125日目 ルマルマ&ティキータ合同サマーパーティ
125日目
トイレが酒臭い。ホントなんなの?
ギルを起こして食堂へ。なんだかんだでみんな宴が楽しみなのか、いつもは寝こけているくせに普通に起きて出している奴らがたくさん。おこちゃまポポルやヒモクズフィルラドも普通に食堂にいた。なぜそれを普段から出来ないのかと言いたくなった瞬間だ。
朝食は軽め&健康を考えて新鮮サラダをチョイス。今日はあえてドレッシング無しでもそもそと食ってみた。なんだか気分がとってもウサギさん。素材の味が効きまくりんぐ……というか、素材そのものだ。
ちゃっぴぃに『あーん♪』してやったものの、あいつは不満たらたらに『きゅう……』って小さく口を開けるばかり。『今日はこれから肉をたらふく食べるんだから、朝くらいきちんと野菜を食え』って諭したらようやく食べてくれた。まったく、これだからガキは困る。
あ、今日も可愛いロザリィちゃんは『わんわんっ!』って普通に俺の野菜マシマシフォークに食らいついてきた。『この方がお野菜いっぱい食べられるから、協力してよねっ!』とのこと。ホント可愛い。全力で協力しまくった。
ギルはやっぱり『うめえうめえ!』ってジャガイモを食っていた。それだけ。
朝のひと時を過ごした後は早速ルマルマ&ティキータの合同パーティを開催することに。(当たり前だけど)無事な会場を見てなんかみんなホッとした表情をしていた。
『とりあえず肉焼きまくろうぜ!』ってゼクト。『挨拶的なのってルマルマはやるの?』ってライラちゃん。『なんだったら先生がやろうか?』って準備バッチリのシューン先生。あのひといつの間に来たんだろう。
ともあれ、こちらとしてはステラ先生が来るまで動けない……ということを伝えようとしたところで、『おまたせっ!』ってレジャースタイルステラ先生がやってきた。昨日とちょっぴり衣装が違う。スポーティな感じでとってもとってもエクセレント。思わず頬が緩んだ。
『挨拶をお願いできませんか?』と頼んでみたところ、『こ、ここは年上であるシューン先生の出番かなって……』ってステラ先生はシューン先生に丸投げ。『おっ、任されちゃいますよ!』ってにんまり笑うシューン先生に、「あっ、やっべ」とでも言わんばかりに顔をゆがめるゼクトたち。
シューン先生の挨拶はとんでもなく長かった、とだけ記しておく。ギルなんて途中で飽きてスクワットしてたしね。
その後は普通にバーベキュー。みんなが持ち寄った食材(主に肉)を焼いて焼いて焼きまくる。金網、鉄板、直炙り……と、いろんなスタイルで焼きまくった。厨房では感じられない……あの、野営の時特有の煙の感じ、なんだかとってもクセになりそう。
ある意味当然のごとく、男子の一部が女子にカッコいいところを見せようと『ほら、俺が焼いてやるぜ!』って張り切りまくっていた。『切ってある肉を並べるだけのそれに、一体どうしてそうも見栄を張れるのか』ってパレッタちゃんが一刀両断。燃え盛るヴィヴィディナを巧みに操り、串焼きの量産ラインを確立していたっけ。
『きゅ! きゅ!』ってちゃっぴぃがうるさかったので、俺も普通に肉を焼く。待ちきれないのか、あいつは尾っぽでぺしぺしと俺の脇腹を叩いてきた。『あっ、ちゃっぴぃってばずるい!』ってロザリィちゃんまで俺の脇腹を突いてきた。天国はここにあったのか。
十分に火が通ったのを確認し、ちゃんとふうふうしてからちゃっぴぃに『あーん♪』してやる。『きゅーっ♪』ってあいつはとても嬉しそう。早く次をよこせと言わんばかりに俺の背中をパンパン叩いてきた。
ロザリィちゃんも『おいしーっ!』って嬉しそうに食べていた。『普通のお肉のはずなのに、いつもよりずっとおいしいっ!』とのこと。『やっぱり外で自分たちで焼いて食べると美味しく感じるのかな』って何気なくコメントしたら、『──くんが焼いてくれたからこんなにおいしいんだよ!』ってにこって微笑まれた。秒速百億万回惚れ直した。
