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午後23時、ベランダの上で  作者: 冬野まこ
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待ってるよ、颯ちゃん(5)


・・・まずい、と瞬時に思った。


こんな目と視線を絡めたら、ぎりぎりで抑え込んでいたはずの感情がどんどん込み上げてしまう。そう頭では分かっているのに、その瞳から目を逸らせなくて戸惑っていると。




「・・・ゆずが、ゆずであるから?」




ふっと笑って立ち上がる颯ちゃんの大きな手に、頭をくしゃっと撫でられた。人が必死に気持ちを飲み込もうとしているのに、一体なんてことをしてくれるんだこの男は。


苛立(いらだ)ちながらも鼓動は正直で、彼に対する想いはもうとっくに際限を突き破っていた。




「い、意地悪」



真似(まね)しただけだろ」



「・・・ねえ颯ちゃん」



「ん?」




もう、いいだろうか。


抑えきれない、今にもあふれ出しそうな感情を、少しぐらい伝えてしまってもいいだろうか。・・・と、いうか、もう。



---伝えてしまいたい。




「あの、私、颯ちゃんが、」



「ゆず。」



「・・・え」



「誕生日、おめでとう。」



「っ・・・」




---やっぱり、颯ちゃんはずるい。


今日だけ優しくしてくれたり、今日だけ部屋にあげてくれたり。もしかしてとは思ったけど、その期待を確信してしまったら、きっと私はもっと、彼に近づきたくなっちゃうから。


だからそんなこと、絶対避けたかったのに。・・・それなのに。



こんなの、嬉しくないわけないじゃないか。




「はは、ゆず、涙目」



「・・・颯ちゃんのせいだ」



「あー、やっぱり?」




そう言って、なんでもないことみたいに笑い飛ばす。彼はいつも、そう。


私ばっかり颯ちゃんを追いかけて、肝心な彼は余裕な顔して。私の気持ちにだって、きっともう気付いてるんだろう。それでYESもNOも言わずに、曖昧に誤魔化すのだから本当に卑怯な人だ。




「なんか欲しいものある?」




・・・だから、少しぐらい、そんな彼のペースを乱してやりたくなった。今まで散々振り回されてきたんだから、今日ぐらい仕返ししたって(ばち)は当たらないだろう。


初めまして、冬野まこです。

このサイトではあまり見ないごてごての恋愛小説でしたが、ここまでお付き合いくださり本当にありがとうございました(;;)


次回の更新で一旦完結の予定ですが、終わり方が終わり方なので完全完結にすべきか短編集形式で颯とゆずのSSを今後も更新していこうか、考えあぐねております・・・。

なんだか呟きのような後書きになってしまいました、すみません。


次話は今週中に投稿させていただく予定です。

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