外伝 母と子
今回は外伝として、リーフィアとその母であるサーシャのお話です。
次話ももしかしたら外伝かもしれません。
主に、ルカが活躍するだけの。
そして筆者は趣味で絵も描いているので、今日中に描ければ次の外伝にのせたいと思います
まぁ絵自体はドヘタなんですが
「お兄様、飲み物をお待ちしました!」
そう言って私はお兄ちゃんの方へと駆け寄っていきます。
するとお兄ちゃんは、振っていた剣を止め腰にある鞘へ仕舞うと私の持ってきた飲み物を手に取って、「ありがとう」と言って優しく笑いかけてくれました。
その笑顔を見れただけで、飲み物を持ってきてよかったなぁと思います。
まぁ毎日、持って行く度に思うんですが。
しかも今日はそれだけじゃなく、飲み物を持っていない方の手で頭を撫でてくれました。
「はぅあ~・・・」
・・・あぁ、幸せです~。
はっ!
お兄ちゃんのナデナデがあまりに気持ち良かったのでボーッとしてしまいました。
私がここに来た理由はお兄ちゃんに飲み物を届けるだけではないのです!
「そういえばお兄様。奥様から私とお兄様で野菜を買ってきて欲しいとお使いを頼まれました!」
そうなのです。飲み物を持って行くついでにお使いの事を伝えてほしいと頼まれていたのでした。
お兄ちゃんと、お買い物・・・・。
買うものは野菜ですが、私は嬉しくて思わず頬が緩みます。
何せ、私のお兄ちゃんは完璧なのです。
何が完璧かって聞かれると、全部、としか言えません。
まず見た目ですが、とっても可愛いです。
昔お母さんに読んでもらったご本に出てくる天使族のお話。
きっと、この世界に天使族が本当にいたらお兄ちゃんみたいな感じなのかなって思ったりしてます。
そんな女の子から見た私でも可愛いと思うお兄ちゃんですが、剣を振ったりしている時は普段の雰囲気からは想像もつかないくらいとっても格好いいのです。
真剣な表情で一心不乱に剣を振っているお兄ちゃんといったらもう・・・・。
私には白馬に乗った王都の王子様のようにしか見えません。
実際に王都にいらっしゃるらしい王子様なんて見た事ないから全然分からないんですけど。
そしてそして。
何よりとっても優しいのです。
私が何かすると絶対笑顔で褒めてくれますし、何をしてる時でも私の事を邪険に扱ったりしません。
もちろん、私もなるべくお兄ちゃんの邪魔をしないようにしていますが。
そんな完璧な私のお兄ちゃんと、お使いとはいえお出かけできるんです。
嬉しくないはずがありません!
「うん、分かった。じゃあちょっと水浴びしてくるからその後で行こうか」
「はいっ」
鍛錬で汗をかいていたらしいお兄ちゃんは水浴び場へと向かっていきます。
この村の男の人はあんまりそういう事を気にしないのですが、汗をかくたびに水浴びしに行くお兄ちゃんはかなり綺麗好きな方だと思います。
だからいつもあんなにいい匂いがするのでしょうか。
抱きついた時にふわっ香る石鹸の匂いはとっても安心するのです。
そうだ。お買い物に行く前に水浴びから出てきたお兄様に抱き着こう。
そう決めた私は水浴びへ向かうお兄ちゃんに付いていくと、水浴び後にすぐ抱き着けるよう準備して待っておくのでした。
―――――――――
私は、嬉しそうにルカ様の後を付いていくリーフィアを見て思わず和んでしまいます。
リーフィアは、ルカ様が生まれる年に身籠った子で当時の私は何故こんな大事な時期にと大変悔やみました。
主人が望んでいたお子。
その大事な出産や出産後の大変な時期に満足にお世話出来ないなんて、メイドとして失格だと。
しかし、サウロス様とリニア様はその事を責めたりせず、いえむしろこちらの事はあまり気にせず自分の事に集中しろと言い、ご自分達の事だけでも大変でしょうに、何と私の事に関しても様々な便宜をはかってくださったのです。
