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第65話 呪われた村

「……なにこれ?」

「オレのメモだ」

「いや、それは分っているけど……」


 庸平はぽかんと口を開けて吉岡の顔を見る。

 吉岡は真剣そのものという表情だ。

 そこではっと思い当たった。


「奈良公園で言っていたことの続きか!?」

「そのとおりだ。しかし、オレはその事実をすぐ忘れてしまう」


 やはり、吉岡の言動はおかしい。

 庸平は適当に相手をする振りをして体よく帰そうと思った。


「最弱! 今、オレの頭がおかしいと思っただろう! 殴るぞ!」

「うっ……勘だけは鈍っていないのか」

だけ(・・)とは何だだけ(・・)とはっ!」


 台所から白蛇の『シャァァ』という威嚇が聞こえて吉岡は座りなおした。

 腕の噛み傷がヒリヒリと痛んだ。


「修学旅行から帰ってきた日、オレの記憶から奈良公園での出来事がすっかり消えていたんだ。最弱はどうだった?」

「忘れるわけないだろう。お前が学校で俺をいじめているのは自分の意志ではないという話――しかし、学校へ戻ったらおまえは何事も無かったように振る舞っていたから……まんまと騙されていたのだと思っていたぞ?」

「違うんだ! オレが奈良公園で言ったことは真実だ。しかし、この村に戻ってくるなり記憶が飛んでいた。だから最弱へのいじめを続けていた」

「はあ? 何それ!」


 まるで他人事のようなその言い方に、庸平はイラついた。

 

「まあ待て。もう一つ伝えたいことがある。オレ達の学校は夏休み中に隣村の中学校と併合されることが決まったぞ!」

「そ、そうなの?」

「対応が早すぎると思わないか? まるで中学校の校舎が破壊された事件をもみ消すような力が働いているような感じがしないか?」


 それが事実だとすれば、確かに対応が早すぎる。

 庸平は頷いた。


「だか……そんな疑問も時間が過ぎれば忘れていくだろう。そして何にも気にならなくなる。村の誰もがそれが当たり前のことのように感じるようになる。この村は呪われているのではないか?」


 吉岡は一息に喋った。

 薄れていく記憶に抗うかのように。


「もしそうだとしても……村が呪われているというのは話が飛躍しすぎだろう」

「しかし、実際にオレは修学旅行のときの話も忘れていた。この村に戻って来た途端にだぞ?」

「でも、今はこうして話が出来ているだろう?」

「それはこのメモ書きを何度も見て、記憶をつなぎ止めているからだ!」


 二人はちゃぶ台に置いたメモ書きを見つめる。


「オレ、実は転校することになっていてさ……」

「そうなのか!」


 庸平の顔がほころぶ。


「でも隣村の山ノ神中との合併話がまとまったことで転校は取りやめになったぞ」

「……そうか」


 吉岡は口の端を上げる。


「その手続きをするときに新町へ出たんだ。すると途端に修学旅行の記憶が戻って来たのさ。親父の車の中で慌ててメモったのがこの紙という訳だ」


 改めて二人がメモ書きを見ていると、その上に湯飲みが置かれた。


「どうじゃ、今度は上手く煎れられたじゃろう?」


 庸平が試しに飲んでみる。


「うん、ちゃんとしたお茶だな。合格だ!」

「そうか! ほれ客人も飲んでみるがいいぞ!」


 銀髪少女は白い歯を見せて笑った。

 八重歯がきらりと光り、それを見た吉岡は腕を引っ込めた。


「妾が煎れた茶は飲めぬと言うのかこの客人は!」


 すっと立ち上がって両手を上げて威嚇する。


「最弱、この女を何とかしろ!」

「白蛇止めておけ! そいつはただの人間だ。おまえの毒牙が刺さると死んでしまうぞ!」

「うわっ、どどど、どーすればいい!? オレはもう噛まれちまった――!」

「妾は毒蛇なんかじゃないぞ! このたわけが――ッ!」


 こうして騒々しい朝の時間が過ぎていった。

 



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