよ』って言ったら、『ここまで掘り進めれば、仮に落盤しても元のルートに影響はないじゃん。失敗しても死ぬのは俺たちだけだよ』って言われた。こいつマジで頭キマってんなって思った瞬間だ。


 ともあれ、採掘に来た魔系学生にそんな不文律があるのだと知れば、こちらとしても遠慮する必要なんてない。つるはしを足元に置き、岩肌に向かって吸収魔法をぶっ放す。舞い上がる土埃なんかも優しく受け止めてくれるっていう優れもの。今度ロザリィちゃんと鉱山デートするのも悪くないかも……いや、さすがにそれはないか。


 なんだかんだで掘っていたところ、オステル魔鉱石を発見。小さめであまり質もよくなかったけれど、精錬すればそれなりにはモノになりそう。この界隈じゃ割とよく見つかるらしく、レア度はそこまででもないだとか。


 『おっ、いいのみっけ!』ってポポルも嬉しそうな声をあげる。【オウル・アイ】と呼ばれる天然石が見つかったらしい。『上手く磨けばすんげえ綺麗になるんだ!』とのこと。


 せっかくなのでポポルが掘っていたところを俺も掘ってみる。ちょっと掘り進めただけでポポルが掘ったのと同じくらいの大きさのオウル・アイが出てきた。水魔法でちょっと汚れを落としてみれば、坑道のぼんやりとした明かりに照らされて薄緑に鈍く光っているのがわかる。


 『魔法的な価値はどんなもんだ?』って聞いてみたところ、『コレクター向けのロマンしかないけど?』って返された。綺麗だし別にいいか。


 その後も粘って掘り進めたところ、最終的に【セイレンのメノウ】と【ブルーブラッドストーン】の採掘に成功する。大きさはどちらもポポルの握りこぶしくらい。成果としては上等だろう。


 長居する理由は無かったので、到達点に光の魔法石(共有備品置き場にあったやつ)と採掘メモ(採れた鉱石と日付と気付いたことをまとめたもの)を残して坑道を後にする。中央採掘場では台帳に同じことを記載した。『義務付けられてはいないけど、こうしとけば欲しい材料をすぐに見つけられるから』とのこと。この鉱山、魔法要素溢れる場所にあるからか、鉱石の分布がわけわかんないことになっているんだって。


 クラスルームに戻った後は早速成果の検分……の前に、『すごく埃っぽいから先に風呂入って来い』ってアルテアちゃんに言われたため、ちょっと早めにお風呂に入る。せっかくなのでポポルと二人で風呂場競泳を執り行った。結果は俺の負け。もっと底が深ければ俺が勝っていた。ちくしょう。


 風呂から上がるころにはみんな戻ってきていたので、今度こそちゃんと成果を検分する。


 フィルラドとパレッタちゃんが持ってきたのは天鳥の霞羽とクィーンアルケニーシルク。『軽くて丈夫でスケスケなのを意識してみた』とのこと。日光を遮るのが目的だってわかっているのだろうか。


 ギルとクーラスが持ってきたのは王の骨と暴れ鬼竹。『実用性重視。デザイン面は他に任せた』とのこと。採取された今でも二つとも動いてたんだけど、そこについてはどう思っているのだろう。


 俺とポポルはセイレンのメノウとブルーブラッドストーン。ロマンがまぶしい。さすが俺。


 アルテアちゃんが持ってきたのは接着剤、染料、撥水材、その他もろもろ。なかなか気合入ってるな……と眺めていたら、『お前が連れ込んだファットウォーム、使わせてもらったぞ』って地獄の宣告。虫篭にいたはずの俺のグルーが消えている。接着剤として無事に再会できたことに、悲しくもあり嬉しくもあった。


 ロザリィちゃんとミーシャちゃんが持ってきたのは……なんかよくわかんないけど女子に人気のありそうなこまごまとしたアクセサリーの部品。『要らないやつをかき集めてきたの!』、『お店にも寄っていろいろ探してきたんだから!』とのこと。二人でショッピングなんかを楽しんできたらしい。


 可愛いから別にいいか……と思ったら、意外にも魔法的効果が高いのがけっこうあってびっくり。女子のアクセサリーって金をかけてるなと思った瞬間だ。


 『ありがとう……! これだけあれば、ちゃんとしたのが作れる!』ってジオルドは嬉しそうにしていた。早速明日から製作に入るらしい。ジオルドほどの匠だし、傘を作るのに一日もかからないだろう。出来上がるのが楽しみだ。


 夕飯食って雑談して今に至る。なんだかんだで今日はガッツリ力仕事をしたからか、妙に眠い。やはり欲張ってオステルのクズ石までも持ち帰ってきたのは失敗だったか。まぁ、『捨てないで……!』って俺のオステルちゃんたちが囁いてきたからしょうがないじゃん?


 ギルは今日もぐっすりと寝こけている。さっそくこのオステルのクズ石を鼻に詰めてみることにする。明日はゆっくり過ごそうっと。グッナイ。


※燃えるごみを燃やし尽くす。魔法廃棄物は見逃してやらなくもない。

20190806 誤字修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