メイドとして仕えているはずの私が主人であるお二人の負担になるなど本来であれば言語道断だとは思いますが、リニア様の「あなたが元気な子を産んでくれればこの子も寂しくなくなるでしょう?」という言葉にどれだけ救われたことか。
勿論、この子を産んだことに後悔は全くしていませんでしたが、サウロス様とリニア様には多大なご迷惑をかけたことと思いますので頂いた恩についてはこれからの生涯、これまでより一層私の身を捧げることで返していきたいと思っています。
さて、そうして生まれたリーフィアでしたが七歳となった今見事にルカ様にベッタリです。
いえ、七歳になる前からベッタリでしたか。
確かにリーフィアがそうなるのも頷ける気はします。
サウロス様とリニア様の二人のお子であるルカ様は、大人である私から見てもとても聡明な方でした。
容姿に関しても、リニア様の血を良くお継ぎになったのかとても可愛らしいお顔で正直男性とは思えません。
それどころか、まだ幼いといえる年齢では考えられない程聡明な事と合わせて考えるとどこか神秘的な雰囲気すら感じる気がします。
継いだのはそれだけではありません。
ルカ様には剣の才能がおありでした。
きっとサウロス様とリニア様の剣の才を満遍なく引き継いだのでしょう。
三歳程の頃から鍛錬を始めると、知らぬ内にどんどん強くなっていきました。
今では、あのサウロス様でさえ上回る程に。
その事実は正直、普通では信じられない事だと思います。
たった七つしか年を重ねていない子があの、サウロス様を・・・と。
しかしほぼ毎日のようにルカ様の成長を見てきた私は信じるしかありません。
サウロス様もいつの日かポツリと言っていたように、ルカ様はいずれ歴史に名を残すような剣士になるのかもしれませんね。
そんな容姿端麗で、おまけに人間性もほぼ完璧といってもいいような完璧超人のような人が傍にいたら慕わないわけがありません。
本人はまだ気付いていないようでしたが、最近のリーフィアがルカ様を見る目は時々乙女の目をしている事があります。
これからどうなっていくのかは分かりませんが、出来れば誰も傷つかないような未来になってほしいと願う事しか私にはできません。
メイドの子である者が主人のお子と婚約を結ぶなど殆ど聞いたことがありませんからそれも中々難しいのでしょうが。
娘の恋路を親として応援したい気持ちはありますが、立場上表立って応援することはできません。
・・・応援するどころか本来であればむしろ窘めなければいけないのだと思いますが、リニア様が「好きにさせればいいじゃない。別にうち、貴族ってわけじゃないんだから」と仰ってくださったので本人達の意向に任せることにしました。
それでも呼び方やしゃべり方などはきちんとした言葉遣いで接っするよう徹底はしています。
これは、譲れません。
周りへの示しがつきませんからね。
それに、いざ恋仲になることが出来なくとももしかしたら私と同じようにメイドとしてお傍にいる、という未来を取ることもあるかもしれません。
そうなった時に初めて丁寧な言葉を学んだのでは遅いですから。
・・・こうして、なんだかんだ言いつつも逃げ道を用意しておく辺り私も相当な親バカって奴なんでしょうね。
実際リーフィアなんかは目に入れても痛くないくらいですし。
ルカ様も、メイドとしてはとても恐れ多い事ですが自分の子だと思うくらいには可愛いです。
「リーフィア。ルカ様のところに行くのならついでにこれも渡してちょうだい」
「はーい!」
そう言って嬉しそうに寄ってくるリーフィア。
よっぽどルカ様と買い物行くのが嬉しいのでしょう。
ああ。
どうか。
どうかこの子たちが幸せな未来を掴み取れますように。
それはメイドとしてか、親としてか。
そのどちらの気持ちかは分からないけれど、今こうして幸せそうに日々を暮らす子達の様子を見てそう思わずにはいられないのでした。
まずはここまで読んで下さった皆様に感謝を
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