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転生先での俺はそこそこ可愛いようです  作者: すずりん
―幼少期編―
3/6

三話  剣の才能と魔法の才能

取りあえず一言。

作者は決してロリコンではありませんよ。ありません。


さて、次は主人公であるルカの実践パートです

「―――はっ!」


「むぅっ」


庭というには広すぎる地で、密度の高いモノ同士が当たるような鈍い音が響いていた。


それらは木剣同士が当たる音であり、俺とサウロスが打ち合った結果鳴った音である。


そう、サウロスには二歳の頃に剣術を教えるとか言われていた俺であったが、三歳になる頃「よし、お前もそろそろ剣を握ってもよい歳だろう」と言うと父であるサウロスは本当に剣術を教え始めたのだ。


これで俺が嫌がっていたら完璧に虐待である。


しかし俺はむしろ自分からお願いした。

この世界で生きるには強さは必要不可欠だからだ。


それは、これまで教えてもらい学んできたこの世界に関する知識によって思った事だった。


日本にいた頃のように法や警察などに守られている訳ではないこの世界はお世辞にも安全とはいえない。

王都には警備隊や法のように守らなければいけない掟のようなものはあるが、それでも剣や魔法が普通にある世界だ。

冒険者のギルドなどもある国の諍い事は地球にいた頃の比ではなく、それによる死亡率も高い。


それに加えて野生の獣や魔物などがそこら辺に闊歩しているような世界ともなれば、これからどういった人生を送るにしても強くなっておくに越したことはないだろうと思ったのだ。


幸いにもこの世界の俺にはそれなりに才能があったようで、日本にいた頃にはもちろんのこと剣なんて握ったことなかったのだが、サウロスに教わった剣術は直ぐに使えるようになった。無論才能だけではなく、物覚えの良い子供の身体だという事も起因しているのかもしれないが。


