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第57話 月夜の戦い

 2階の屋根にまで届く高さの白蛇が見下ろしている。

 その視線の先には庸平と白虎がいる。

 白虎の背中から降りた庸平は、ゆっくりと見上げる。

 白蛇の目は赤く光り、雲の合間から見える星々と同化し双子星のように輝く。

 それはまるで炎の様に揺らぎ、庸平を見つめていた。  


「とうとう来たか、豊田の子孫よ……」


「ああ、来たぞ。おそらくお前とは今朝会ったばかりだが……陰陽師の豊田と、式神白蛇としての出会いは何年振りなんだろうか?」


「さあな……そんな昔のことは忘れてしまったよ……(わらわ)にはおまえへの憎しみしか残っていない……」


「そうか……俺も仲間が散々な目に遭わされて怒り心頭だ。てめえを八つ裂きにしてもまだ足りねぇなぁ……」


「ふふふ……言うじゃないか人間風情が……その毛むくじゃらの妖力はわらわには効かぬぞ。その2匹の龍の妖力もな。それで妾に勝てるとでも?」


「それも赤鬼から聞いている。同じ主に仕える式神は互いの妖力を相殺してしまうとな。しかし白蛇よ、それは同時にお前が俺の式神でもあるということだ――ッ!」


 庸平は白蛇へ向かって走り出す。

 白蛇は牙をむき襲い掛かる。


「――――破ァァァ!」


 ズボンの後ろポケットから取り出した霊符を地面に投げつけジャンプ。

 ズシンと白蛇の頭が地面に食い込む。

 道路のアスファルトは割れ、大きな陥没となる。


「赤鬼――!」


「それっ!」


 赤鬼は背中に携えていた日本刀を投げつける。

 クルクルと回転しながら元のサイズに戻る日本刀を庸平がつかむ。

 白蛇は首をもたげようとするが、白虎が頭の上に乗って動きを封じる。


「破ァァァ――――!」


 白蛇の胴体に刀を振り下ろした。


 しかし――

  

 まるで金属でも切ろうとしたかのように刀は弾かれ、手に伝わる衝撃で庸平の手から離れて隣家の庭木に突き刺さった。


「なっ――!?」


 庸平は驚きのあまり着地時にバランスを崩してアスファルトの路面に膝を打った。

 庸平はうめき声をあげるもすぐに赤鬼が駆けつけ手を当てる。

 赤鬼の掌から発する青い光は沈痛効果があるようだ。


「俺の日本刀でも歯が立たないぞ。どういうことだ? 奴は俺の式神ではないのか?」


「式神が主を越えることは間々あることだ。ましてや陰陽道に目覚めて半年に満たぬお主と、何百年もの間恨み辛みを募らせてきた、もはや怨霊と化した白蛇とでは力が逆転していたとしても不思議ではあるまい」


「なんてこったい!」


 今宵は満月。 

 市ろ蛇の鋭い牙が月明かりに照らされて不気味に光る。

 悔しがる庸平には表情のないはずの蛇が不敵に嗤っているように見えた。


 2匹の龍が攻撃を再開する。

 黄龍は白蛇の胴体に絡みつき、黒龍は大きな口を開け頭に噛みつく。

 しかし白蛇は胴体を激しく振り回し、2匹の龍を一瞬ではねのける。

 黄龍の光り輝く身体が流星のように住宅街の奥へと飛ばされていった。

 黒龍は暗闇に紛れて姿が確認できない。


 続いて白虎が飛び掛かる。

 白蛇は牙を剥いて白虎に噛みつこうとする。

 庸平が霊符を投げ、形成した光の壁を足場にして更にジャンプ。

 白蛇の頭を飛び越え、首元にかぶりついた。


 白虎の歯が食い込む。

 しかし、再び白蛇は激しく身体をくねらせ白虎を振り落とした。


 庸平からは20メートル程離れた場所に着地して身構える白虎。

 そこに追撃しようと白蛇が襲いかかる。


 そのときだった。




「庸平、大丈夫なの?」




 不安顔の佳乃が家の門から道路へ出ていた。

 庸平の表情が固まる。


「佳乃、隠れていろ!」


 庸平が叫ぶ。

 白虎もそれに気づき、走り出す。


 その後方から……

 赤い目を不気味に光らせた白蛇が迫り……

 地を這うように追い抜いて行った――


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