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楽しんで勝つ!!


 あれからかれこれ約二週間。遂に期限最終日を迎えていた。まだ陣地は奪えていない。というよりも奪うつもりがなかった。はなからこの最終戦で決着をつけるつもりなのだ。


 「色々調整したんだけどどう?」

 「右腕の関節の機動がおかしいかもちょっと調整し直して」

 「ほいほーいと」


 現在、最後の戦いに向けて調整を続けている。結局残りの時間ではソルトを修復しきれなかった。だがパーツは一部修復できたのでそれをウルフとスノウに追加武装として付ける形で調整を続けている。


 「龍玄の方は?」

 「おう、こっちは問題なしだ!」


 調整を終えた二人が格納庫に降りてくる。


 「それにしても今回の作戦で良かったの?御影二中に攻められてあんまり暇がなかったとはいえ、やろうと思えば小領地ひとつぐらい何とかなったわよね?」

 「ああ、そうだな。人数は少ないとはいえ、ユウの作った専用機もちの少数精鋭部隊だ。なんとかはなっただろうな~」


 二人してそう聞いてくる中、ボクは地図を広げる。そして言う。


 「確かに小領地を取って安易に終わらせるってことはできたと思うんだ。だけどそれってなんか負けたような気がしてね。どうせやるなら欲しい領地を取ろうと思って」


 そう言ってボクはある地点を指さす。


 「御影二中が所持する鉱山…ここにある鉱石を手に入れることが出来ればもっと質の良い機体を作れるんだ。今のままじゃ二人を満足させられる性能を実現するのは難しそうだしね。…夢はでっかく!!甲子園優勝を目指すならここは落とさないといけないんだ!」


 それを見ていた。ミカさんはニヤリと笑った。


 「そう、そうこなくっちゃね。熱くなってきたわ。こうでなくっちゃ再びロボ甲子園に戻ってきた意味無いもの」

 「は~ユウにしては珍しく先のことを考えていたわけか。まあ、いいぜ。甲子園優勝して学校全体を巻き込んだパーティーを打ち上げるってのが俺とお前が夢見た夢だもんな」

 「何それ、パーティーって」

 「良いだろう?パーティー?」

 「…悪いとは言ってないわ…アタシもその時は混ぜてもらうから」

 「…なんか雰囲気変わったよな?転入初日はもっとこう…」

 「こう…なにかしら」

 「いや。なんでもねーよ」


 怖くなったよね。


 ミカさんと言うよりもうミカ様と呼ぼうか?圧倒的な強者の威圧で龍玄を黙らせる。ボクはそれを見ながら苦笑いをし、言葉を放つ。


 「まあ、先はまだまだ長そうだけどね」

 「…ところでアタシたち、結城第三中学の陣地はどのあたりかしら?」


 ミカ様の言葉に周囲が凍りついた。その反応に困惑したミカ様は疑問の顔を浮かべる。


 「どうしたのかしら?」

 「…ここだよここ」


 ボクはそう言って端の端。ちっさい消しかすや黒いしみぐらいにしか見えない地点を指さす。


 「え?どこ?」

 「ここだよここ」

 「…本当にそこ?」

 「うん」

 「ちっさ!!」

 「いったなぁ~!!」


 余りにも当たり前のことを言われたボクは憤慨する。そんなこと分かっているんだ。底辺やってるんだようちは。


 「ちなみに天動学園はここな」


 そう言って龍玄が巨大な…ユーラシア大陸くらい巨大な地点を指さす。


 「でっか!!…中に居た時は全然気にしてなかったけどこれほどの差があるのね…」

 「そーだなー。こっから這い上がるのはまあ大変だ。資源とかも少ないし」

 「でも、やるって決めたからにはやるんだからね。二人ともしっかりと付いて来てよ?」


 二人は頷く。


 「分かってるって」

 「ええ、今日はその為の前哨戦なんでしょ?なら」

 「「「行こうか!」」」


 ボク達はコックピットへと乗り込んだ。


☆☆☆


 「っで。あんたは何でアタシの機体に乗っているのよ!!」

 「だって~ソルト壊れちゃったし~。今日の記念すべき日に参加できないって嫌じゃん」


 もともと<銀の剣聖>シルバー=ソードエスカトスは初期に作られた機体で、ウルフが壊れた時、二人で戦えるように複座式になっている。だからこそ<白の剣姫>スノウ=クルセイダ―も複座式で乗れるようになっているのだ。加えてウルフとシルバーにはあるギミックがある。まあ、それを今ここで語る必要はないだろう。重要なのは説得することだ。


