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第75話 邪神と土地神

「余計な手間って……先生にはこいつらに憑いている悪霊が見えないのか!?」


 翔太は兵器マニアと黒縁眼鏡の男を指さす。

 二人はぽかんと口を開けて突っ立っている。


「私にだって見えているわ! 朝っぱらから騒動を起こしたくないから静観していたのよ、それが大人の対応なのよッ!」

「それが大人っていうんなら、俺は子供のままでいいさ――あっ、おまえらそこで待っていろ! 俺が除霊してやる!」

「あなたは土地神に『神器の扇』を返しちゃったんでしょう? 今のあなたはただのろくでなし(、、、、、)よ!」

「あ――っ、そうだったぁー、『神器の扇』は神様に取り上げられたままだったぁぁぁ!」 

  

 頭を抱え膝から崩れ落ちる翔太。

 その間に兵器マニアとその仲間はそうっと校舎の中へ消えていく。


 庸平が手で合図すると、ぴょーんと赤鬼が肩に乗った。

 そして小声で――

「『神器の扇』って、京都であいつが振り回していたヤツか?」


「フム、そしてワシはその扇の力で閉じ込められたのだが……この建物の上で解放されたのだ。その時に此奴らの言う土地神とやらを見たぞ」

「マジ!? 赤鬼おまえ、神に会ったのか!」

「フム、小僧とは違って美形であったぞ」

「それは余計な情報だな!」

「フム、そうか。どうやら『神器の扇』とやらはその美形の土地神の借用物であったらしいな」


 赤鬼は何やら納得した様子。

 しかし、当の庸平には理解しがたい状況だった。


「つまり……この桜木翔太が神の半身と名乗っていたのは本当だったということか? 神と人間って、そんな風に関わり合いになれるものなのか!?」

「フム、誠に愉快愉快、人間は面白いなぁ、主さまよ! ワシらの主従関係と同様に神と契約を結ぶ人間がここに二人揃っているのだ! フハハハハハ――」


 赤鬼は笑う。


 しかし陰陽師と式神の関係は、長い歴史の中で編み出された計算式のようなもの。式の結果として魔物を自在に操ることができるに過ぎない。だから、神の領域に関しては庸平と赤鬼は門外漢なのである。


「あ――っ、おまえは陰陽師の……えっと……」


 赤鬼の笑い声にようやく翔太が気付き、指をさして叫んだ。


「豊田庸平だ」

「そう、豊田よーへー! おまえ、隣村の生徒だったのか!?」


 そう、驚くのも無理はない。500キロメートル離れた京都への旅先で偶然に出会った彼らが、実は隣村の人同士だったという事実――


「そういうことだ、桜木翔太! 本当なら俺の方こそ驚くべきだろうが……邪神だの土地神の半身だの、更には悪霊に取り憑かれているだのと色んなことが頭の中でぐちゃぐちゃに入り乱れて……驚くヒマすらなかったぞ!」 


 庸平は腰に手を当てて、ため息を吐いた。


「さてはおまえがあの男達に悪霊を取り憑かれさせた犯人だな!」


 ビシッと人差し指を突き出す翔太。


「……おい、俺の話を聞いていたか!?」


「うるさい、今日こそは決着をつけ――うぎゃぁぁぁぁ――――ッ!!」


 大橋先生が翔太の頭を鷲づかみにして、噛みついた。

 彼女は邪神の半身。


 山ノ神中学校の昇降口前は、翔太の悲鳴が響き渡った。 

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