第2話 屋上の陥没
豊田庸平は屋上へ向かう階段を上っていた。
「あの黒い影は……いや、まさかそんなはずはない!」
果たして教室から見上げたときに見た物の正体は何であったのか。
確かにヤツは屋上から身を乗り出し、こちらを見下ろしていた――
これは好奇心という類いのものではない。
発見してしまった自分の義務なのだと言い聞かせながら階段を上る。
「良かった、開いている……」
幸いにして屋上へ出る鉄扉は鍵が壊れてすき間が空いている。
庸平はドアが破壊されて喜んだ自分に苦笑いを浮かべた。
もし、屋上へ出た途端にあの黒いヤツに襲われたら……
そんな不安もよぎったが、思い切って鉄扉を蹴飛ばした。
蝶番が壊れていた鉄扉は簡単に外れ、勢いよく外側へ倒れた。
すると真っ白い粉塵が舞い上がり、視界が遮られる。
庸平はシャツのボタンを外し、中の体操服で口を押さえながら、状況を判断しようとあたりを観察する。
足下には無数のコンクリートの破片が散乱している。
それらの粉が舞い上がってしまったようである。
やがて粉塵が風で流され視界が確保できるようになった。
庸平が探していた黒い物体は見当たらず、もぬけの殻だ。
しかし屋上の床面をみて庸平は驚愕する。
深さ50センチぐらい陥没した大きな穴が2つ。
1つの穴の大きさは直径2メートルぐらい。それが2.5メートル空けてもう1つ。
何か大きなものが上から落下し、その衝撃でできた穴であることは明白であった。
しかも――
まるで巨大な人間の足跡のような形状。
「巨人が……空から……降ってきた……?」
庸平がそうつぶやいたそのとき――
校庭の方からドンという地響き。
その直後――
生徒達の悲鳴が聞こえてきた。