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午後23時、ベランダの上で  作者: 冬野まこ
6/6

待ってるよ、颯ちゃん(6)最終話

「・・・颯ちゃんが欲しい」



「ぶっ」



「ていうか、それしかいらない」



「げほっ、ごほ」



「落ち着いて颯ちゃん」



「誰のせいだと思っ・・・げほ、ごっほ」



「あはは、うける」




苦しさに顔を紅潮させて咳き込む颯ちゃんを見て、申し訳ない半面、どこか優越感を覚えた。


いつも自分は冷静沈着なまま人の心ばかり()き乱す彼を、ようやく動揺させることができたのだから、少しぐらい勝ち誇らせてほしい。



なんとか落ち着いた様子の彼は、忌々(いまいま)しそうな視線を私に向けると、これまた機嫌が悪そうに、




「・・・もう、帰れクソガキ」




と言い放った。




「ええー」



「本当に、まじな話。もう帰れ」



「・・・っ」




もしかして、怒らせてしまったのだろうか。声のトーンが冗談のノリじゃないことは、さすがに十数年の付き合いの私には分かる。


一瞬でガラリと変わってしまった空気に、思わず言葉を失った。




「ほんとお前、どんだけ俺がギリギリの状態で踏ん張ってるのか全然わかってない」



「・・・え」



「早く帰らないと、その言葉冗談にしてやれなくなるから・・・だから頼むから、帰って」



「颯ちゃ、・・・っ」




瞬間、呼吸の仕方を忘れた。


私に背中を向けたまま話す彼の、ちらりとだけ見えた横顔が、まるでいつかの私みたいに、赤く染まっている。



さっき咳き込んだ時の名残だろうか。・・・いや、きっと、違う。




「颯ちゃん、」



「・・・ん」



「私、帰るね」



「・・・おー、おやすみ」



「それとね颯ちゃん」



「ん?」



「私、颯ちゃんが好きだよ」



「っ」



「おやすみなさい」



「待っ、ゆず!」




彼の足止めの言葉に、思わずあっさり従ってしまいそうになるのを必死で(こら)えた。


でもね、颯ちゃん。『待って』なんて、今更だよ。



言われなくたって私は毎晩、颯ちゃんのこと、待ってるんだから。





「・・・人の気も知らねーで、あのバカ」




---午後23時、ベランダの上で。



『午後23時、ベランダの上で』。ひとまず完結です。

こちらのサイトでの小説投稿は初めてなので「フリガナ付けられるの!?半端ねえ!!」という初歩の初歩からのスタートだったのですが、何とか無事に終えられてよかったです…。


公開して数日後、ふらっとジャンル別日間ランキングを覗いたら、74位?73位?に恐れ多くもお邪魔させていただきまして、まるで芸能人でも街中で見かけたかのようなテンションでパシャパシャと撮影しまくりました。ありがたい限りです。


また徒然なるままに硯に向かいてアナザーストーリーなんかも載せたいなとか考えていますが、一度完結した作品にページを追加することが可能なのかもいまいち分かっていなくて、実に悩ましい…。


何はともあれ、最後までブックマークを解除せずにいてくださった心優しい方々に、心よりお礼申し上げます。書くことの楽しさを改めて感じることができました。

本当に、ありがとうございました!

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