とはいえ五歳という身体では、剣を打ち合うにあたってやはり筋力などで劣ってしまう事は避けられない。


いずれ時間が解決するだろうが、実際に打ち合ってそれを痛感した俺は何とかして筋力不足を補うために日々父の動きを見て、力のいらない剣の振り方を研究することにした。

要するに、技や技術で補おうと思ったのだ。


そして最近、その努力が実ってか体の使い方が分かってきていた。


筋力というのは確かに必要だが、俺が思うに剣の振り初めさえ何とかなってしまえば後は殆どいらないという事に気付いたのだ。

むしろ余計な力は剣筋を鈍らせる。


なので最近では逆にどれだけ余計な力を抜けるか、というのを考えていた。


自分を上回る力で放たれた剣は真っ向から受けずに受け流せばよい。

そして力で押し切れないような相手には剣を振るスピードで圧倒し「斬る」という事に念頭を置けば対等以上に立ち回れる。

それは日本にいた頃に「刀」なるものの存在を知っていたから出来た発想かもしれない。


この世界の剣術はあまり斬るという事に対して突き詰めておらず、叩き斬ったり、相手の急所となる場所を潰す、という事に特化していた。

もっと簡単に言えば斬って倒すというよりもとにかく相手を倒せればそれで良い、という実戦的な剣術なのだ。


と、ここまでこの世界の剣術について少し批判的に言ってしまったがやはり歴史がある剣術なので理に適っている事も多い。

ともなればその全てを否定する事はせずに参考に出来ることは参考にして、それを基礎に自分に合うようにアレンジしているというのが現状だ。


先にも言ったようにどうにも剣術に関する才能があったらしい俺の身体は割とイメージする通りに動いてくれる。

であれば、後は俺自身がどれだけ努力できるかによって強くなれるかなれないのかが決まってくるだろう。


そんなこんなで強くなる、という事に没頭している最近はほぼ毎日サウロスと木剣で打ち合っていた。

最初の方こそ手加減されてもなお良いようにあしらわれていたのだが、最近ではいい勝負が出来るようになっているみたいで少し嬉しい。


もちろん、それでもサウロスは手加減してくれていて、だと思うけど。


「おにいさま、かっこいー!あ!どうぞ、これタオルですッ」


そうして打ち合う稽古が一息ついた時に声を掛けてくれたのが麗しき我が妹分のリーフィアだ。


案の定、というか。

想像していた通りとても可愛く育ってくれたリーフィアは共に育った俺の事を良く慕ってくれていた。

どうやらサーシャさんの教育で俺の事は様付けで呼んでいるものの、それでも最近は「お兄様」などと呼んでくれている。


うん、今日もとっても可愛い。


決して、性的な目で見ているわけではないと明言しておこう。

誰に、とは思うが俺の名誉のために。


「ありがとうフィア。フィアこそ、応援してくれてありがとう」


そうして差し出されたタオルを取って顔を拭く。


すると引き分けという形で終わったことに少し不満気だったサウロスが更に不機嫌そうに顔を顰めた。


「何だよ、母さんに似て女みたいな顔してるくせに最近メッキリ強くなりやがって。父さん、これでも王都じゃそれなりに強い方だったんだがな・・・。これじゃ俺が教えられることなんざもう殆どねぇじゃねぇか。それによ?リーフィアからタオルなんぞ貰いやがって・・・普通はこの家の当主である俺に真っ先に駆け寄ってくるもんじゃないのか?」


とブツブツと文句を言っていた。


一言一句聞こえてしまった俺は苦笑いするしかなかったのだが、父の文句を知る由もないリーフィアは無邪気な笑顔で更なる追撃をする。


「おにいさま、すっごくかわいい、おねえさんみたいな顔してるのに、さうろす様に勝っちゃうなんてすごいです!」

とキラキラした目で声高らかに言ったのだ。


それを聞いたサウロスはもはや不機嫌さを隠す事無く「今日の稽古は終いだっ」といってとっとと家の方へ帰ってしまった。


もはや苦笑するしかない。


そんな子供のような父を不思議そうに見るリーフィアに「ボク達もいこっか」と手を差し出すのだった。





――――――――――



「魔法の適性・・・ですか?」


稽古の後、身体を洗った俺は家族皆で昼食を取っていた。

勿論、家族という括りの中にはメイドであるサーシャさんやリーフィアも含まれている。


この二人、本当にこの家に住み込んでいて殆ど自分達の家へ帰ることがない。


幼い娘がいる身であまり父親と過ごせないのは良くないのではと思い、四歳になる時に進言したことがあるのだがサーシャさんからは「いえ、メイドとはいついかなる時も主人の支えにならなくてはなりません。それにその事は夫も納得していますし、気にすることではありませんよ」と言われ、リーフィアからは「おにいちゃんとはなれたくないよぉ」と泣かれてしまった。

ちなみにこの頃はお兄ちゃんと呼ばれていたのだが、今のお兄様もそれはそれで悪くないと思ってしまう自分が悲しい。


そういった理由があり五人でとる食事が普段の光景となっていた。


さて、問題は会話を交え楽しく食事をとった後にあった。

母であるリニアが透明な水晶のようなものを差し出してきたのだ。


「えぇ。あなたの剣の様子を見てると私の教えることがもう殆どないみたいだったから・・・なら魔法はと思ったの。手に入れるまでちょっと時間はかかっちゃけど、この水晶を使えばあなたの魔法適正や得意属性についてが分かるわ」