なんだかんだで周りはどこもそんな感じだったと思う。フィルラドはアルテアちゃんに肉を貢いでいたし、ポポルはぎゃあぎゃあ騒ぎながらパレッタちゃんと魚の丸焼きを食っていた。魚の上半身(?)と下半身ではんぶんこしてやらなくもないポポルに対し、魚の右半身(?)と左半身ではんぶんこしなきゃ気が済まないパレッタちゃんで意見の対立があったらしい。
あと、ジオルドは女子に囲まれて大変腑抜けた面をしていた。あいつ、ギルほどじゃないにせよクラスじゃトップレベルで腕が逞しいし、腕まくり&浮き出る血管&焚火の煤という組み合わせがワイルドさを求める女子のニーズに合致しまくったらしい。アリア姐さんが下唇を噛みまくっていたと言えば、どれだけ女子にチヤホヤされていたかわかってもらえると思う。
ぼんやりと周りを眺めていたところ、ステラ先生がいそいそと嬉しそうに肉を焼いているのを発見。『先生がんばっちゃうんだから!』、『みんな、ちゃんと食べてるー?』、『ほら、もっと食べないと大きくなれないぞぉー!』ってとにかく焼き、そしてみんなのお皿に肉を乗せまくっている。
『僕にも一つお願いできませんか?』って早速並ぶ。『もちろん!』ってステキな笑顔。『先生ね、こういうのすっごく憧れてたんだぁ……!』って先生の言葉に、その場の誰もが涙を隠せなかった。
『最初は遠慮したんだけど、すっごくやりたそうにしていて……』、『お腹いっぱいだけど、凄くキラキラした顔で焼いているから断りづらく……』って、周りにいた連中は言っていた。男子の大半がステラ先生の手作り(?)お肉を食べたくて群がったのは良いものの、ステラ先生がどんどんお皿に肉を乗せてくるから、腹がはちきれそうになっているのだとか。
実際、何度かステラ先生が『え……もう、いらないの?』ってしょんぼりしている姿を見かけた。マジで泣きそう。もちろん、俺が横からかっさらって食った。
だいぶ盛り上がってきたところで、ティキータの連中が一発芸大会(?)のようなものをやりだした。言い出しっぺのゼクトが純粋な身体能力だけでバク転を披露。女子からの歓声が凄まじい。
『それくらい俺だってできちゃうもんね!』って対抗してギルがバク転(高さがゼクトの比じゃない)を披露。『お前が出来なかったら詐欺だろ』ってポポルの容赦ないツッコミが。
次にライラちゃんが『ちょっと恥ずかしいけど……!』って歌声を披露。思っていた以上に可愛らしいガチな歌に男子一同大盛り上がり。中にはおひねりを投げるやつも。
『俺の美声に酔いな!』って対抗したギルがバカでかい歌声を披露。飛んでいた鳥が三羽ほど落ちてきた。
さらにティキータの男子が『マジックアートやります!』って大きめの魔力塊を構築。下書き(?)無しの文字通り一発で見事なフクロウの魔法彫刻を彫りあげた。しかも魚一匹が焼き上がるかどうかってくらいの短い時間で。会場から万雷の拍手が。
『マジックアートは出来ないけど、シルエットの美しさは負けないぜ!』ってギルは燃え盛る炎の前で灼熱のポージング。もはや鉱質的とすら言える質感に、炎の揺らめきがもたらすくっきりとした陰影、キレのある深みと照りが凄まじい。もはややけくそのように、会場から空が割れんばかりの拍手が。
その後も一発芸大会は続く。フィルラドによるヒナたちを使った芸、アルテアちゃんによる芸(空中に放り投げたリンゴを弓矢で撃ち抜いていた)、ミーシャちゃんによるリボンの芸……などなど、我らルマルマも結構な芸を披露出来ていたように思える。
中でも一番印象深かったのは、ロザリィちゃん&ライラちゃんによるデュエットだろうか。なんかロザリィちゃん、ライラちゃんがあそこまで歌えるなんて知らなかったらしい。ついつい対抗心が湧いてしまったとか。
