表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/367

110日目 テスト勉強と脇

110日目


 ギルの声が俺の声。もう何なのマジで。


 ギルを起こして食堂へ。『よぉ、おはよう!』とギルがいつも通りにバカでかい声でみんなに挨拶をするたびに、食堂がざわめいてたいそう不愉快。『えっ、ルマルマの組長ってあんなに爽やかだったっけ……!?』、『気を付けろ、絶対何か企んでるぞ』等と謂れなき誹謗も。みんな酷い。


 一方で、ポポルやフィルラドは楽しげ。『ちょっとその声で「筋肉最高!」って言ってくれよ!』、『「スカートを履くのが大好きです!」って超デカい声で!』などとギルにリクエストする始末。


 『任せろ!』ってギルの野郎も超ノリノリでリクエストに応えるし……あいつらに品性というものは無いのだろうか。


 さて、そんな感じで朝食を取っていたところ(ギルはやっぱり『うめえうめえ!』ってジャガイモを食っていた。俺の声だから違和感が凄まじかった)、『スカートを履くのが好きって……ホント?』ってロザリィちゃんが目をキラキラさせてやってきた。マジかよ。


 『残念ながら、そういうのが好きなのはギルの方だよ』と『パパが高い高いしてやるぜ!』って俺の声でちゃっぴぃを高い高いして遊んであげているギルを指さす。ロザリィちゃん、『そっかぁ……』ってちょっとしょんぼりしていた。どういうことなのだろうか。


 朝食の後は普通にクラスルームでテスト勉強。平日なのにクラスルームにいてもいいってなんだか不思議な感覚。これでテスト勉強が無かったら最高だったのに。


 とりあえず、触媒反応学のノートを見返す。どうせ授業でやった練習問題のアレンジくらいしか難しそうなところは無い。計算ミスが怖いと言えば怖いけど、そんなもん怖がっていたら魔系なんてやっていられない。


 『なんか俺すっげぇ頭が良い気がする!』ってギルは俺の美声を無駄に発しながらノートに落書きしまくっていた。あいつの能天気さが本当に羨ましいや。


 午後は魔法回路実験のテスト勉強を行う。こっちはガチで集中しなきゃいけない案件……なのはいいんだけど、お日様が妙にやる気を出してしまったため、室内がとんでもなく暑くなってしまっていた。むわっとした空気がこもっていてとてもやる気が出る雰囲気じゃない。


 実際、ミーシャちゃんは『暑いのー……』ってぐてっとしていた。アルテアちゃんの眉間の皺もマックス。辛抱堪らなくなったのか、ジオルドは上裸になって階段下の日陰(?)のところでじっと佇んでいた。女子の何人かが悲鳴を上げていたのは書くまでも無い。


 もちろん、ギルはいつも通りの半裸。噴き出す汗が筋肉をテカテカと彩ってたいそう暑苦しい。『やっぱ夏の筋肉は趣きあるよな!』と暑さで脳筋がトチ狂って……いや、これはいつものことか。


 ともあれ、俺の声でそんなアホなことを言わないでほしいと思った。言ったところで無駄なんだけどね。


 さて、ギルだけでなく比較的まともなジオルドまで半裸になっていたとあって、男子の間で半裸になる流れが形成される。フィルラドも普通に『地元じゃこの時期男はみんなこうだったしな……』って半裸になり、クーラスも『抵抗はあるけど、みんなでやれば怖くない』って珍しくこの手のノリに乗ってくれた。あるいは、あいつも暑さで思考力が奪われていたのかもしれない。


 ポポル? あいつは半裸どころかズボンまで脱がされていたよ。おこちゃま体型だからほほえましさしかなかったけどな!


 みんながそうして脱いでいるとあっては、俺も脱がないわけにはいかない。『きゅ! きゅ!』ってなんかやたらと鼻息を荒くしたちゃっぴぃにせがまれたこともあって、上着を脱いで(ひっぺがされて)半裸になってみた。ちょっとは涼しくなったけど、それでもあまり変わらないのが悲しいところ。


 『うっわ……むさくるしい……』、『でも、男子ってこーゆー時は便利でいいよね……』などと、女子も暑さでうんざりしているらしく、そこまで表だって俺たちを批判したりはしない。限界まで薄着になって、腕まくりしたりスカートの裾を折ったりして対処していたっけ。


