待ってるよ、颯ちゃん(2)
ぽん、と拳を手の平に打ち付けると、早速ベランダへ引き返しよじよじと柵に上る。
いつもなら『おやすみ』と言われた段階で諦めるけれど、今日だけは、折れられない。
鉄製の柵が少し軋み狼狽えはしたものの、ここで足を止めるほど私の颯ちゃん愛はヤワじゃないのだ。
そんなことを心の中で自慢げに唱え、いざ彼の部屋前のベランダに侵入---と、向かいの柵にたどり着いた瞬間。
ガラス張りのドア越しに、今にもそれを開こうと手を掛ける颯ちゃんと目が合う。
「え、颯ちゃ・・・わっ!?」
まさか彼の方からお出迎えしてくれるなんて思ってもみていなかった私は、動揺のあまりバランスを崩す。
「っ、ぶね・・・!」
柵から体が離れた私は、咄嗟に受け止めようと飛び出してきた颯ちゃんに向けて真正面からストライクショット。
どさっと重みのある音がしたかと思えば、力強くて優しい腕が私を包んでいる。
・・・これは一体、何が起こっているんだろう。頭の中で大渋滞が発生してしまった私は、一旦順序立てて状況整理を開始した。
「・・・おい」
まず私は、颯ちゃんに冷たくあしらわれ、いざ参らんとベランダの柵によじ登った。
「おいって。ゆず?」
そして彼の部屋の前のベランダの柵に足を付けた瞬間、透明なガラス張りのドアの向こうにご本人様を発見。
「・・・おいゆず、お前いい加減に、」
「それでバランス崩して倒れて、気付いたら颯ちゃんの温もりの中に・・・!」
「刺すぞコラ」