 「今日だけ、ね?今日だけ。今日終わったらソルト直してそっちに乗り換えるから。今日だけのツーパイロット…ね?許してよ?」

 「はあ、仕方ないわね。邪魔だけはしないでね。邪魔したらぶっ飛ばすから」

 「ヒッ。わ、わかってるよ」


 スノウが飛び出す。鉱山に向かう道。舞台は砂漠だ。恐らく御影二中が仕掛けてくるならここに違いない。


 『早速来たぞ!!』


 わらわらとノーマルフレームの○ムみたいな機体と蜘蛛型のアニマフレームの量産型がやってくる。


 「早速お出ましね。腕がなるわ」

 「ミカ様なら何とかなりますよね?」

 「様?…まあいいわ。ふん。当たり前じゃない。アタシを誰だと思っているの。アタシはスーパーパイロット白雪ミカよ!!」


 その言葉と同時に飛び出す。新たに装着したビームライフルを取り出し、ノーマルフレームの機体。ユニバーサルコードではタムと出ている機体を狙い撃つ。蜘蛛型の機体、すきゅらが放つバルカン攻撃を同じく新たに装備したシールドで防ぎながら小刻みに機体を浮かせ移動させていく。


 「あ~あ。あんなに動き回って…砂に足を取られても知らないわよ!!」


 そう言って地面を狙い撃つスノウ。爆撃を受けた砂漠は砂塵を巻き上がらせ機体を沈めていく。


 「刈り取らせてもらうわ!!」


 その沈んだ敵機体を足場にしながら実体剣で次々と頭を刈り取っていく、スノウ。はたから見たらダンスを踊っているのかと思えるほどの高度なテクニックだ。


 「すげー。いやーこうしっかり扱ってくれると、製作者日和に尽きるねー」

 「うるさい!」

 「すみません!ミカ様!!」


 同じように戦うウルフも次々と敵を葬っていく。もともと人型と違い四足歩行で足場を取りやすいウルフは砂場でも軽快に動けているようだった。


 その時、レーダーにおかしな機影が映る。


 「ん?なんだこれ?!」

 「どうしたの?」

 「敵援軍!新型一機!!で、デカいよ!!」


 スノウのメインカメラがその方向へ向かう。同じようにウルフもそちらを見た。


 そこには巨大な球体があった。そしてそこから生えるように太く巨大な足が四本繋がっている。その足一つだけでウルフとスノウを纏めてつぶせそうな大きさがあった。


 『なんだあれ、戦艦?モビルアー○ーか!?』

 「そんなレベルじゃないでしょ!!○ストロイよりデカいわ!!」

 「ユニバーサルコード確認…<岩の巨人>ロック=タイタン!!それがあの機体の名前みたいだ!」


 その時、共通回線に通信が入る。


 『は~は。格下が!この俺が守るこの地に来るとは飛んで火に居る夏の虫ってやつだなぁ!!』

 「そのいい方…もしかして岩下?」

 『ん?俺のことをしって…ああ、そうかあんたあの時の小僧かちびのくせして粋がってたくそガキか!』

 「ジュースのことはちゃんと謝ったじゃないか!!それなのにわざわざ攻めてくるなんて性格悪いぞ!!」

 『うっせ!!別にどうしようが俺の勝手だろうが!ちょうどいい!ここでてめーら全員押しつぶしてやる。この<岩の巨人>ロック=タイタンはどんな攻撃も聞かない無敵!強靭!頑強!の最強の機体だってこと証明してやら~!!』


