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115日目 大洪水

115日目


 漏らしやがった。クソが。


 朝の割と早い時間、何かに揺さぶられて目覚める。どうしたのかと周りを見れば、『きゅ、きゅう……!』ってちゃっぴぃが真っ赤になってもじもじしながら俺の肩を突いていた。


 次の瞬間感じる下半身の冷たさ。慌ててバッとタオルケットを除けてみれば、それはもう見事な大洪水の形跡が。


 『さっむ!』ってポポルが起きた。『きゅう! きゅう!』って必死になってポポルを指さすちゃっぴぃ。ポポルのズボンもびしょびしょ(ただし側面のみ)。


 『この歳でも治ってないのはしょうがないけど、せめて自分のベッドにしてくれな?』って微笑んで頭を撫でたら、『いや、お前のズボンの方がだいぶそれっぽくみえるからね』って冷静に返された。


 ともあれ、ちゃっぴぃを『めっ!』しておく。誤魔化すならもっと完璧にしろ、そうでないなら素直に謝れと言っておいた。どうせガキのおねしょだ、そこまではずかしいものでもない。


 で、ギルを起こし、三人と一匹で朝風呂へ。一応念のため、クラスルームを通りかかった時に『かーっ! ガキがおねしょして大変だなーっ! ベッドもパジャマもびしょびしょでやってらんないなーっ! これだからちゃんと寝る前にトイレ行っとけって言ったんだよなーっ!』って言っておいた。


 『きゅうううう!』って泣かれながら思いっきりケツを叩かれたのが未だにわけわかめ。俺本当のことしか言ってなくない?


 朝風呂は普通にゆったりした感じだった。さすがに夏休みのこの時間に風呂に入りに来るもの好きはいないのだろう。汚れてしまった俺たちの洗濯物(と、汗臭いギルパンツ)をまとめておいて置く。


 ちゃっぴぃの野郎、いきなり湯船に飛び込もうとしたので後ろから捕まえて頭からお湯をぶっかけておいた。あいつのせいで朝風呂する羽目になったというのに、いったい何を考えているのだろうか。


 全身をあわあわにし、汚れをきれいさっぱり落としたところでみんなでせーので湯船にダイブ。盛大な水飛沫。やってきたゼクトとラフォイドルの顔面にぶしゃー。


 思い出したらケツが再び痛み出してきた。あいつらはもっと加減ってものを知るべきだと思う。


 ともかくそんなわけで、朝風呂シャボンカーニバルに二人ほど追加。『飲み会明けの朝風呂が好きなんだよね』、『ゆっくりしたいときはいつも来る。なのにこれだ。お前に俺の気持ちなんて一生わからないんだろうな』って二人はコメント。さすが親友、よくわかってる。


 ちゃっぴぃを膝に乗せつつ風呂を楽しんでいたところ(深いところだとちゃっぴぃは座れない)、ゼクトに『前々から思ってたけど、ここに連れてくることに抵抗はないのか?』って聞かれた。『別に子供だし問題ないだろ。それにこいつ普段から全裸じゃん』と返しておく。


 『俺の地元じゃ十歳くらいまでみんなすっぱだかで川遊びしてたぜ!』、『うちの地元も正直子供は男女関係無く扱われた』ってギルとポポル。やっぱりどこも似たような感じらしい。『いやまぁ、確かにうちもそうだったけど……』って言いながらもゼクトはちょっと腑に落ちないって顔をしていた。


 が、『体つきは子供のそれじゃないだろ。それに、子供だからこそ危ない場合もあるだろ。ましてやそいつサキュバスだろ』といつになくラフォイドルが饒舌。危ない気配を感じたのでさっとちゃっぴぃを背中に隠したら、『……普通の反応なのになんかムカつく』と言われた。あいつマジで怒りっぽくない?


 ……でも、言われてみればロリコン(あるいはロリコン予備軍)に何人か心当たりがあるのも事実。そうでなくとも女に餓えて拗らせているやつが魔系には多い気がする。子供とはいえ、夢魔のちゃっぴぃの風呂場ヴァージョンは刺激が強すぎるのかもしれない。


 こんな心配をしなくちゃいけないとか、本当にこの学校は終わっている。みんながポポルみたいに風呂場でいかに速く泳げるか頑張るのに夢中だったり、ギルみたいに風呂場でいかに筋肉を輝かせられるか模索するのに夢中だったらどれだけ平和なことか。


 風呂上がりにはイチゴミルクを楽しむ。【先に湯船から出たら負けゲーム】で負けた俺がみんなにイチゴミルクを奢る羽目になった。ちゃっぴぃがダウンしなければもうちょっと頑張れたのに。


