第4話「手話」
うーん。書くのって結構難しいなぁ。
思ってることを書けばいいんだろうけど…
日野さんは説明を書くから、スラスラ書けるのかな?
それとも慣れてるのかな?
日野さんの説明の合間や、仕事で分からないとき、素直に書くのを私はできないでいた。
でも1ヶ月たつと、それなりに慣れてもくる。
話す言葉も聞きなれてきて、単語ならほとんど分かるようになってきた。
それなのに、私は全然返せてないなぁ。
私からのアクションはほとんどがうなずくこと。
OK、NGのジェスチャーくらい。
帰り支度をしていると、トントンと肩を叩かれた。
見せてくれたメモには
[明日、休みなんです]
と書かれていた。
OKとジェスチャーをして、お疲れ様と頭を下げる。
明日は1人なのかぁ…
なんか寂しいな。
次の日、できる限り1人で仕事を頑張ってみた。
必死でやってる横で、なんか拍手が聞こえてきた。
そこには聾唖者の最年長の鶴さんがいた。
気のいいおじいちゃんで、聾唖者とは思えないほど、色んな人と仲がいい。
鶴さんって話しやすいなぁ。
今日は1人で大丈夫か、仕事は難しいか。
筆談ではなく、話してくれる単語と、手話での会話。
私が大丈夫と口の動きで返すと、手話で《大丈夫》を教えてくれた。
《仕事》《難しい》《分かる》《分からない》
鶴さんはその度、手話を教えてくれた。
片言の手話でも、話をしている。という実感。
手話で話すときは、手の動きと顔の表情をつけると分かる。と鶴さんは教えてくれた。
確かに鶴さんは表情が豊かで、それで話す単語も分かりやすいのかも。
人の話を聞くときは、相手の目を見てって、小学校で言われたよね。
私はそんな当たり前のことができてなかったんだ。
ちゃんと日野さんの目を見て話したい。
私も、手話という言語で、話がしてみたい。