 その言葉と共にロック=タイタンの足がこちらに向けて落ちてくる。何のひねりもないただの踏みつぶし、それが今は何より恐ろしい。


 「…っ!」

 「避けてミカ様避けて」

 「分かってる…わ!!」


 ギリギリのところで踏みつぶしを躱すスノウ。だが風圧で吹き飛ばされる。それでもミカは巧みなコントロールで機体の姿勢を維持し、足に実体剣を用い切りかかる。


 「…硬い!!」


 だが、その攻撃はロック=タイタンに大したダメージも与えられない。それどころか


 「…実体剣が…!!」

 「折れた!!」

 「…こんの…安物使ってんじゃないわよ!!」

 「今の資源じゃそれが精いっぱいなんだよ~!!」


 ロック=タイタンの再び迫りくる足を躱しながら叫びあう。ウルフもなんとかして逃げ回っているようだった。


 「どうするの!?」


 ミカ様の悲痛な叫びを受けてボクは分析を開始する。


 「こういうのは大抵関節が弱点なんだ。そこを狙えば…」

 「どうやって狙うっていうの?」


 ボクはその言葉を聞き、ロック=タイタンに目を向ける。機械でできた巨体は関節部分でさえ、こちらの攻撃が届かない位置にあった。


 「ブーストで飛べばいけるわ…だけど。そこまでよ。残りの燃料がなくなって。はい。おしまい。どうしようも無くなるわ。陣地の占拠なんて無理になる」

 「陣地占拠は考えなくてもいい。たぶん此奴がボス機体だ。陣地占拠型じゃないなら此奴を倒せば目的は達成できる。…でも」

 「一発で倒し切れなければアタシたちの負け、みんな仲良く廃部よ!」

 「…」


 その事実にボクは押し黙ってしまう。それを見かねたのかミカ様が声を掛けてくる。


 「決めなさい部長!あんたがアタシを引きずりこんだんだから責任もって決めなさい!!」

 「…!!わかったよミカ様」

 「ミカでいい!!」

 「わかったよミカ!ボクたちは楽しむためにこのゲームをやっているんだ。なら最後まで限界まで挑戦し続ける」

 「楽しんだから負けるっていうのは許さないわ。楽しんだなら勝ちなさい!楽しんで勝つ!!それがアタシたちの部よ!!」


 楽しんで勝つ。うちの部らしいいい言葉だ。端的にボク達を表している。


 「いいね!それ!とりあえず!今はウルフと合流だ!!」

 「了解!!」


 足の合間を抜け、ウルフの元へと向かう。同時に俺は通信回線を開く。


 「龍玄あれをやるぞ!!」

 『あれか!!まああれしかないよな!!久しぶりに一著いくか!!』

 「しっかり合わせてよ!!」

 『おうよ!!』


 そしてウルフの傍に駆け寄る。タイミングは整った。今こそこの二機の初期機体の二機に隠されたロマン機能を使うとき。


 「人とあるところに!!」

 『狼あり!!』

 「えっ?えっ?」


 一名困惑している人が居るが無視しよう。こういうのは勢いが大事なのだ。


 「二つ混じりて!!」

 『顕現せし究極の戦士!!』

 「はあ!?え、なに?なんなの!?」


 「ゴー!スノウ=クルセイダ―!!」

 『ゴー!マスカレード=ウルフ!!』

 「なんなのよ~!!」


 「『合体!!』」


 突然飛び上がったスノウ=クルセイダ―の足が折りたたまれ、マスカレード=ウルフの武器がパージされた部分に乗る。そしてそこに新たな戦士が生まれた。


 「『最強爆誕!!ゴー!!ライダー!!』」

 「ちょっと何よこれ!?」

 「ロマンだ!!」

 『ロマンしかない!!』

 「ロマンじゃ飯は食えないのよ~!!」


 わけのわからないことを言い出したミカを無視して<最強爆誕>ゴーライダーは動き出す。機動系の全権は龍玄に移っている。アニマフレームを常に操っていた龍玄の巧みなコントロールによってあっという間にロック=タイタンへと近づいていく。


 「能力が一時的に上がっているとはいえ、結局成功確率が上がるまでのことでしかない。もうひと押し決定打を用意するために準備する。あとは任せたよミカ!!」

 「は?え?こんな状況で渡されても…ええい。やればいいんでしょ!!任せなさいアタシはスーパーパイロットよ!!どんな機体も乗りこなして見せるわ!!」


 ゴーライダーの上半身を動かし、ロック=タイタンの足を撃ちまくるミカ。ロック=タイタンにとっては痛くも痒くも無いだろう。だが目的は別にある。


 『っち、砂煙で位置が…!!』


 岩下が呻く声が聞こえる。そうこれこそが狙いそして…。


 『何!?足を駆け上がっているだと!!』


 ウルフの強力な詰めを使い、スノウの部分がバランスを取ることで少し斜めになっている足を駆け上がっていく。


 『小賢しい!!振り落してくれる!!』

 『そうなることは読んでたんだよ!!』


 龍玄は一気にウルフのブースターを全開にし、機体を持ち上げる。そして燃料が切れたころスノウ部分をパージした。


 『合体はここまでだ!後は頼んだぜ!!』

 「任せなさい!!」


 スノウのブースターを全開にし、一気にロック=タイタンの関節部へと向かっていく。


 「あそこさえ崩せればぁ!!此奴の体格的に重さで自壊する!!…!!」


 その時、スノウの装甲に穴が開く、理由を探し方向を見るとそこには機関銃がセットされていた。


 『ははは!ロック=タイタンがただ踏みつぶすだけかと思ったか!このぐらいの対策はだな~されているのだよ!!』

 「でも、これ位の嵐!よけきって見せる!!」


 すさまじい勢いの弾丸を必死の思いで避けていくミカ。そしてついにその弾幕を抜ける。


 「やった!これで!!…え?」


 だが、現実とは無常だ。燃料の尽きたスノウのブースターが消える。


 「え?そんな!こんなところで…!!」

 「いや、充分だ!!」

 「銀川!?」


 その時、スノウの背中、バックパックから何かが飛び出す。そしてその何かはスノウを越え、関節部を越え、さらに飛び上がっていく。


 ミカが振り返ったところでボクはその場にいないだろう。なぜならボクは今、その何かに乗っているからだ!!


 「言ったでしょソルトが直ったらそっちに乗るって。ソルトの素材を作って作った縮小版ソルト…それがこのプチソルトだぁああ!!」


 高く、高くプチソルトは駆け上がっていく。そして同時に千里眼を発動させる。


 「最後まで限界まで挑戦し続ける…ならボクの目指す場所は勝てるかどうかわからない関節部ではなく…!!」


 そして、ボクは目的の場所にたどり着く。


 「このコックピットだ!!」


 そして引き金を引く。撃ちだされたエネルギー弾はコックピットを焼き。機能を停止したロック=タイタンは地へ沈んだ。


 そう今、岩の巨人は撃ち落とされたのだ。小さな小人によって…


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