108日目 魔力学:前期期末テスト
108日目
ギルの小指が超絶美白。意味がよくわからない。
ギルを起こして食堂へ。昨日遅くまで勉強していたのか、眠そうな顔をしているのがちらほら。シキラ先生じゃないけど、どうせ直前になって足掻いても大して変わらないのだから、最後の日くらいはぐっすり寝てコンディションを整えるべきだろう……という俺の考えは間違っているのだろうか?
ともあれ、朝食はゲンを担いでジャガイモを食すことに。俺のお膝の上のちゃっぴぃは『きゅう……』って不満そうだったけれど、ケチャップやマヨネーズ、塩コショウやジャム(!)で味付けしてやったら『きゅ……ん?』って不思議そうな顔をしながらも『あーん♪』を受け入れてくれた。
……今更だけれど、こいつの味覚ってどうなっているのだろう。もう普通に俺たちの食事に慣れさせてしまったけれど、当初は割と野生よりの物を食っていたし。まぁ、好き嫌いせずにいてくれればなんでもいいか。
もちろん、ギルは今日も『うめえうめえ!』ってジャガイモを貪っていた。パレッタちゃんがこっそり異物混入させたパンの耳(今日は食べたくない気分だったらしい)も普通にむしゃむしゃ食っていた。ポポルが残したパセリも食っていた。あいつに食えないものってあるのだろうか?
朝食後、ロザリィちゃんが『テストが上手くいくおまじないねっ!』って俺の頭を撫でてきた。『ご利益ありますように……!』って贅沢に三回も。『おまじないだけでいいのかな?』って優しく問いかけてみれば、『……ご褒美の先払いもお願いします』ってはにかみながらキスされた。朝からとっても幸せである。
さて、今日の授業……というか試験はアラヒム先生の魔力学。教室はやっぱりいつものカビ臭いあそこ。あんな悪環境じゃ実力なんて発揮できるはずがない……けれども、『実戦でそんな贅沢なんて言えません。不利な状況で戦わざるを得ないのが魔系の宿命ですから』と言われてしまえば反論の仕様がない。
肝心のテスト内容だけれども、ある意味オーソドックス(?)なスタイルで、前半は単語や定理の説明といった簡単な記述問題。穴埋めでこそなかったけれど、そこまで難しいものじゃなかった。普通に授業を聞いて普通にノートを取っていれば全く問題ないレベル。
大変だったのは中盤からの計算問題。やっぱり魔力学のサイクルにまつわるものだったんだけど、計算量が凄まじい上に魔力の授受の関係が酷くわかりづらい。こっちから魔力を与えたのか、逆に魔力を受けたから変化したのか……ってのが、単純な文面からは理解できないようになっている。
いやはや、問題文を見た時一瞬焦ったよね。設問に対して文章があまりにも少なすぎたんだもの。そのぶん、サイクルの図が細かく書かれていたんだけどさ。
そうそう、アラヒム先生がテスト中、ギルの周りをいぶかしげにずっと窺っていた。もちろん、ギルはイカサマなんてしていないから、猛烈な勢いで腕を動かすのみ。腕とそれ以外の部分の体の動きがまるであっていなかったけどな!
『噂には聞いていましたが……いやはや、本当に何が起きてるのやら……?』ってアラヒム先生はずっと不思議そうに首をかしげていた。一瞬ギルの周りの魔法要素をすべて焼き尽くしていたけれど、それでなおギルに変化は無し。
先生方ももうちょっと脳筋を鍛えるべきだと思った瞬間だ。
なんだかんだで(俺に関しては)無事にテスト終了。試験中はちょっぴり焦ったけれど、終わってみれば特に問題なし。低く見積もっても八割は取れただろう。
『存外あっけなかったな?』ってクーラスも言っていた。あいつ、直後にポポルとパレッタちゃんにケツビンタされていたっけ。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。今日はテストしかしていないから書くことが少ない。せいぜいが風呂に入っている時、ゼクトが『夏休み、なにすっかなぁ……』って気の早すぎることを口走っていたことくらいか。夏休みよりも目の前のテストの心配をすべきなのにね。
……読み返してみたけど、マジで今日は書くことが少ない。たまにはこんな日もあっていいか。
明日は兄貴と天使の魔法生物学のテスト。久方ぶりにジャングルの王者ベル・グレイに会えると思うとちょっとドキドキ。たっぷりと英気を養って、あの仮面を剥ぎ取れるようにしなくては。
ギルは終末を思わせるクソうるさいイビキをかいている。とりあえず鼻に火鼠の前歯でも詰めておこう。おやすみにりかちゃんまじーにあす。