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第80話 邪神の片鱗

 突風が吹き荒れる図書室。

 その原因をつくったのは、悪霊退治と息巻いていていた少年と少女の慢心だ。


「翔太ぁぁぁー!」

「テーブルの下に隠れろ、詩織!」


 まるで竜巻のように本が乱れ飛ぶ中、二人はテーブルの下に潜る。


 一方、窓際にいた佳乃と智恵子はその場でかがんでいた。

 庸平は後ろポケットから霊符を取り出し、手刀の構えをとる。

 赤鬼と対決したときにも使った『障壁結界』で防ごうとしたのだ。


「青龍、白――」


 手刀を切り始めたそのとき、庸平の背後からガラスが割れる音がした。  

 同時に彼の背中に何かがぶち当たってきた。


「ぐはっ!」


 その衝撃で彼の体は床に転がる。

 彼の頭上を巨大な鳥が通過していく。


「ほんっとーに手間がかかる子たちなんだからぁぁぁ――っ!」


 声の主は赤鬼たちを連れて屋上へ向かったはずの大橋先生。

 彼女の背中からは両翼3メートルはあろう漆黒の翼を生えていた。


 もはや人の手とは思えない鋭い爪をシャキーンと伸ばし、竜巻の中心にある悪霊の塊を切り裂いた。


 風は動きを止め、空中に舞っていた無数の本たちが床に落下していった。


「ふうーっ……」


 大橋先生はテーブルの上に立ち、漆黒の翼を折りたたむ。

 そして、腕を胸の前で組んだ。

 なんと、彼女は半裸状態。上着は身につけず、白いブラジャーが丸見えである。


「翔太、見ちゃだめぇぇぇー!」

「み、見ないから。先生の下着姿なんか見たくもないし!」


 翔太の目を詩織が必死に手で覆っているが、肝心の翔太は手を払いのけようとしている。彼の顔が赤いのは、ちらりとでも見てしまった先生の下着姿のせいか、はたまた詩織の体が密着しているせいなのか。


 幸いにして庸平のクラスメイトたちのほとんどは気を失っている。

 山水中関係者で意識があるのは庸平、佳乃、智恵子、そして井上先生のみだ。


 そんな中、大橋先生は机から床に舞い降りて、つかつかと翔太と詩織の元へと向かって行く。そして――


「あんたたちはどうして厄介な騒動ばかり起こすの?」


 二人の頭をゲンコツで殴った。

 庸平の耳に『ゴツン』という音が届く程の威力で。


「いってぇ……」

「うわぁーん……」


 翔太と詩織は頭を両手で押さえてうずくまった。

 その上からさらに攻撃を加えようとする様子を見かねた井上先生が、


「あの、先生? うちの生徒たちも動揺しているようですので、ここは一つ穏便に……、皆で本の片付けなどをしながらお話でも聞かせていただこうかしら?」


「あっ、そうですね……」


 井上先生がジャージの上を差し出す。それを羽織りながら、大橋先生は答えた。

 彼女の背中から黒い翼は消え、元の人間の姿に戻っていった。


 庸平と佳乃は顔を見合わせ、両手を広げて首を傾げた。


「井上せんせ……ウチ、あなたを尊敬しますよ」


 智恵子はそう呟いた。 


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