表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/94

第72話 怒りの矛先

 桜木翔太は土地神の力を使う能力の持ち主。京都での戦いは佳乃に憑依した白虎に負けたものの、その能力が本物であることは証明されている。その彼が図書室にいる一人ひとりに悪霊が憑いていると言ったのだ。


 佳乃は目をこらしてクラスメートたちの様子を見ている。

 さしずめ悪霊の姿を自分の目で確かめたいとでも思っているのだろう。


 すると、当然のように騒ぎに注目していたクラスメートたちと目が合ってしまう。佳乃は額に汗をかきつつ苦笑いを浮かべた。


「ねえ翔太君……」

「気安く俺の名を呼ぶな、黒魔術の女!」


 佳乃が話しけるが、翔太は敵対心むき出しで身構える。


「ウチは名前で呼んでもいいよね、しょーたくーん!」

「や、やめろ――ッ、俺に抱きつくなぁぁぁー!!」

 

 智恵子は翔太の後ろに回り込み、抱きついた。


「ひぃぃぃー、翔太何やってるのぉぉぉー!?」


 小動物で天然な詩織が悲鳴を上げた。


「お、落ち着け詩織! 俺は何もやっていない! やっていないからぁぁぁー!」


 手をぱたぱたさせて翔太が慌てふためく。

 身長の低い翔太の後頭部にこれ見よがしに智恵子は大きな胸を押しつけた。


「離せ、この破廉恥(はれんち)女がぁぁぁー!」

「え――っ、感動の再会をもっと味わわせてよぉー!」

「ダメだ、離れろ!」

「イヤよぉー! もう離れられないんだからぁー!」


 これ以上自分の周りにいる可愛いもの(、、)を失いたくない。智恵子は半ば混乱状態に陥っていた。


「ち、智恵子先輩と翔太も……京都で会っていたんですか?」


 詩織は小動物のように口をあわあわさせながら訊いてきた


「そうよ。京都の旅館で翔太君を膝枕してあげたの、うふっ」

「ひ、膝枕ぁぁぁー!?」

「ち、ちかう! それはこの破廉恥女が勝手に……今もそうだぞ!?」

「あ、そんなことよりも翔太君たら、そこにいる佳乃ちゃんに殺されかけていたのよ?」

「えっ!?」


 京都の旅館で桜木翔太は確かに佳乃に首を締め上げられ殺されかけていた。

 確かにそれは事実に違いない。

 詩織は小動物のようにまん丸に目を開け、言葉を失った。


「ちょっとー、これ以上ややこしくしないでよぉぉぉー!」


 佳乃は涙目になって手を上下に振った。

 その佳乃の隣では口をあわあわさせて詩織が動揺している。


(この女の子は……この少年の……ああ、なるほど……そういうことなのね)


 智恵子はこの瞬間に全てを悟った。

 かわいいもの好きの智恵子が一目惚れした桜木翔太という少年には、神崎詩織という彼女がいたのだ。


 詩織には自分にはない様々なものをもっている――

 

(ますます……嫉妬しちゃうじゃないの……)


 智恵子はため息を吐き、翔太を開放した。


「ねえ智恵子! 翔太君に私は普通の女の子なんだって説明してあげてよ! 京都でもさんざん説明したはずなのに全然通じていないみたいなのよぉー!」


 佳乃は翔太に『黒魔術の悪い女』と誤解されていることが気がかりでならないらしい。そんな佳乃も、庸平と出会うまでは可愛らしかった――いつも周りをキョロキョロ見て落ち着かないし、昼休みには独りで屋上で黙々と何かをやっていた。『最弱』と言われいじめをうけていた頃の佳乃は本当に可愛らしかったのだ。


 ――それが、あの男の出現で――


 智恵子の怒りの矛先が豊田庸平に向かい始めていたその矢先、ガラリとドアが開かれた。


「ん!? おまえら何をやってんだ?」


 庸平がやってきた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

↑↑ランキングに参加中。クリックお願いします↑↑



Rankings & Tools
sinoobi.com

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