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1日目 二年生初回ガイダンス

 魔系学生の友人の二年目の日記がようやく見つかったのでここに晒します。こちらは【魔系学生の日記】の続きとなるので、初めましての方はそちらの方から目を通されることをオススメします。


 これから一年、どうぞよろしくお願いいたします。


2024.03.27追記


小説家になろうのユーザページリニューアルに伴い【作品閲覧ページのレイアウト設定】機能がなくなったことで、日記に仕掛けていたギミックが死にました。本文と齟齬が出てしまうところもあると思いますが、機能自体が無くなったので復旧は無理です……。


※実際の日記をできるだけ再現しようとした関係により、デフォルトの表示設定では小説として酷く読みづらい個所もありますが、ご了承ください。また、この日記は魔系学生の日常を綴ったものです。理系の人物、団体、および機関とは一切関係はありません。関係があるように感じたとしても気のせいです。

1日目


 一応今日から二年生。気分を新しく……と行きたいところだけど、イマイチそんな気がしない。そしてギルの額に『進級おめでとう。二年次もジャガイモ妖精をよろしくイモ』と書かれている。とりあえずよろしくされておいた。


 ギルを起こして食堂へ。昨日とかに散々『明日から二年生に~』って書いていたためにすっかり忘れていたけれど、暦上は今日は休日。休日にオリエンテーションをぶっこんでくる学校のクソさを呪いつつ、『景気づけだよ!』とおばちゃんがサービスしてくれた休日限定パフェを食した。ふんだんに使われた果物とクリームがマジデリシャスでした。


 二年次でも変わらずちゃっぴぃは『きゅーっ♪』とか言って定位置(俺の膝)に乗ってくる。さらに『貢がせてやるぞ』と言わんばかりに俺にパフェの『あーん♪』を強要してくる始末。あいつの甘えんぼも筋金入りだと思う。


 パフェの代わりに蒸かしたての熱々ジャガイモを口に入れたら『ふーッ!』っておもっくそ引っかかれた。解せぬ。


 なお、ジャガイモをくすねられたのにギルはやっぱり『うめえうめえ!』とおいしそうに口を動かすばかりで、全く気付いた様子を見せなかった。こいつほど平和な脳みそも珍しいと思う。


 さて、朝食後はガイダンス(オリエンテーション)を行った。『二年次も気を引き締めていこう!』ってきりっ! っとしながら出欠を取るステラ先生がマジ女神。クリーニングしたばかりと思しきいつものローブもステラ先生にベストマッチ。俺、大きくなったらステラ先生のローブになりたい。


 冗談は置いとくとして、オリエンテーションでは二年次の授業の説明&教科書の配布とそれにまつわる諸注意、さらに生活態度等の注意喚起が行われた。


 当然のごとく、二年次の授業はより複雑かつ難解に、さらにはデンジャラスになる。で、結構な確率でそれなりの重傷を負うことが増えるんだけど、長い長い春休みでたるみきっているこの時期が一番事故の規模が大きくなりやすいんだとか。『一昨年くらいだったっけ、一発目の授業で片腕を持ってかれた子がいてね……』ってステラ先生がちょっと悲しそうにしながら教えてくれた。


 ……片腕を持ってかれる授業ってなんなんだろう。マジ怖い。あと、『そんなに高負荷ならいい筋トレになりそうだな!』ってポージングを決めるギルがそれ以上に怖い。やっぱりあいつの頭は脳筋のままだ。


 そうそう、授業に関しては【四魔】なる項目をみっちり行っていくって言っていた。これ、魔法学の根幹となる触媒反応学、魔導工学、魔力学、魔法流学を示したものだそうで、実際にこれにいくつかの分野(魔法材料学とか)を含めたものが魔系においてめっちゃ重要になって来るらしい。


 『いくつかって、それって全部ってことじゃないんですか?』って思ったことをそのままステラ先生に聞いたら、先生は『……あはは』ってどこか遠くを見て微笑みを浮かべた。そんな姿も素敵だった。


 『二年生の授業にはね、これから魔系として生きていくうえで重要になる科目がこれでもかと詰め込まれているの。基本的に今までは基礎の基礎、例えるなら文字の読み方を覚えているレベルだったけど、これからようやくちょっとは魔系らしくなってくるの。……ここで躓くと、必然的に後の科目全部落とすことにつながるかな。これから覚えることを元に授業が発展していくし、必修の時間とかの都合上、二年次前期の単位を落とすと留年の可能性がすごく……』って、ステラ先生は言葉を続ける。この段階でポポルやミーシャちゃんが半ベソになっていたことは書くまでもない。


 どうやらマジで二年生の授業は気合を入れないといけないらしい。ケルピーの背中に乗るどころか、死神の鎌を首に突き付けられているに等しいレヴェルっぽい。


 最後に、ステラ先生は『この時期は本当につらいと思います。死んじゃいそうに思うことも、なることもあると思います。でも、本当に死んじゃった人は今まででほんのちょびっとしかいません。死ぬ気でやって死んじゃった人もいません。三年生になるころには笑い話に出来ますし、二年生なんて楽勝だったって思えるような環境になりますから、みんな死ぬ気で頑張ろうね!』って締めくくった。


 あの女神ステラ先生の死んだような笑みと、俺たちの間に落ちた沈黙をなんと表現すればいいのか。『これでもまだ昔より何倍も楽になったんだよね……うふふ……』って先生はずっとヤバそげに笑っていたよ。


 ホント、この業界ってどうしてこうも業が深いのだろうか。俺みたいな繊細でデリケートな人には辛いっていう。


 話そのものはこんな感じで終了。本当は授業選択をしなきゃいけないんだけど、事実上の必修ばかりで結局みんな同じ授業を取ることになる。


 何のための選択授業なのか問いたい……っていうか、なんでわざわざ取れる可能性のない授業を開講しているのか。なにか理由でもあるのかな?


 なんだかんだで午後の早い時間にはガイダンスは終わる。明日は明日で実験についてのガイダンスを行うらしい。スケジュールの組み方に問題があるように思えなくもないけど、初日からガッツリってのも俺の性に合わないから別にいいか。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。ガイダンスしかしなかったからか、内容に面白みがない。そしてロザリィちゃんと全然イチャイチャできなかったのが非常に残念。


 せいぜい風呂上がりに膝枕してもらったのと、『今年度もよろしくね!』っておやすみなさいのキスをしたくらいだろうか。湯上りロザリィちゃんってばめっちゃほわほわで柔らかくて良い匂いがして気絶しそうになった。


 ギルは今日も大きなイビキをかいている。読み返していてふと思ったけど、この新しい日記が唯一去年と違う新鮮さを感じさせるものだ。これから一年かけてまたこの空白を黒く埋めていくのだと考えると、なんかちょっと感慨深い。


 とりあえず、ギルの鼻には始まりの瞳を詰めておいた。消音効果はイマイチ。安眠は期待できないけど、もはや慣れている。グッナイ。

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