 『……爺は長風呂で熱い風呂を好むらしいな』って風呂上がりのジャガイモを楽しむギル(『うめえうめえ!』ってめっちゃ食ってた)に問いかけたら、『ケンカ売ってんのか?』ってラフォイドルにケツビンタされた。あいつはマジでもっとミルクを飲むべきだ。


 朝風呂を済ませた後は普通に朝食を取り、クラスルームに戻る。グロッキーになっている連中が床で蠢いていた。絶望。


 幸いだったのは、前回に比べて数は少なかったことだろうか。自制できたのか、はたまた酒に強くなったのか。いずれにせよ、無事な奴の大半が処理を俺たちに押し付けてどこかへ逃げ出していた。


 とりあえず、トイレに連れ込んでおく。俺の黄金のミスリルハンドが火を噴きまくった。男女ともに、個人の名誉のために名前は伏せておく。


 朝は下のおねしょ処理、昼は上のゲロ処理とか本当に泣けてくる。『俺もうやんないって言ったじゃん!』ってポポルはマジで泣いてたしね。ギルは『好きなだけぶちまけていいぞ!』って笑顔でポージングしてたけど。


 お昼頃、俺の特製オニオンスープを飲んで落ち着いたロザリィちゃん&ステラ先生がだいぶ神妙な顔をしてにらめっこしていた。『なんか、昨日……』、『酔った勢いで、だいぶすさまじいものを口にした気がする……』……とのこと。にこにこ笑うちゃっぴぃを見て、二人して頭を抱えていたっけ。


 『あの、その……ち、乳搾りをするときは、必ずパパとママと一緒にね?』、『その、美味しかったのはホントなの。でも、さすがにちょっと倫理的にどうかなって……』ってロザリィちゃんとステラ先生はちゃっぴぃを諭していた。


 どうやら二人とも、記憶はしっかり残っているらしい。いっそもっと完璧に酔っぱらっていれば、記憶も吹っ飛んでいただろうに。理性的な自分では考えられない行動を覚えているからこそ、余計に恥ずかしいのだろう。


 ちなみに、ちゃっぴぃは二人がお代わりを飲みたいと勘違いしたのか、『きゅ?』って自分のそれをもちあげ、ずずい! って二人の前に差し出していた。かぁって真っ赤になる二人がとってもプリティでキュートでした。


 なお、一応の線引きとして【目の前で直搾りした搾りたてほやほやの物を飲む】のはアウトで、【火を通すなどして一度加工したもの、あるいは乳搾りの容器と飲む時の容器を別にしたもの】はセーフらしい。


 『搾ったものをそのまま受けて飲むのは先生ダメだと思うの……』ってステラ先生は言ってたけど、違いがよくわかんないや。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。だいぶざっくりしているけどこんなもんにしておこう。今日はなんだかんだであまりイベントは無かった気がする。ピアナ先生は普通に早朝に帰っていったらしいし、ステラ先生もなんかやることがあるとかで割と早めに帰っちゃったしね。


 あ、雑談中にそれとなくちゃっぴぃのおねしょのことをロザリィちゃんに聞いたら、『……前もたまーにやってたよ? ──くんのベッドで寝るときは、結構気合入れて頑張ってるみたいだけどね?』って可愛くウィンクされた。


 『きゅん! きゅん!』ってちゃっぴぃは恥ずかしそうにロザリィちゃんの腰をぱしぱしと叩くばかり。どうやらあいつ、思った以上におねしょ癖があったらしい。


 『夜とか朝早くとか、たまに起こされてお風呂に行ってたよ。……でもね、そんなときのお風呂も気持ちいいし、ちゃっぴぃの恥かしそうな顔も可愛いって思っちゃうの。……いじわるなママでごめんね?』って笑いながらロザリィちゃんはちゃっぴぃを抱き上げ、そして俺にキスして部屋に戻っていく。そこはかとない新婚夫婦感になんかやたらと胸がドキドキした。


 ギルは今日も大きなイビキをかいてぐっすりと寝ている。ポポルは今日は自室。『だいぶゲロ臭さはなくなった』って言ってたから大丈夫だろう。なんだかんだで、今回あいつが一番得をしたのではなかろうか。被害と言えばパジャマくらいだったわけだし。


 ギルの鼻には……ちゃっぴぃの枝毛でも詰めておく。髪を梳かしてやってるときに見つけて引っこ抜いた奴ね。グッナイ。

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