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彼と私の世界  作者: fumi
3/11

第3話「言語」

[今日は、これ教えますね]

とても丁寧な文章。

私は本が好きで、活字を読むのは得意なほう。

彼の書く文字を追いかける、作業を見て覚える。

そして注意や補足をまた書いてもらう。


二週間ほどたって、少しは日野さんに慣れてきたかな。


[また明日、同じのを練習しましょう]

私は大きくうなずいた。

1日が終わって帰るときはちょっこと頭を下げる。


筆談にも慣れてきた。

文字さえあれば、なんにも問題ないよ!

普通に話せるのと同じ。


でも私のネガティブな思い込みの激しさは完全には消えない。

日野さんは他の聾唖者と話すときは完全に手話で話す。

それは日本語ではない、別の言語で話しているのと同じこと。

何を話しているのか分からない。


そういうとき疎外感があるのはやっぱり嫌だけど、仕事に支障はないもんね。そう言い聞かせるしかない。


出勤して、みんなにちょこっと頭を下げる。


また今日も新しいことを教えてくれる。

作業しながらだと、ジェスチャーと日野さんが話す、単語で進んでいくことも増えた。話すと言っても、音を聞いたことのない彼らの発音は正確ではない。最初は理解できないくらいだ。

私が日野さんが話す言葉を理解できないでいると、筆談になる。


申し訳ないなと思う。

でも、私は思っているだけ。

筆談で理解できなくてごめんなさい。と、書いたことはない。

そっかぁ、私は彼らから見たら、何を考えているのか分からない存在なんだ。

初めて会ったとき、私が感じた怖さがきっと彼にもあるだろう。

そして、彼はまだそれを持っているはず。


何を考えているのかわからないのは、耳が聞こえないからじゃない。

そうだよね。だいたい人間みんな、何を考えているのかなんて分からないよ。

自分の思ってることを伝えないと。


私は彼に会うまで、そんなこと思ったことなかった。

自分の意思を伝える、それができなくて私は人付き合いが下手なのかも。

彼に意思を伝えるように、私も書かないとだめだ。


でも私は筆談の弱点がまだ見えてなかった。



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