 男子の誰かが『遠慮せずに、俺たちみたいに半裸になっていいんだぞ!』、『半裸と言わずに全裸でいこうぜ!』って女子に声をかける。一呼吸の後に、その男子たちの悲鳴がルマルマ寮に響き渡った。当然の結果である。


 『バカ野郎! 薄着の見えそうで見えない感じが良いんだろ!』って言ってしまった男子も次の瞬間に悲鳴を上げていた。気持ちはとてもよくわかる。


 そんな感じで勉強の時間は続く。男子全員が半裸で勉強しているあの空間をなんと表現するべきか。女子もすっかり慣れてしまったのか、誰もあの光景の異様さについて言及する人がいなかったんだよね。


 なんだかんだで夕方の早めの時間に俺のノルマは終了。凝った肩をほぐそうと『んー……っ!』ってぐいっと伸びをしたら、なぜかちゃっぴぃが俺を見て顔面蒼白に。しかも、『きゅ、きゅう……っ!』って涙目になって泣き出した。


 『どうした? ……ほら、こっちこい』って俺ってば優しく腕を広げてちゃっぴぃを迎える体勢を整える。ちゃっぴぃのやつ、『きゅーっ!』ってぴすぴす泣きながらロザリィちゃんの胸に飛びついた。あいつマジずるい。


 『あの……その、割とダイレクトにそれを見せつけられて、ちょっとびっくりしちゃった、みたい……?』ってロザリィちゃんは困惑&赤面しながら語ってくれた。どうやらちゃっぴぃのやつ、俺の脇毛をみてショックを受けてしまったらしい。普段から全裸で過ごしているあいつにショックを受けられる謂れは無いのだけれど。


 だいたい、男子の大半が普通に脇毛が生えている。ちゃっぴぃは風呂場でそれを何度も見ているはずだ。


 そのことを聞いてみたところ、『チラッと見えるのと、思いっきり出ているのをみちゃうのは違ったんだと思うの。……うん、びっくりしちゃっただけだから、ね?』ってロザリィちゃんに困ったように言われてしまった。子供の考えていることはよくわからねえや。


 ちなみに、ロザリィちゃんは『おひげは別に許せるの。脇も男の子だからしょうがないと思う。でも、胸毛だけはやめてぇ……っ!』って涙目で語ってきた。どうやらロザリィちゃんの中では、それは絶対に譲れない一線らしい。


 『俺はいつだってツルツルだよ。何だったら確かめてみる?』って腕を開いてみれば、『……お言葉に甘えます』ってそのまま抱き付いてきた。すーはーすーはーくんかくんかの勢いがいつもよりすごい。くすぐったくってたまらなかったっていう。


 ……俺の脇毛、並み……というか、比較的薄い方だと思うんだけれど。やっぱり少し剃ったりしたほうが良いのだろうか。どうもロザリィちゃんは毛深いのは好みじゃないみたいだし、なによりちゃっぴぃに泣かれてしまったのは……ねえ?


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。風呂場にて、他クラスの連中に今日のことを話したところ、『ウチも半裸で勉強してるわ』、『女子が凄い目つきでこっち見てくるけど、逆にそれがなんかいいよな』といった話を聞けた。やっぱりどこのクラスも同じような感じらしい。


 『一部の女子は「きゃあ!」って言って文句言うけどさ、実際は赤くなりながらチラチラこっち見てくるよな。マジで何なのアレ?』ってゼクトは語っていた。まず間違いなくライラちゃんのことだろう。とりあえず、男子の総力を挙げてゼクトに水虫の呪をかけておいた。


 ギルは今日もぐっすりと大きなイビキをかいて寝ている。一応確認だけど、ルマルマで脇がツルツルなのはポポルとギルね。ポポルは言わずもがな、ギルはおしゃれするときや気合を入れる時だけ毟ってツルツルにしている故である。『オラァッ!』って声を出しながらブチィッ!! って風呂場で抜いている姿をたまに見かけるんだよね。


 そんなギルの鼻には……ブレイブルーでも詰めておくか。入浴剤の材料としていいかもって思ったんだけど、野郎の風呂に使うにはもったいなくなってきちゃったんだよね。


 今日はちょっと変則的に、男子一同が風呂場で導いた偉大なる真理をもって結びの言葉とさせてもらう。


 ──【女の子の汗ばむうなじと、そこに張り付く髪はとってもグレートでドキドキする】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