最終的にステラ先生まで引っ張られ、三人で歌っていたっけ。最初は恥ずかしがっていたステラ先生だけれど、最後の方は割とノリノリだったのを覚えている。『こんな大声で歌うのなんて、ホントにひさしぶりなの!』ってアンコールにも応えていた。
俺? ちゃっぴぃにせがまれて二人で参加したけど、やることが特に思いつかなかったら、無難にダンスして終わらせたよ。ちょっぴり魔法舞踊が入った二人型……まぁ、俺の歌に合わせて適当に踊るちゃっぴぃに合わせて二人型っぽく見えるように俺が躍ってサポートするっていう、芸とも呼べない代物だけれども。学生の宴会のノリなら十分だ。
そろそろ腹も膨れて来たな……って思ったところで、どこからか甘い香りが。匂いを辿ってみれば、クーラスがマシュマロを炙って美味そうに食っていた。白いそいつがちょっぴり茶色に焦げたところをちらりとこちらに見せつけ、そして一口でそいつを口に入れる。
『きゅーっ!』って辛抱堪らなくなったちゃっぴぃがクーラスに駆け寄った。『あっ、いいなぁ……!』、『甘いの、恋しくなってたのよね……!』って気づいた女子も駆け寄った。『なんか甘い匂いしない?』、『あっ、マシュマロやってる!』って女子たちが次々に群がっていく。
どうやらあの野郎、これを狙って大量にマシュマロを準備していたらしい。『もちろん、一緒に食べようぜ?』、『焦げたマシュマロが好きなんだ』……などなど、マシュマロを口実に女子たちと話していたっけ。
しかも、マシュマロを『あーん♪』までされていた。たいそう緩みきった顔をしていたのは書くまでも無い。あと、『おいひぃよぉ……!』ってステラ先生がそれ以上に緩んだ顔をしていたのをここに記しておこう。
だいぶざっくりしているけれどこんなもんにしておこう。珍しく、特に変わったことも無い平穏で穏やかな宴会だったように思える。ミーシャちゃんが飲んだくれていた以外は、誰もお酒で失敗していなかったしね。やっぱり他クラスが一緒にいるとちょっとは気を使ってしまうのだろうか?
夕飯……じゃない、風呂入って雑談して今に至る。雑談中、なぜかちゃっぴぃがぽんぽんになったお腹を『きゅ!』って自慢げに俺に見せつけてきた。とりあえず腹をさすってやったんだけど、なぜか不満そう。
『いっぱい食べてえらいぞーっ! って、褒めてもらいたかったんだよね?』ってネグリジェ姿のロザリィちゃんがちゃっぴぃの頭を撫でていたけど、いっぱい食べて偉いとはどういうことだろう? その理論で行くならば、バーベキューで残りまくった野菜(誰が用意したのかは不明)を『誰も食べないなら俺全部食っちゃうよ!』って生のまま食ったギルが一番偉いことになるんだけれど。
まぁ、優しい俺はちゃっぴぃの頭を撫でてやったけどさ。あ、『準備も企画も、おつかれさまでした!』ってロザリィちゃんがちゃっぴぃの頭を撫でている俺の頭を撫でてくれたっけ。しかも仕上げにキスまでしてくれた。一日の最後までプリティとか、本当にロザリィちゃんはどうしてこうもステキなのだろう。
ギルは今日も腹を出してクソうるさいイビキをかいている。今日もこいつは肉を大いに食らい、筋肉を披露し、存分に楽しんでいたけれど……少しくらいミーシャちゃんのことを気にかけたほうがよかったんじゃあるまいか。ミーシャちゃんが寝こけた後は傍に寄り添ってジャガイモを食っていたとはいえ……もうちょっとこう、恋人に対するサービス的なものがあってもいいような?
まぁいい。ギルはギルらしくあるのが一番ギルなのだ。ありのままのあいつこそ、ミーシャちゃんが惚れたギルなのだ。俺がとやかく口を出すことじゃないだろう。
ギルの鼻には……薪の欠片でも詰めておく。肉を焼いてたら弾けて俺の腕に飛んできたやつね。後でしこたま呪ってやろうと思ったけど、鼻に入れてやるほうが無残な最期になるだろう。グッナイ。