12日目 発展魔法陣製図:マジックフランジの製図【1】
12日目
ギルの髪の毛ふわっふわ。いいシャンプー使ってんのかな。
ギルを起こして食堂へ。天使もうらやむフワフワの髪質に食堂中の女の子がびっくりしていた。『ねえどんなシャンプー使ってるの!? それともリンスが特別なの!?』と、くせ毛や枝毛といった髪質にコンプレックスを抱く女の子が凄まじい勢いで群がってくる。ギルのやつ、『朝昼晩とおやつ、そして寝る前のジャガイモを欠かさないのが秘訣だぜ!』ってトロールみたいな笑顔を浮かべて言っていた。
もちろん、ミーシャちゃんは朝から不満げ。『むぅぅぅーっ!』ってふくれっつらを隠そうともしない。『よその女にデレデレしてんじゃないの!』ってリボン&髪を使ってギルの胸元をペシペシとたたいていた。これも彼女なりのスキンシップの仕方なのだろう。聊か子供っぽいけど、まぁそれがミーシャちゃんだ。
当然のことながら、ギルはリボンで滅多打ちされながらも『うめえうめえ!』ってジャガイモを貪っていた。頭の中身までふわふわなやつって楽しそうに生きているなと思った瞬間だ。
今日の授業はシキラ先生の発展魔法陣製図。『ちったぁシケたツラもまともになったなぁ!』と、シキラ先生は超笑顔&高速で出欠を取っていく。『再履のいない授業って実に清々しいぜ! だってこんなに早く出欠終わるんだもん!』ってやたらとご機嫌。この人どれだけ再履の人間抱えているのだろうか。
内容はマジックフランジの設計について。前回に通達された通り、この授業は各課題に対する締め切りというものは特に設けておらず、学期末に全部提出することが出来ればそれでいいらしい。ただ、当然のごとく初見の課題を説明なしでこなせる学生なんていないから、こうやってその都度解説を行うそうな。
で、このマジックフランジだけど、魔法陣の締結材として最も使われるものらしい。基本的な見た目としては円盤状のシンプルな魔法陣で、そこにファンクションパターンとしてベルデ結合が出来るようになっている。『モノをくっつけるためのパーツって認識でだいたい合ってる』ってシキラ先生が言ってた。
また、製図の注意点として、
・陣中心呑深(直径)は魔法設計製図便覧に基づいた規格により適切に設定する。
・はめ合い部の寸法許容差は魔法設計製図便覧に基づいた規格により適切に設定する。
・ベルデ結合の配置に関してはキー溝に対して概ね振り分けにする。
・魔法陣共鳴による振れの許容差はガチること。
・一年次に学んだ製図法が遵守できていない図面は、ルンルンのおやつとして美味しく頂かれる(評価対象として扱われない)ことになるので注意すること。
……などが言い渡された。とにもかくにも、きちんと便覧を引いて社会で通じる規格で製図することが重要らしい。魔系として生きていく以上ずっと関わってくることだから、早いうちに慣れておけ、とのこと。なんだかんだでこの手の汎用魔法陣の場合、全くのオリジナルを使うことなんてほとんどなくて、どれも規格でガチガチに固められたものばかりなんだそうな。
説明の後は普通に製図タイム。製図に関する雑談中、『こっちを舐めてるのか、特に別学科とかだとケツ拭いた後の便所紙みたいな図面を出してくるやつがいるんだよな……あまりにもクソだからその図面で鼻かんでやったけど、不快感しか残らなかったわ』ってシキラ先生がガチな顔で呟く一面があった。いったいどれだけクソな図面だったのかちょっと気になる。
あっさりしてるけど授業内容はこんなもん。今回は説明が多かったけれど、次回はもっと自由かつフランクな感じでやっていくらしい。聞かれれば解説を行って、それ以外は雑談しながら製図タイムというスタイルになるって言っていた。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。風呂上がりの雑談中、パレッタちゃんがなんかやたらと腕を気にしているのを発見。『昨日の追跡草に種を植えられたところ、痕になってるやもしれぬ……』ってしょんぼりとしていた。パレッタちゃんにも女の子らしい一面が残っていたのだと感じた瞬間だ。
で、よせばいいのにおこちゃまポポルが『そんなの舐めときゃ治るだろ!』と煽りだす。普段の仕返しがしたかったのだろうか、奴の目はそれはもうイキイキと輝いていた。
しかしそこはパレッタちゃん。言われっぱなしのはずがない。『じゃあ舐めてよ』とポポルの前に自らの腕を突き出した。
『……えっ』ってポポル唖然。みんなも唖然。『女子の柔肌に舌を這わせるまたとない機会ぞえ? ……それとも、それすらできない腰抜けかや?』と、パレッタちゃんはポポルを煽り返した。
パレッタちゃんの勢いは止まらない。『ほら、舐めてよ。舐めてみてよ。舐めなさいよ。舐めろよ!』とぐいぐいと奴の口に腕を押し当てていく。『ふぎゃああああああ!?』って悲鳴を上げるポポルを無視し、『私の腕が舐められないっての!?』と文字通りマウントを取った。さすがである。
最終的に、ポポルはびすびす鼻を鳴らしながらパレッタちゃんの腕を舐めることになった。『この感じ……目覚めかけそう♪』と、パレッタちゃんはご機嫌。まだ目覚めていなかったという事実に驚きである。
あと、『おうおう、さすがはポポルさんですなぁ。ずいぶんと見せつけてくれたもんだ』、『いやはや、我々には到底真似できませんなぁ』って嫉妬の炎を燃やすクーラスとジオルドがマジ怖かった。あいつらさすがに拗らせすぎじゃない?
そうそう、『いい感じのスキンケアあるよ!』ってロザリィちゃんがパレッタちゃんにクリーム的なのを分けてあげていた。ポポルのヨダレの百億万倍は効果があるに違いない。にこにこしながらパレッタちゃんの腕に塗ってあげていたロザリィちゃんが本当に可愛いかった。
いつもの終わりのフレーズを書いてからだいぶ長くなってしまった。文章の構成を見直すべきだったかもだけど、気にしないことにする。
ギルはやっぱり大きなイビキをかいて寝ている。こいつのヨダレにはどんな効果があるのか、知ってみたい気もするし知るのが怖い気もする。とりあえず、なんとなく回収しておいたポポルの涙でも垂らしておこう。おやすみ。