「そんな便利なものを・・・ありがとうございます母様」


「んーん、いいのよ。あなたは赤ちゃんの頃からあまり手のかからない子だったし・・・これくらいは親として、ね」


そう言ってパチンとウィンクしてくるリニア。

我が母ながら相当な美人だと思うので、少し茶目っ気のある仕草でも妙に様になっている。


それに対して「ありがとうございます」とウィンクで返したら「あらあらまぁまぁ」と笑われてしまった。

ちょっとだけ恥ずかしかったので話を変えるように水晶を手に取る。


「それで、これはどういう風に使えばいいんですか?」


「えーっとね。私がルカに魔力を流すから、ルカはその水晶に触れているだけでいいわ」


リニアによれば、リニアが俺に流した魔力は俺自身の魔力へと変換され水晶へと流れるらしい。

そうして流れた魔力の質によって水晶が様々な色を放ち、その色によって得意属性が分かるという仕組みだ。


赤なら火。青なら水。黄色なら雷。緑なら風。茶色なら土というが主な色らしい。


それ以外の色に光ったという前例はないみたいだし、色付きの光を放つとすればこの中のどれかだろう。

色付きの、と表現したのにも理由がある。

というのも、たまに無色の光りを放つことがあるらしいのだ。

無色の光は得意属性がないという事になるらしい。


それでも決して魔法が使えないというわけではない。

ただ、尖った才能がないというだけで。


どれもオールマイティに。悪く言えば器用貧乏というわけだ。

なので例え俺が無色でも落ち込むことはない。・・・はずだ。


そして得意属性以外にこの水晶で分かるもう一つの特性。

それは魔法適正である。


様々な色の光を放つ水晶だがその時に放つ光の強さによって魔法への適正も分かるらしい。

簡単にいうなら魔法の才能があるのかないのかという事だ。


「・・・なる程。ある程度理解できました」


それらの説明を真剣な顔でうんうん頷いていた俺だったが、内心正直とてもわくわくしてた。


だって魔法だよ?

浮かれるのも仕方ないじゃない。


オラ、わっくわくすっぞぉ!


しかしそんな荒れる内心は億尾にも出さず、ちょっと緊張したような面持ちで水晶へと触れる。

実際、ちょっと緊張してるし。


俺の得意属性ってなんだろ。火かな?水かな?それとも風とかだろうか。雷っていうのも捨てがたいなぁ。


どうやら関心があるのは俺だけではないようで、父のサウロスも興味深そうに眺めているし、サーシャも食器を洗う手を止め黙って水晶へと視線を移していた。


唯一状況を分かっていないのはリーフィアくらいか。

リーフィアは単純に綺麗な水晶が珍しいらしく、自分も触れたそうにうずうずしていた。

でも、これからすることの邪魔をしちゃいけないことは分かっているのか実際に水晶に触れることなく我慢している。


うん。そんな姿も大変可愛らしくて結構結構。


リーフィアを見た事で少しあった緊張も解けた俺は、お願いしますという意を込めてリニアを見た。


俺の視線を受けたリニアは分かったとばかりに頷くと俺へと魔力を流し始める。


すると段々と水晶は光を放ち――――始めなかった。


本来様々な色の光を放つはずの水晶はむしろどんどん黒く染まっていき・・・これは流石に様子がおかしいぞと思い始めた時、不意にピキッという音が鳴った。

と次の瞬間、縦に亀裂が走るとそのまま水晶が割れてしまう。


・・・え?


これは一体どういう事なのでしょう。


救いを求めるようにリニアやサウロスに視線を向けるも二人とも分からないという困惑した顔を浮かべるだけであった。

王都で騎士をしていたような二人に分からないことはこの村にいる誰かに分かるはずもない。


もう一度検証しようにも水晶が割れてしまったのでそれも叶わず。

こうして、この世界においての俺の魔法適正を知るはずだった検証は謎の結果に終わったのだった。


・・・結局俺って魔法の才能がないってことだったのかな?

ガックシ。

ここまで読んでくださった皆様に感謝を。


感想アドバイス、評価コメントなど是非お待ちしております。


余談ではありますが、この作品の主人公ルカの容姿についての評価をば。

鏡越しにこの世界の自分の姿を見たルカは思ったそうだ。

「あ、日本にこんな子いたら誘拐するかも」と。

しかし自分に対しての感想だと気付いたルカはその後落ち込む事になるのだがそれはまた別のお話―――

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